第46話 収束の先
《ほう、我の本体を見破ったか……見事であるぞ。ラダルよ、貴様は思ったよりも出来る様だな。フハハハハ!》
レブルは嬉しそうに言っているがそれはまだまだ余裕がある証拠なのだろう……チッ。
俺はそのまま【暴走する理力のスペクターワンド】を構えながら『溶岩弾(マグマバレット)』を白骨に向けて連射したが、何と頑強な魔法障壁の様なものに阻まれた。
《フフフ……その使いこなせてない力では壁を貫通させられぬぞ》
そう言いながらアシュのおっちゃんを吹き飛ばしながら俺に攻撃を仕掛けてくる!俺は背中のランドセルに取り付けてた遺跡の盾を使ってレブルの一撃をブロックしたが、その威力で飛ばされる!俺は飛ばされた先の方に『泥壁(マッドウォール)』を発動して威力を弱めた。
更に追ってくるレブルをアシュのおっちゃんが大剣で斬りつけて行く。
レブルは身を斬られたが再生させて俺に襲いかかって来る!
俺は『陽炎』を掛けながら一撃を避けて『溶岩弾(マグマバレット)』を撃ち込みながら右手の金槌でレブルの顔面をぶん殴った!
レブルは吹っ飛んだのを見て俺とアシュのおっちゃんは白骨に向かって走り出し白骨に向けて大剣と金槌でフルスイングした!!
ガキーーン!!
レブルの魔法障壁が俺達全力のフルスイングに耐え切った……ウソだろ??
その時、油断した俺の右脇腹にレブルの剣が突き刺さる!!するとそこから何が入って来ようとするが、俺の『ザ・コア』から別の何かがそれを阻止しようとしただけでなく更にソイツに侵食しようとした。レブルは驚いた様に突き刺した剣を抜いて俺から離れた。
「ラダル!!」
アシュのおっちゃんがレブルに一撃をかました!!
その隙に俺は傷を『生命玉』で治しておく。
《貴様!何故我の【支配】を防げる?!》
レブルは余程驚いたのだろう、奴は紅い眼で俺の事を見透かす様に睨み付ける……恐らくは鑑定のような物を使っているのだろう。
《そうか!それはグレーターダークラミアの【支配】だな?……しかしその玉は恐ろしいな…支配するどころか防いだ挙句にこちらを取り込もうとしたぞ。ラダルよ、貴様は思った以上に危険な存在の様だな》
そうかヤツは【支配】のスキルを使って俺を眷属にしようとしたのか。だが俺の【ザ・コア】はグレーターダークラミアの【支配】のスキルを取り込んでいる。だからヤツの【支配】が通用しなかったのだ。
恐らく肉体を持たないヤツの分体は吸血出来ないのだろう。本体自体も白骨化しているし……だから【支配】で眷属にしようとしたのだね。流石はバンパイアロード……白骨でも眷属を増やせるとはね!
「おっちゃん!あの剣で刺されると眷属にされるから気をつけて!!」
「お、おう!…そう言うラダルは平気なのか?刺さってたぞ?」
「俺はアイツと同じスキルを吸収してるから大丈夫!!」
「……それって…本当に大丈夫なヤツか?」
失敬な……そんな怪物でも見るような生温い目で見ないで下さいよ!可愛い盛りじゃないか!
俺はその怒りをレブルへの攻撃に向けるとする。
俺は白骨に向けて『溶岩弾(マグマバレット)』を連射してその後金槌でフルスイングしたが、やはり魔法障壁は破れない。
《無駄な事を良くもまあ飽きもせずにやるものよのう……》
分体は俺を支配出来ないと見るや狙いをアシュのおっちゃんに変えた様である。アシュのおっちゃんは大剣を器用に使いながらレブルの攻撃を否しながら自分の攻撃を当てているのだが、再生能力が速すぎてダメージが与えられていない。
その時、攻撃をしながらブツブツと詠唱をしていたアシュのおっちゃんの魔力が膨れ上がった!!
「『暴炎旋風(フレアストーム)』」
炎の竜巻がレブルに襲いかかり焼きつくした!!
だが、炭化したと思われたレブルの分体はその超再生能力で元に戻ってしまった!マジかよ!
《ほう……アシュトレイ、身体強化型の大剣使いかと思っていたが……まさか貴様も合成魔法の使い手だったとはな。二人して珍しい組み合わせよのう……フハハハハ愉快愉快!!》
奥の手が通用せずにアシュのおっちゃんもマズいと感じてる表情だな……このままじゃジリ貧だ……どうする……。
その時俺の左手に握られていた【暴走する理力のスペクターワンド】がカタカタと震え出した……何これ??おっかないんですけど……何かを伝えようとしているのか?……俺は意識を集中する……。
《集束の……先へ……》
集束の先??集束の先って何だ?
収束……その先……集まる……あっ、そうか……それなら出来るかも……。
俺はその白骨に向けて【暴走する理力のスペクターワンド】を構えて魔力を“集束”させ、更に“圧縮”を掛けてみる……。
《……それは理の力を理解して無いからなの……》
《……如何すれば魔法になるかを考えるの……》
前に聞いた『眼』の言葉が俺の頭の中に鳴り響く……。
魔力とは何か?そして魔法とは何か?…それこそが“理の力”を理解し、それを引き出す鍵だ。
そしてレブルは“暴走”させなければ使いこなせてないと俺に言った。もしかしてそれはヒントなのでは無いか??
