第19話 ヘスティアさんの薬草料理

翌日に備えてゆっくり寝ようとは思うが、闇魔法について何もしてなかった。

さて、闇魔法の何が使えるのか?


暗闇:相手の目を見えなくする。成功率20%、持続8分 (パッシブ)

麻痺:相手の動きを麻痺させる。成功率8%、持続3分 (パッシブ)

猛毒:相手に毒を与える。成功率25%、持続5分 (パッシブ)

隠密:自分の存在感を消す。持続1分

陽炎:自分の姿を相手から見え難くさせる。持続1分


どうやらコレが俺の使える闇魔法らしい。

まあ、攻撃補助は運次第なので掛かればラッキー位の感じかな。しかしパッシブとは驚いたな…勿論、闇魔法をかけた状態で有ればだが。

『隠密』と『陽炎』は使いどころによっては有効だな。

まあ、低級だとこの程度なのかな?良くわからん。

大体が闇魔法の使い手って数少ないんだから仕方無いよなあ…ってちょい待てよ…。

ウチにも一人居るな…闇魔法の使い手…。

だけどオレが闇魔法を使える事を知られるのがどうなのか?

う〜ん…しばらく様子見するかな。


俺は寝る事にした。


翌日はヘスティアさんに3日間休みを貰った事を知らせると「明日、朝方から森に行って薬草を採ってから料理にしよう」と言うので日の出くらいに待ち合わせしようと約束した。


俺は料理用の肉を探しに森に入った。北側は殆ど駆逐して居るので東側の方へ向かう。

気配を感じるエリアが3倍になっているのでしばらく歩いていると気配を3つ発見する。

俺はある程度魔物に近づくと闇魔法の『隠密』を起動してみる。

魔物は全く俺が見えていない様で警戒感ゼロだった。そして素早く後ろに回り込み『溶岩弾(マグマバレット)』を近距離から後頭部に撃ち込んで倒した。

水魔法を使って血抜きを素早く行ない、直ぐにあと2つの気配を追う。


『隠密』はかなり使える魔法だったので、もう一度魔物に使ってみるとやはり俺に気付かない。

姿が透明になったり景色に擬態してる訳ではないが、俺の存在を認識出来てない様だった。闇魔法って不思議!


2匹目を倒した後、直ぐにもう1匹にそのまま近づく。今度は『陽炎』を試した。

魔物が一気に間合いを詰めて来て爪で引っ掻く攻撃をしたが、上手く俺に当たらない。

俺は杖を使うが実験的に何度か殴りたいので魔力を少ししか入れてない。

何度か攻撃すると突然魔物が苦しみだした。

パッシブの『猛毒』が入った様だ。なるほど『猛毒』の毒は激痛の毒が付与されるのか…いやいやコレかなり痛がってるんですけど、コレで持続が5分とか鬼の様な効果だなおい。

何か可哀想になったんで『溶岩弾(マグマバレット)』で倒してやった。


3匹の血抜きと解体を行いながら闇魔法の効果について考えていた。

攻撃補助はいつ入るか分からないというギャンブル的要素が強いが、中々倒せない強敵相手に何かしら入ればかなり有利に戦えるだろう。

『隠密』と『陽炎』は使いやすくて便利な魔法だな。

『隠密』はリスク無しで敵に一気に近づく事が出来るのが良いね。敵将相手ならなおさら使い甲斐があると思うよ。

『陽炎』は接近戦の時にいきなりかけた方が良いだろう。相手は急に当てづらくなり、びっくりする事になるだろう。


俺は森からウッドランドに戻った。

そのまま俺は副長の所に行き、闇魔法が使える様になったと相談に行った。隠し通せる物で無しと考えたからだ。


「闇魔法…いやいやあり得ないだろ!」


俺は副長の目の前で『隠密』を掛けた。突然俺が消えた様に居なくなってタイラー副長はキョロキョロしてた。そのまま声を掛けて今闇魔法を使った事を話した。


「突然消えたから驚いたぞ!本当に闇魔法を会得したのか…ラミアの魔力がなぁ…う〜ん…」


「…呪われたんですかね?」


「呪い?…そんな事は聞いた事が無いな。有るとすれば元から闇魔法の資質を持ってたならだが…かなり確率も低い。まあ、理由とすればそこら辺だろうな」


「闇魔法の資質…ですか?」


イキナリ核心を突いてくるとは…流石は軍師だなあ〜。確かにソレですよね……。


「ああ、かなり珍しいのだがそういう者も居るらしい。それが何かの拍子に現れる…一人ウチのカルディナス軍にも居るだろ?アイツがそうだ」


「ウチの…忍者服部君…」


「お前カシムの事をいつもそう呼んでるよな…つか何だそのニンジャって??」


「まあ、忍者はともかくとして…あの人も突然に闇魔法を会得したんですか??」


「ああ、元からアイツは斥候として働いてたのだが、いつぞやアンデッドの討伐の際にレイスを倒したんだ。その時に会得したと言われている」


「レイスを??あんなのをどうやって倒したんですか?」


「お前の持ってる様な遺跡の武器でだよ。アイツのは短い三日月刀だが…アイツの親父の形見らしいぞ」


「へぇ~遺跡の武器ってアンデッドに効くんだ…」


「まあ、そんなトコだ。だから元からお前は闇魔法の資質が有ったのかもな。歪な魔力の件とか遺跡の武器を手に入れたりとか…考えれば変な事が多過ぎるからなぁ〜ハッハッハ!!」


そうですか、そうでしょうよ。どうせ不気味な10歳ですけと、何か?


