第44話 呪わば穴二つ
では村長はなぜ嘘をついたのか?
「村長は遺跡の秘術を試そうとしている様だな」
「な!!あんた一体何者なんだ??」
「俺達は旅の途中の冒険者と魔法兵だよ」
「魔法兵?」
「俺達はかなり遠くから転移の罠でこの地に飛ばされて来たんだ。オレは冒険者でこの子は魔法兵だった。それで遺跡の件だが、勿論向こうにも遺跡は有る。オレは遺跡を調査していた時期も有るんでな…それでだ、遺跡の秘術はな簡単に言うと遺跡の罠だ」
「罠だって??」
「遺跡の秘術と言うのは人間の命を奪う為の遺跡の罠なんだ。だから秘術を行っても何も得られない。この事はもう向こうでは常識になっている」
「そんな…馬鹿な…じゃあ俺達は何の為に…」
「向こうでもこの件が明らかになる前は大勢の命が犠牲となったよ。君たちだけじゃ無いんだ…この遺跡の罠にハメられたのはな。ホントに凶悪極まりない罠さ」
「ちょっと待って。おっちゃんは命を奪う為の遺跡の罠って言ったけど、何の為に人間の命を奪うのさ?」
「それはな各部屋にいる主が魔物を引き連れて遺跡の外に出る為さ。遺跡は基本的に人間を敵として認識してるからね」
「じゃあ外に出て人間を殺す為に?」
「そうだ。彼らはそれを“浄化”と呼んでいるらしい」
「じゃあ秘術をする意味は…」
「無い。それどころか自分を殺させる為に手先となってる様なもんだ。恐らく不死や蘇りに関する巻物が遺跡の中から出て来たはずだ。それと“血の契約”してしまうと主の意のままに操られる」
なんつう卑劣な罠なのか…遺跡って一体何者なんだよ??
「じゃあ阻止する為にはどうすれば?」
「その秘術を契約させた主を倒す。その為にここに来た。だから君たちも手を貸してくれ。街の人達を守る為だ」
「ぬ、主を倒せば街の連中は助かるのか?」
「助かるよ。主を倒すとそれまで貯められた命…いや魂と呼んだ方が正しいか、それが解放されるからな」
そしてアシュのおっちゃんが苦虫を噛み潰したような顔でこう言った。
「そしてその解放された全ての魂は…“血の契約”を行った契約者に襲い掛かる」
「つまり、村長が……」
「ああ。だからオレは村長に言伝をしただろう?『身の回りの準備を怠るな』アレは死ぬ前に自分の身辺を綺麗にしておけと言う意味だ」
「なるほど……『呪わば穴二つ』って事か……」
「ん?呪わば穴二つ??」
「呪いをかける者は墓穴を相手と自分の分を掘れ…つまりは呪いは自分に返るという事から、人を陥れたりすると自らに返って来るぞと言う意味だよ」
「ほう…中々面白い言い回しだな。確かに皆を陥れていただろうからな」
「んで、コレからどうするの?主ってのを倒すんでしょ?」
「そうだな、まずは主の部屋を探さないとな。主の魔力が上がってる筈だから魔力感知で分かると思ったのだが…」
確かに魔力感知に魔力が増大してる魔物が引っかかって来ない…俺は【エナジードレイン】を発動する…すると今までに無い反応がある…どうやらエナジードレインを受け付け無い様だな…こんな奴は今まで初めてだよ…こりゃあ驚いた。
「アシュのおっちゃん、ちょっと興味深い反応が有ったからそこ見に行きたいんだけど」
「ほう…じゃあそこに行ってみよう。罠には気を付けてな」
俺達はそこに向かって歩き出した。途中で出てきたのはアンデッドの魔物だった…ちょっと待てよ…アンデッドの魔物にも【エナジードレイン】は発動したのに何であの反応なのだろう…コレはひょっとしたら当たりじゃね??
しかしアンデッドはめんどくさい…しつこいし臭いし…倒しても魔石取るの嫌なんですけど!!
しばらくアンデッドを倒しながら先に向かうと何やら仰々しい扉の前に出た。先程の反応はこの中からだ。
「ラダル、先程言ってたのはこの中からか?」
「そうだよ。もしかして当たりじゃない?」
「確かにこの扉は主の部屋の物だが…魔力を全く感じないとはどういう事だ…?」
「魔力を消す…『隠密』の様なもの…まさか…」
「どうした?ラダル」
「今までの魔物の種類…俺のスキルが反応しない…そして魔力を感知させない『隠密』の発動…この部屋の主は闇属性の者……アンデッドの上位種である可能性が高いかもしれない」
「な、何だと??アンデッドの上位種…だと??」
「さて、何が出るやら…デュラハンか?それともバンパイアかはたまたリッチが出て来るのか??」
俺は扉を開ける前に盾を装備して、魔法障壁と『陽炎』を発動させた。そしてアシュのおっちゃんが扉を開けると…中で待っていたのは首無しの鎧…デュラハンであった。
アシュのおっちゃんは一気に間を詰めてハルバートをぶん回すがデュラハンは余裕を持って大剣で受ける。俺はすかさず『溶岩弾(マグマバレット)』をデュラハンに撃ち込むが盾で防がれてしまった。そこに村人達が加勢するもデュラハンの大剣のひと凪で吹き飛ばされて気絶してしまう。うそーん!役に立たねぇな!おい!