魔力と魔法は“集束”である。ならば“暴走”はその先端になる訳だ…ならば“集束”の直ぐ先は?と考えて俺は力の“圧縮”がその先と考えた。つまり“圧縮”させた力が行き場を失い“暴走”するのだと…。つまり“暴走”をさせて促すには行き場を失った力の方向を“制御”する事なのでは無いか?と。
俺は収束した魔力を更に強くし圧縮させるイメージで魔力で圧をかける……すると【暴走する理力のスペクターワンド】は魔力を圧縮させる毎に色が紅く変わり始める。
《き、貴様!?まさか??》
アシュのおっちゃんと斬り合いを演じていたレブルがこの戦いの中で二度目の焦った様な感情を出した。
この慌てた様子にアシュのおっちゃんはレブルをブロックする様に立ち回っている!おっちゃんナイス!
どうやら正解を導けたようだ……後はこの力の制御だけだが…【暴走する理力のスペクターワンド】の先端を圧縮した力の出口としてストローのイメージを通した……筒を抜けて一気に【暴走する理力】は白骨に向かって飛び出して行く!!それは『溶岩弾(マグマバレット)』を遥かに超えた質量と破壊力を持った正に“とある兵器”に似たものだ。
《や、やめろおおぉぉ!!!!》
ガシャーーン!!!
魔法障壁が割れるのと同時に白骨の胸に深々と突き刺さった『溶岩砲弾(マグマロケット)』が爆発した!!
《ぎゃああああ!!!!!》
レブルは苦しみのあまり仰向け倒れたまま跳ね上がる様に痙攣している。
俺はもう一度【暴走する理力のスペクターワンド】に圧縮を掛けながら『溶岩砲弾(マグマロケット)』を残ってこちらを睨みつけている白骨の頭に狙いを定める。
「良い夢見ろよ……レブル。アバヨ!!」
『溶岩砲弾(マグマロケット)』を撃ったその瞬間、俺の意識はぶっ飛んだ……。
俺は浮き上がって自分を見ていた……幽体離脱か??
その時にドス黒い……いやいや、ドス紅い魂が近寄って来るのが見える……アレはレブルの魂なのか??
《お、おのれ……小童……よくも……我の身体を壊してくれたな……まあ、良いだろう……それならば貴様の身体を頂くとしよう……》
俺に襲いかかって来るレブルの魂だが、俺の魂を乗っ取ろうと近づいた刹那、レブルの魂に俺の中から出て来た【ザ・コア】がレブルの魂に取り憑いた……。
《こ、これは貴様の……まさか魂にまで……や、やめろ!!ぎゃああああ!!!》
【ザ・コア】はレブルの魂を一気に侵食していき、そのまま吸収してしまった。そして俺の中にデュラハンの時とは比べ物にならないドロッとした何かが流れ込んて来た。
【ザ・コア】のイメージはブラックホールである。俺は魔力を吸収する為にそのイメージをこのスキルに持たせた。それが闇属性となり、色々な闇属性の魔物の力を吸収して進化して行ったのだろう。そしてまた闇属性の魔物を吸収した……【ザ・コア】は何処まで進化するのだろう?
その後、俺の魂の中に入っていった……その瞬間、物凄い倦怠感に襲われた俺はそのまま深い眠りに着いた……。
「ラダル!!しっかりしろ!!ラダル!!」
おっちゃんの声……俺は……身体が上手く動かない……何か身体と魂がズレてる感覚がするよ……コレってヤバくね??
その時不意に声が聞こえて来た。
《ふう、やっと主を見つけたの……》
この声は……ま、まさか……。
《今、起こすの。魂と身体のパスを繋げるの……》
俺はようやく起き上がる事が出来た。そして、俺の頭上にフワフワ浮いている『眼』が現れたのだった。
《全く……相変わらず世話の焼ける主なの……》
「お前……何でここに居るんだ?」
《それは我が主を探してやって来たからなの。とても時間がかかったの》
「そうか……あの森から飛んで来たのか?って事はココはやっぱり違う世界じゃ無かったんだな!!良かった!!」
《……それは同じ世界に決まってるの》
「飛んで来たんだろ?どういう風に飛んで来たんだ??」
《物凄い高く空に上がって風に揺られて西からやって来たの》
「遥か上空……そうか!偏西風に乗ってやって来たのか!…なるほどなるほど……って事は逆の方が近いのか?俺たち東に向かってたんだが……」
《どちらかと言うと近いのはそっちなの。我は風に乗って速く来れる方でやって来たの》
良かった……どうやら方角は合っていた様である。これで逆方面とか目も当てられない。
アシュのおっちゃんは絶句したまま俺と『眼』を交互に見ている。
《主はどうやらワンドをソコソコ使いこなせる様にはなったの。でもしばらくはその暴走する力は使わない方が良いの》
「は?どうしてさ?」
《それはさっきみたいになるからなの》
「えっ……さっきみたいにって……アレってまさか……『溶岩砲弾(マグマロケット)』のせいなの??」
《はぁ……呆れたの……危なく死にかけてたの》
ゲッ!マジかよ……って事は【暴走する理力のスペクターワンド】を暴走させると魔力によるオーバーヒートが起こるって事かあああああああああぁぁぁ……。また俺は限界にぶち当たったのかよぉぉぉぉ!!チートキャラ認定はまだなのかよおおお!!
そして嘆きの俺にアシュのおっちゃんが問いかける……。
「ラ、ラダル……その四角いのは一体なんだ??」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつもお読み頂きありがとうございます。
対レブル戦の続きでした。如何だったでしょうか?
ラダルはやっと『眼』と合流しまして一緒に旅を続ける事になります。
【暴走する理力のスペクターワンド】をやっと使いこなせる可能性が出たところでの足踏みは、いつものラダル(定期)と言っていいでしょう。
皆様の応援いつも感謝しております。
引き続き楽しんでお読み頂ければ幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます