第74話 破滅の五芒星(ベインペンタグラム)
エルフの住処を後にした俺達はアリドー大森林をそのまま進んでいた。
ロザリアは小さくなったキラを抱えて撫でながら進んでいた。キラが身を呈して庇ってくれたのが心に染みている様だね。まあ、当のキラは抱えられながらあくびしてるけど。
キラからすれば身を呈してロザリアを守る位は楽にこなせる。何せ不死身の超再生能力を持ってるから、正直頭を吹き飛ばされても全然平気なんだよね……痛覚もほとんど無いみたいだし。
「ねぇ、ラダル君。エルフの長に言ってた事って本当なの?レブルを倒したって……いつ倒したの?」
「デュラハンを倒した後ですよ。遺跡の最後の部屋に居たんです」
「アレはキツかったな……」
「じゃあ本当なのね?それじゃあ何故、州王様にはデュラハンの事だけ話したの?」
「村で言い損ねた……って所かな。デュラハンが遺跡の罠を使っていたから、そっちの方が大騒ぎになってたからねぇ……まあ、それだけじゃないんだけど……」
「遺跡の罠?……ああ、ギルドで貼られてたあの情報ね?遺跡の魔物が魂を集めてってアレね?」
「そう。あの情報元はアシュのおっちゃんだよ。遺跡の罠に操られた村長が、デュラハンを倒した事で吹き出した魂によって死んだんだ。その騒ぎでデュラハンを倒した事だけが有名になってしまったんだよね。遺跡に閉じ込められた村人達もデュラハンとの戦いには一応参加してたからね」
「レブルと戦った時はラダルとオレの二人だけ部屋に取り込まれたからな。村人達は部屋の外に居て見てなかったんだ。倒して部屋を出てからも余り話さなかったから仕方ないと思う」
「……アナタ達って飛んでも無い魔物と戦ってるわよね?……レブルってバンパイアロード……魔人なのよ?良く倒せたわね?」
「遺跡に取り込まれたレブルは本体は骨だけで磔にされてて……本来の100分の1程の実力しか出せなかったらしい。それで何とか倒せたんだ」
「100分の1って……誰から聞いたの?」
「ファブルって魔人だよ」
「ファブル!!また魔人なの?ソレって傀儡王のファブルでしょ?」
「えっ!ブリジッタさん知ってるの?」
「以前に教皇様からの依頼で魔人についての書籍や記録の類いを集めた事があってね、その時に色々な魔人の事を知ったの」
「へぇ……あの教皇様がねぇ……」
「ブリジッタ、魔人について教えて欲しい、出来るだけ詳しくだ。覚えてる範囲で構わない」
アシュのおっちゃんが食い付き気味だ……珍しいな。でも俺も興味がある……。
ブリジッタさんの話では、魔人の数は判明してるだけで5名。
始祖王(バンパイアロード)のレブル
傀儡王(パペットロード)のファブル
呪詛王(カースロード)のリルブル
終焉王(ディマイスロード)のヘザーブル
混沌王(ケイオスロード)のゼブル
また州王の宝物庫から見付かった古の叙事詩【エルクスード】にはこの様な詩の一節が有るという。
『其の暗黒より現れし紅い眼の魔物達……その邪と魔で地上に終焉の嵐を巻き起こす……絶望と恐怖をもたらせし【破滅の五芒星(ベインペンタグラム)】……この災厄が通る道には魂を抜かれた死者の山が積み上がる……』
叙事詩【エルクスード】……四千年以上前に起こった“魔人戦争”と言う人類が滅亡の一歩手前まで追い込まれた戦争を伝える叙事詩で、人類を恐怖のどん底へ突き落とした元凶が『破滅の五芒星(ベインペンタグラム)』と呼ばれる魔人達だったとの詩の記述があった事から、魔人の総数はこの5名と考えられていると言う。
その中でも他の記録に残っている魔人が始祖王(バンパイアロード)のレブル、呪詛王(カースロード)のリルブル、そして傀儡王(パペットロード)のファブルの3名であるらしい。見つかっただけでもレブルの記録は計三回、リルブルの記録は計二回、そしてファブルの記録は計八回と圧倒的に多い。その全てが魂を集める為に自分の力を貸して、その者に人間を襲わせる。終わるとその者は奴隷として死ぬまでファブルに使えさせられると言う記述らしい。
但し、何故ファブルが魂を集めているのかは謎であるらしく、色々と調べたが結局判明しなかったとブリジッタさんは話していた。
俺はブリジッタさんにファブルとの経緯を話す事にした。但し、何れあの村がどうなるかや村長が次の奴隷のターゲットなのは言わなかった。言ったところでどうにもならんしな。
「ラダル君は魔人とかあの真ん丸とか……結構ヤバそうな連中に絡まれてるわね……」
「飛ばされてこの地に来てからですよ……ホントに」
《主は巻き込まれ体質なの》
「いやいや……真ん丸はお前のせいだろ!」
《そんな事は無いの。主のせいなの》
「良く言うわ!何も話さんクセに!ガルルル!!」
《また怒ったの》
チッ……いつか真相は語られるのだろうけど面倒臭い事になる予感しかしねぇな!!