アシュのおっちゃんはハルバートで突いたり殴ったりを繰り返すが大剣と盾に阻まれて中々上手く当たらない。コイツかなりの使い手だな。
俺のバレットや『溶岩弾(マグマバレット)』も盾で防がれる。俺は『千仞(せんじん)』を発動してデュラハンの動きを止めようとしたが、デュラハンに避けられてしまった。デュラハンはアシュのおっちゃんを大剣で吹き飛ばすと俺に迫ってくる。俺は魔法障壁を移動させたが大剣の一撃で破壊された!
迫る大剣!だが俺は【暴走する理力のスペクターワンド】を握り締めて一か八かの『泥壁(マッドウォール)』を発動した!泥の壁に食い込む大剣は勢いを殺されて泥壁に食い込んだ!よしっ!上手く行ったぞ!!俺は空かさず遺跡の金槌でデュラハンをぶん殴った!!
しかし、それを盾で受け切るデュラハン!だがそのデュラハンの背にアシュのおっちゃんがハルバートを突き立てていた!
動きが止まるデュラハンに再び俺は遺跡の金槌を振り抜いてデュラハンの腰の辺りに直撃させた!!吹っ飛んだデュラハンに俺は【暴走する理力のスペクターワンド】を握り締めて『溶岩砲(マグマキャノン)』を直撃させる!
だがデュラハンは盾でそれを防ぐとそのまま俺に突進して来る!
俺は『泥壁(マッドウォール)』を発動してデュラハンの突進を止めようとしたが、デュラハンはそれを寸前て回避して回り込み、俺に大剣を突いてきた!!
俺は魔法障壁を張ったがそれを砕いた大剣は構えた盾も貫いて俺の土手っ腹に突き刺さった!!おいおい嘘だろ…ミスリルの鎖帷子も貫くかよ……。
「ラダル!!」
意識が飛びそうだったが、俺は【暴走する理力のスペクターワンド】を握り締めてデュラハンに『溶岩弾(マグマバレット)』を一気に10連射させた!!俺を刺していた大剣ごと吹き飛んだデュラハンに、アシュのおっちゃんがハルバートを振り下ろして鎧ごと袈裟斬りにした!!
胴体が袈裟斬りでズルっと斜めに落ちる…デュラハンは動きが完全に止まって遺跡に飲まれて行く……するとデュラハンから無数の人の顔が薄ら浮き出た火の玉のような物が飛び出して行った…。完全なホラーですやん!!
その後、俺の中にドロっとしたものが流れ込んだ……ラミア戦の時と同じ…いや、もっと濃いヤツだ。後で確認するとしよう。
それより先に俺は『生命玉』を使って回復をした…マジで死んだかと思ったが『生命玉』を半分消費して何とか生き延びる事が出来た。はぁ……結構ヤバかったぜ……。
「ラダル!!しっかりし……はああああ??!」
「変な声出さないでよおっちゃん…もう回復したから平気だよ」
「おいおい……回復って…一体どうやったんた??」
「そりゃあ……企業秘密って事で!!」
「キ、キギョウ??何だ??」
「内緒って事だよ。ところでデュラハンは何のお宝を落としたのかな?」
デュラハンが遺跡に飲まれた後に大きな魔石と三つのアイテムが残されていた。
二つはデュラハンが持っていた大剣と盾である。そしてもうひとつは指輪である。ここに『眼』が居ればこれの鑑定が出来たのだけどなあ……。
そして俺は闇属性の上位種を倒した事で、闇魔法の深度が更に深まった様だ…。
◆◆◆◆◆
青白い火の玉のような物が遺跡の中から飛び出して、街の方へと一気に迫りつつあった。
その時、村長の部屋では“血の契約”の巻物が紫色の炎が立ち上り焼かれる様に消えてしまった。
「な、何いいい!!ま、巻物があああ!!」
驚きのあまり腰を抜かして倒れた村長。
彼はその時に秘術が遺跡の罠だった事を気付かされる。
「な、何と…ワシは……愚かな事を…」
その時、彼の脳裏に冒険者からの言伝が蘇る。
『オレ達が帰る前に身の回りの準備を怠るな』
そうか…彼は知っていたのか…この遺跡の罠を…私がやって来た愚かな行いの事を…。
だが、戻った時は…そうだ、彼らを亡き者にすれば良い。そうだ…そうすれば今までのままだ……。
村長はアシュトレイのその言伝の意味を履き違えて居たようだ。村長に真実を突きつけるのは彼らでは無い事に……。
そして、その準備は今からではもう遅いのだ。
そして村長に遺跡から飛び出した青白い火の玉の群れが迫って来た。
「な、何じゃコレは??」
その青白い火の玉に囲まれて村長はやっとかの冒険者の言伝の本当の意味を知る事となった。
「た、助けてくれ……」
その時青白い火の玉にはっきりとした人の顔が浮き上がって来る。
「ぎゃああああ!!!!!」
断末魔と共に青白い火の玉の群れが村長の身体を食いちぎる様に何度も何度も襲い掛かる!!
気が付いた村人達がやって来た時に残されたのは、僅かな肉片と吹き出した血の跡だけであったという。
◇◇◇◇◇◇◇◇
いつもお読み頂きありがとうございます。
村長の最期は如何だったでしょうか?軽くホラーチックにしてみました。
まだまだ遺跡探検は続きますのでお付き合い下さいませ。
応援いつも沢山頂き感謝しております。
これからも宜しくお願いいたします。
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