15.お昼寝の後に③

 私は、ゆっくりと目を覚ました。どれくらい寝ていたのだろうか。窓から差す光や体のだるさから考えて、それ程長い時間眠っていた訳ではない気がする。


「うん?」


 そこで、私はあることに気がついた。自らの腕に感じる感触が、寝る前と少し違う気がするのだ。

 ふわふわとしていて、まるで毛のような感触だ。リルフには、毛は生えていない。だから、それはおかしいのだ。

 さらに、腕に感じる重さもおかしかった。明らかに、眠る前よりも重いのだ。リルフを腕枕する時は、軽くて驚いたくらいなのに。


「……え?」


 最後に、私は自らの目の前に人間の顔があることに気づいた。

 男の子、いや女の子だろうか。中性的な顔立ちをした私よりも、年下の子供が、私の腕枕で安らかに眠っているのだ。

 可愛い子だ。輝くような金髪に、端正な顔立ち、華奢な体からはそのような印象を受ける。


「ええっと……」


 しかし、どうしてその子が私の腕枕で寝ているのかが、まったくわからなかった。

 この子の顔に、見覚えはない。そんな子供が、私の腕枕で眠っている。それは、明らかにおかしい状況だ。


「でも……」


 だが、私は結構冷静だった。初めは驚いていたのだが、この子の顔を見ていると、不思議と安心できたのだ。

 よく見てみると、この子には見覚えがある。顔は見たことがないが、その雰囲気が私のよく知っている子と似ているのだ。


「うっ……」

「あっ……」


 私がそんなことを考えていると、寝ていた子供が目を覚ました。

 彼、もしくは彼女は私の顔を見ながら、目を丸くしている。何かに、驚いているようだ。


「あれ?」


 子供は、次に自らの手を見ていた。次に、その手で顔や体を触って、何やら困惑している。


「えっと……」

「うん?」

「あの……その……」


 子供は、私に対してたどたどしい声で話しかけてきた。その様子は、まるで自分が言葉を発せることに驚いているかのようだ。

 いや、実際に驚いているのだろう。なぜなら、この子は今まで言語を発することはできなかったのだから。


「リルフ、どうかしたの?」

「え?」


 私が問いかけると、リルフはまた目を丸くして驚いていた。自分が何者であるかを当てられたので、驚いているのだろう。

 この子は、リルフだ。それは、すぐにわかったことである。

 その雰囲気が、リルフであることを教えてくれた。姿は変わっていても、この子の全てがリルフであることを表していたのだ。

 理論的に考えても、眠る前に私の腕枕で眠っていたのはリルフだったのだから、この子がリルフであると考えるのが妥当だろう。

 どちらにしても、この子はリルフであるはずだ。反応から考えても、それは間違いないだろう。

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