第82話 九尾の妖狐アマモ

そこからはスムーズに洞窟内を移動出来た。魔物も出ないしね。


でも何かが引っかかるんだよね……。


戦乱の真っ最中とは言え、何故そちら側からやって来る人間が居なかったんだろう?

まさか向こうの出口が塞がってるとか無いよな?


《それは無いの。この道は知ってる時のままなの》


「はぁ?お前此処を通った事があるのか??」


《随分と昔の話なの》


「そう言う事は早く言ってよ……」


《聞かれてないの》


またそれかい!!全くコイツは……。


「って事はもう直ぐで出口に着くって事か?」


《その前にやる事があるの》


「やる事?」


《この先に居る千年洞窟……“アマモ洞窟”の主と戦うの》


「はぁ??主と戦うだあ???」


「ちょ!ちょっと待って!『眼』ちゃん今“アマモ洞窟”って言わなかった??」


《“アマモ洞窟”って言ったの》


「う、嘘でしょ……それじゃあこの先に居る主って……」


《“アマモ洞窟”の主である九尾の妖狐『アマモ』なの》


九尾の妖狐??アマモ??ここに来て妖怪かよ!!しかもアマモって……玉藻前の親戚か何かか?


「ブリジッタは何か知ってるのか?」


「ええ……叙事詩『エルクスード』の中に“アマモ洞窟”の記述があるのよ……『破滅の五芒星(ベインペンタグラム)を止めるべく、立ち上がりし光の勇者たち、アマモ洞窟にて九尾の妖狐と対峙し仲間を多く失う……アマモ洞窟の主アマモは理の天秤なり……』と言う詩が有るの」


またまた登場しました叙事詩『エルクスード』……って事はこの妖狐とやらは四千年以上生きてるって事かよ!年寄りかっ!


「気になる記述だな……“理の天秤”……どういう意味なのだろう?」


「う〜ん……そこは良く解っていないのだけど……ただ、光の勇者が『破滅の五芒星(ベインペンタグラム)』を何とか封印して人類は救われるのだけど、その無敵だった光の勇者が遺した言葉やその偉業を編纂した“光話”と言う書物の中で光の勇者が唯一『勝てる気がしなかった』と語っていたのがこのアマモだったらしいのよ……」


「えええ……それってヤバいヤツですよね……何とか戦わずに済む方法は無いですかね!?」


《アマモと戦わないと洞窟の外には出られないの》


「何でや?!だって昔は商人達がここ通ってたんでしょうが!!」


《それは商人達が『理の護符』を持って居たからなの》


「それ頂戴よ!!」


《向こう側に有るから無理なの》


うおおおいいい!!その光の勇者様が勝てる気がしねぇって奴とどう戦えってんだよ!殺す気か!!


《主はアマモと戦う運命なの。だから諦めるの》


「簡単に言うなし!!罰ゲームかよ!!」


「こうなったら戦うしかないだろうな……オレは全力で戦おう」


「私も手伝うわよ。うふふ……伝説の妖狐……面白いわね」


「当然、私も戦うわ!!」


何このどっかの戦闘民族みたいな人達は?それとも修羅の国の人ですかね!?この人達リスクとか考えてないの?


《主も覚悟を決めるの》


「分かりましたよ!死ぬ気で頑張りますっ!」


「死んじゃダメじゃないの!!」


「覚悟の話っ!まだ死にたくありません!」


偉くドストレートなツッコミをロザリアから受けた俺は仕方なくとぼとぼと歩き始めた。


『ニヤッ!!』


……ねぇ、何でキラも大きくなって完全に戦闘態勢でやる気満々なの?そして『十三(じゅうぞう)』は何でこれからミッションみたいな感じで魔法銃を磨きながら歩いてるの?君たちも前を歩いてる戦闘民族と同じ種類なの?


