第25話 赤い鉾のミューラン

嫌らしいゲリラ攻撃を受け続けたローレシア軍は、辛抱出来ず遂に此方に仕掛けて来た。

不敗の爺ちゃんの目論見通りじゃねーの。ローレシア軍はチョロいね。

コレを抜ければ目的地のランスロッテ城である。コレを獲ってしまえば王国は初めて山岳地帯を越えた領土を獲る事となる。

俺達はワンパターンの伏兵共の殲滅作戦を行い、そこに布陣した。

そして【四帥】全員による大規模魔法攻撃をローレシア軍の先鋒に浴びせる。ローレシア軍はなす術無く先鋒が崩壊する中、王国軍の先鋒隊の総攻撃を受ける。

正にしてやったりの状況であるが、不敗の爺ちゃんの策はここからが本番である。

すぐさま【四帥】に大規模魔法のチャージをさせる。

すると新手のローレシア軍騎馬隊六万が我々の後ろから襲って来た!挟み撃ちにするつもりなのだろう。

【四帥】はくるりと反転してローレシア軍の騎馬隊に向かって大規模魔法を詠唱する。その前で他の魔導師団員達が一斉に後ろから来た騎馬隊に向かって魔法を撃ち込んで行く!!

まさかの攻撃に騎馬隊の勢いが止まってしまう。

そして止まった騎馬隊に向かって【四帥】の大規模攻撃魔法が一斉に炸裂した!!

相乗効果もあり一気に四万以上の騎馬隊が戦闘不能に陥った。其処に左右に別れた王国軍二万が襲い掛かる。

そして中央からカルディナス軍が突撃して行ったのである。

此処までが不敗の爺ちゃんの目論見通りである。

コレを誘う為にワザと襲って来やすい様に最初から動いていたのだ。そして中規模魔法攻撃で足止めをしてトドメの大規模魔法攻撃を撃ち込む。だから初撃は大規模魔法攻撃のみだったのである。

この戦場は不敗の爺ちゃんの掌の上だった。


俺達カルディナス軍は2番隊がこじ開けた中央を1番隊が傾れ込んで3番隊の援護の元、乱戦に持ち込む。

そして敵将を目掛けて4番隊が一気に駆け上って行く!!

俺はローレシア軍に突撃する前に【エナジードレイン】を敵軍全体を指定して発動させた。


「我はカルディナス軍4番隊隊長のゴンサレスである!!ローレシアの敵将は何処だ!!」


するとローレシア軍の中からとんでも無いスピードでやって来る騎馬が居る。赤い大きな鉾を持った男だ。


「おのれ!!ゴンサレス!!ゾードの仇は俺が獲ってやるわ!!」


その男はゴンサレス隊長と交錯して双方一撃を放ち合う!!スゲェー音がして場の空気が固まる。


「俺はローレシア軍ハーラン=ミュラーダ将軍である!ゴンサレス!貴様の首はもらい受けるぞ!!」


「中々やるなあ…気に入ったぜ。オマエもゾードから頂いたこの金棒でアイツの所に送ってやるぜ!!」


そう言って二人が撃ち合う!!

凄まじい撃ち合いだが徐々にゴンサレス隊長に切り傷が多くなってきた。

ハーランの鉾も赤いので隊長の金棒と同じオリハルコン製なのは間違いない。そうなれば本人の能力次第で勝敗は決まる。

ハーランは攻撃の回転が速くゴンサレス隊長が苦戦している様に見える…初めて見た者ならば、では有るが。しかしながらここからがゴンサレス隊長の真骨頂である。

ゴンサレス隊長は一気に魔力を上げてハーランに一撃を叩き込むと、ハーランは受け切れずに吹き飛ばされそうになる。

その隙を見逃さないゴンサレス隊長はハーランに迫る!!ハーランは其処から魔力を一気に鉾に込めて振り上げる!!魔力のぶつかり合いで生じた衝撃波が周りの兵士達を吹き飛ばす!!俺は杖に魔力を入れて何とか踏みとどまる。

その後も何度かその様な凄まじい打撃が繰り返されたが、6撃目で遂にハーランの方が耐え切れずに吹き飛ばされた!!

其処に襲い掛かるゴンサレス隊長!!