しかし、確かに色々なのに絡まれ過ぎだな……何でや??
俺は歩を進めながら今までの経緯を考える。
レブルは昔、真ん丸と組んで泉の水を集めていた。しかし、レブルは遺跡に取り込まれた。
真ん丸はまだ水を集めていて、新しい主 (もしくは前から?)がいるという事。
ファブルは魂をずっと集めている。ファブルはレブルを『愚の骨頂』と言ったし『会った事は有る』程度の繋がりだった。つまりはこの二人は組んでない。そしてファブルは『我と同じ闇に仕えし者』と言った……つまりはファブルやレブルには主が居るという事。そして最後に分からないのは『傀儡王(パペットロード)』と言う二つ名を持っているにも関わらす、自分の事を【怨呪】のファブルと言った事だ。【怨呪】と言うくらいなら『呪詛王(カースロード)のリルブル』と言う奴の方が【怨呪】で良くね?うーん……。
何か考えれば考えるほど分からねぇ……つうか多分これを解く為のピースが全く足りてねぇんだな。そしてそのピースを『眼』は確実に持ってる……だが教えないと言う事……いや、教える“権限が無い”という事は、更に権限を持つ輩が居るって事だな……って事は先ずその“権限を持つ奴“に会わなきゃダメなんだろうよ。
つまりは
『故郷に帰る事』
『真ん丸の動向』
『ファブルの動向』
この三つを俺は見なきゃいけねぇんだな。あーめんどくせぇなー。
俺の傍に『眼』がやって来てフワフワ浮いてる。
「何か用か?」
《我はアレと違って裏切らないの》
「それは状況次第じゃねーの?」
《絶対に裏切らないの》
「……分かった。是非そうしてくれ」
『眼』はまたフワフワと空に浮いて行ってしまった。
まあ、わざわざ言いに来たんだからそういう事なのだろう。
真ん丸とは相容れない『眼』は俺を裏切らないと言った。つまり、真ん丸は誰かを裏切ったって事な。誰を?それは遺跡で磔にされてた奴だろうよ。って事は奴が集めてる水は主の為というよりは主をハメる為に集めてるのだろうか?
そこもまだ確定は出来ないところだな。
「ラダル……何難しい顔してんのよ?」
ロザリアが心配したのか俺に声を掛けてきた。
「ちょっと頭の中を整理してたんだ。整理整頓が俺のモットーだからな」
「ロザリアも見習った方がいいわね〜」
「なっ……わ、私はちゃんとやってるわよ!」
「ふ〜ん……じゃあリュックの中身見せなさいな」
ロザリアはリュックを抱えるようにして断固拒否している……分かりやすいなあ。コントかな?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつもお読み頂きありがとうございます。
今回は魔人の情報と今までの経緯を振り返っています。
教皇が何故魔人の情報を集めていたのか?
そもそも魔人は5人だけなのか?
真ん丸の真の狙いとは?
まだまだ謎が謎を呼ぶ展開です。
遂に9万PV達成しました。本当に感謝申し上げます。
また数多くの方にフォローして頂けて感謝しております。
これからも頑張ります。
引き続き応援宜しくお願い致します。
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