偉くやる気満々の人達と一人だけやる気の無い俺がしばらく進むとヤバい感じの魔力が伝わって来た……コレアカンやつや……。


「むう……凄まじい魔力だな」


「そうねぇ……どう戦いを組み立てる?」


「私とブリジッタで先手を取るのがいいわ!」


「ちょっと待って。ここは俺が先陣を切りますよ」


「おっ、何だかんだとやる気満々だな!」


「違いますから!ただ、俺の【血魔法】ならもしかすると防御出来るかもだからですって!」


「なるほど……じゃあラダル君のブロックした後で私達が一気に攻めるって事ね?」


「そう言う事。皆さんその時は全力でお願いします。一撃必殺で!!」


「よし、分かった。最初から行くぞ」


「任せて!!」


《それじゃあコッチに来るの》


『眼』が先頭を浮きながら俺達を案内する。すると、洞窟の先が急に広くなった。

そして洞窟内部の広くなった場所の小高い鍾乳石の上に金色の九尾の妖狐が、銀色の眼でコチラを睨みながら伏せっている。すると『眼』がアマモの方に向かって行く。


《アマモ、久しぶりなの。我の主を連れて来たの》


《……お前か……久しぶりじゃのう……ほう、今回連れて来たのは前と大分変わっておるのう……闇の属性とはな……しかもコレは……とんでもなく歪極まりないぞえ》


《変わってるけど今度の主の実力は確かなの》


おいおい……何、さもお知り合いみたいな感じで普通に話ししてんだ??つうか喋れんのかよ九尾の妖狐は?皆が驚いてんじゃねーか!


《ふん……実力が有るかどうかはこの妾が決める事じゃ……。さあ、存分に楽しむが良かろう!!》


ゆっくりと起き上がった妖狐は更に魔力を増大させた!


《さあ、人間共……存分にやるが良いぞ》


俺は【暴走する理力のスペクターワンド】を左手に、そして右手に金槌を持ちながら【血魔法】を発動させた!そしてそのまま『溶岩砲(マグマキャノン)』を発射する!

アマモはそれをヒラリと避けて俺にブレス攻撃を開始した!それを【血魔法】の赤い霧が受け止める!!

その瞬間にブリジッタさんが瞬間移動の様にアマモの前に飛び出して【天翔る雷覇のフュルフュールレイピア】の雷撃を放った!一撃を喰らい動けないアマモにロザリアが特大の『光線(レーザービーム)』を直撃させてアマモの身体を貫いた!!


「雷炎剣!!兜割り!!」


すかさずアシュのおっちゃんが『首狩りの大剣』で大技を繰り出した!!

アマモは一刀両断される!!


良し!!勝った!!


その瞬間、アマモの姿が光輝いてその場から消え去った。結構呆気ないじゃないのよ!!


「ヨッシャーー!!」


すると『眼』が俺に声を掛ける。


《まだこれからなの》


「は?」


するとアマモの声が不気味に頭の中に響き渡る……。


《……ふむふむ……まあまあじゃな……これならば妾が直接相手をしても問題あるまいよ……》


声が頭の中に響くと同時に俺達の目の前に金色の妖狐が姿を現した……先程と違うのはそれぞれの尻尾の先が赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と虹の七色に別れて輝いている。そして左右の外側に白と黒の尻尾がある九尾となっている。


《さあ、妾に汝等の『理の力』を今度こそ存分に見せるが良いぞ!妾がその力を“量って”やろう!フハハハハ!!》


えええ……ここからが本番なの?マジかよ……。

皆は驚いた顔をしてアマモを見てるよ……まあ、そりゃあそうだわな。

結構、皆出し切った感ありありなんですけどね!!

幻を使ってコッチに全力でやらせておいて後から本体ですって、そりゃあ光の勇者様が『勝てる気がしなかった』ってのは伊達じゃ有りませんね!!ってただの反則じゃねーかよ!!ふざけんな!このクソったれが!!




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




いつもお読み頂きありがとうございます。

千年洞窟改め、アマモ洞窟のアマモ登場です。

いよいよ二章ラストまであと2話となります。

その後閑話を1話入れてから三章の始まりとなりますので宜しくお願い致します。


皆様の応援でPV11万達成しました。

本当にありがとうございます。

もう少しで二章も終了です。ラストスパート頑張ります!!


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