ハーランはゴンサレス隊長の一撃を食らって倒された。


「敵将ハーラン=ミュラーダを討ち取ったぞ!!!」


俺はすぐ様ゴンサレス隊長に襲い掛かる敵軍を『千仞(せんじん)』で足止めして『溶岩砲(マグマキャノン)』を連射した。

馬を降り鉾を拾って俺に放り投げたゴンサレス隊長は「ベイカーに持って行ってやれ」と言い残すと再び騎乗し、敵軍に襲い掛かって行った。

俺は走って魔力を頼りにベイカー隊長の元に向かうとベイカー隊長は周りの兵士たちを鬼の様に切り倒しまくっていた…流石はゴンサレス隊長の同期の桜だ。


「ベイカー隊長!!コレを!!」


俺はゴンサレス隊長から受け取った鉾をベイカー隊長に持って行く。


「ラダルか?!ソレは…如何したのだ?」


「隊長が敵将を討ち取り、コレをベイカー隊長持って行けと!!」


ベイカー隊長は自分の鉾を脇に居た兵士に手渡し、その鉾を俺から受け取り二、三回振り回すとニヤリと笑い、俺にこう言った。


「ラダルよ!ゴンサレスに『確かに受け取った』と申しておけ!!」


と言い残すと矢張りゴンサレス隊長と同じ様に敵軍に襲い掛かって行った…やっぱり同じ種類の人なんだね…別の星の人かな?


俺は其処を後にして敵に魔法を撃ち込んだり、杖でぶん殴ったりしながらゴンサレス隊長を追い掛ける。【エナジードレイン】で敵軍を指定しているので、乱戦の状況でも確実に敵兵を倒しながら追い掛ける事が可能だ。

でも馬に乗ってるからさあ…追い付くのも一苦労だよ!!


「ゴンサレス隊長ぉ〜ベイカー隊長に渡して来ましたぁ〜『確かに受け取った』とぉ〜」


「何ヘバってんだ!!だらしねぇぞ!!」


「は、はいぃぃ〜〜」


俺だって馬に乗ってりゃあこんなに疲れないよ!!まあ、馬に乗れないんだけどさ!!


左右の王国軍騎馬隊に襲われ、真ん中からカルディナス軍に突撃されたローレシア軍は、ハーラン将軍が討ち取られた事もあり逃げ帰る事となった。ソコソコ追撃されたので一万は逃げられなかった様だ。

後ろのローレシア軍を撃退した俺達は再び本陣に戻って前進する。


前方では王国軍とローレシア軍が拮抗した戦いをしていたが、頼りの後方からの奇襲が失敗に終わったローレシア軍が、段々と王国軍に押され始めた。王国軍は徐々にハの字の様に陣形を取り、ハの字の真ん中に王国軍の本隊が一気に傾れ込んでいく!!その先陣を切るのはゴンサレス隊長とベイカー隊長の二人である。

この二人の突破力は凄まじく、敵軍の奥まで一気に突破して行った!

自軍深くまで食い込まれたローレシア軍は立て直しを計るが勢いづく王国軍を止める事は不可能だった。

いよいよ自身がヤバくなったローレシア軍本陣は退却する事を余儀なくされるが既に迫って来た王国軍から逃げ延びる事も叶わない状況に追い込まれていた。それほど王国軍の…特にカルディナス軍の突破力が凄まじかったのだ。

ローレシアの本陣は何とか退却しようと藻掻いたが判断の遅れは致命的でどんどんと追い詰められるばかりであった。

そして1時間後、ローレシア軍大将の首をベイカー隊長が獲ってローレシア軍を撃破したのである。


その後、更に追撃されたローレシア軍は、負傷兵二万人を含めた四万八千が逃げ帰る事となる。


その後の『お宝タイム』はかなりのお宝を得る事が出来たので上出来だった。中でも敵軍本陣に居た銀ピカの鎧の奴の喉元に『溶岩弾(マグマバレット)』ヒットさせて討ち取れたので、ソイツの装備を根こそぎ頂いたのだが、その中の鎖帷子がミスリル製だったので俺の装備にする事にした。ブカブカだけど何とか着れるし軽いからね。他はブカブカ過ぎて装着出来ないので保留。暫くは魔導鞄の肥やしかな。

その他にも剣やら盾やら、良さそうな物を鞄にガンガン仕舞ったよ。


この戦いでローレシア軍は何と約十四万の兵士が倒された。歴史的大敗である。

王国軍は二万近くの兵士を失ったが完全勝利と言って良い出来であった。

我がカルディナス軍は今回戦いで出撃した二万五千の内、死者が684名とかなりの少ない被害であった。


そして王国軍はそのままランスロッテ城に迫ったが、ランスロッテ城の城主イワン=ランスロッテは最早これまでと白旗を掲げ降伏をする。

先の戦いから逃げ延びて来たローレシア軍を補給をさせてすぐさま撤退させた後、無血開城で王国軍を迎え入れる。

そして自らの命を差し出す代わりに城内や城下の民を一切傷付けずに略奪もしない様にして欲しいと願い出た。

その見事な覚悟と潔さに加え、領民に対する慈愛に不敗の爺ちゃんはランスロッテをこちら側に引き入れる事にしたらしい。

散々説得をして王国に迎え入れる事となる。

つまりはこの街での『お宝タイム』は無くなったのだ…チッ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



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