「まあ、闇魔法を使えるのは戦力になるから良いんじゃないか?お前なら使いこなせるだろうし。隊長には俺から言っておくよ」


「はあ、お願いします」


「貴重な闇魔法の使い手になったんだからもっと胸を張れ」


貴重ねぇ…またそれを理由に厄介事を押し付けられそうな予感しかしないんですけど…。

まあ、このまま仕事が出来るならいいか…何か変な事にならなかっただけ良しとしよう。



そんな荒んだ心の翌日、俺はヘスティアさんと待ち合わせしてそのまま森に向かう。西側の森で薬草を集めて行く。


「ラダル、その薬草がテムルガって言って味は痺れる系統の薬草だよ。効果としては体力の回復だな」


俺はちょっと噛んでみる…おお、確かに…山椒的な奴か!!麻婆が作れるかも!!


「あったあった…コレがチキミルと言う解毒草なんだが、コレを干して粉にすると苦味が出る。少しだけ入れると味に深みが出るんだ」


「へぇ~隠し味で入れるのかあ。なるほど」


「隠し味…中々面白い表現だな。私も今度はその様に言う事にしよう」


ヘスティアさんは薬草を甘味、辛味、塩味、苦味の成分として色々集めて料理の味付けに使い、しかも漢方的な効能まで考えると言うかなりの理論派であった。

森の中で生きる為に医食同源を自然と身に着けたのだろうね。

10種類ほど薬草を収穫してからヘスティアさんの家に向かった。


ヘスティアさんは母親と妹の三人で暮らしているという。

家に着くとヘスティアさんに良く似たお母さんが向かい入れてくれた。


「まあ、可愛い!男の人を連れて来るって言うからどんなゴツいのが来るかと思ったら…私はマルソー、ヘスティアの母です。宜しくね」


そうそう、それが普通の反応だよな。可愛い盛りなんだから。生温い目で見たり、不気味とか言う方が如何かしてるよな!


「始めまして、マルソーさん。俺はラダルと言います。今日はヘスティアさんに色々と料理を教わりにきました。宜しくお願いします」


「ラダルはカルディナス軍の伍長をしてる優秀な魔法兵なんだぞ。こないだの森の魔物の退治でも大活躍したんだ」


「そうなの??凄いわね〜!!そうね…ヘスティアが連れて来るんだから普通の坊やって事は無いわよね…」


「至って普通の10歳ですけど、何か?」


「ハッハッハ!ラダルは冗談が好きだな!」


イヤイヤ、ヘスティアさん…冗談じゃないんですけど!マジで言ってるんですけど!

そんなヘスティアさんを生温い目で見ているマルソーさん…苦労してそうだな。


挨拶もそこそこに早速、キッチンに行って薬草と他の調味料…と言っても塩と蜂蜜とお酒なのだが、用意されていた。俺はリュックの中の魔導鞄から魔物の肉を取り出した。


「ラダル、肉を用意してたのか…一応コチラでも用意してたんだぞ」


「コチラがお願いしたのにこのくらいはさせて下さいよ!ヘスティア師匠!」


「し、師匠…って…」


「これから教えてもらうのですから弟子と師匠ですよ!」


「あらあら可愛いお弟子さんが出来て良かったわね〜」


マルソーさんはニコニコしながら良い事を言う。そうそう可愛いお弟子さんですよね。


「そ、そうか…師匠か…」


「さあ、早速始めましょう師匠!!」


「お、おう…そ、それじゃあ、それを…」


ん?何かヘスティア師匠が変な感じですけど…何か変な事言ったかな??


ヘスティア師匠の教えてくれた料理は四種類で、魔物肉と野菜を使ったスープと魔物肉の薬草焼き、淡水魚を使った揚げ物。

そして最後に教えてくれた料理…コレは…肉と野菜のパエリア…パエリアだよな?コレ?!!

スゲェー!!異世界でパエリアが出るなんて…つか米…インディカ米みたいなのだけどどこで取れるんだコレ??


「ああ、コレは村の下の方の場所で栽培してるぞ。酒に使ってるのを私は料理の使ってるんだ」


そうか!飲まなかったから分からなかったけど隊長達が飲んでた酒は泡盛か!!インディカ米を使うなら恐らくは間違いない。なるほどそれなら度数が多いから隊長が気にいる訳だよね!!


感激した俺はお礼にと魔導鍋を取り出してインディカ米を炊いておく。卵とネギに似た野菜に胡椒に似た薬草、塩を味付けに、魔導コンロとフライパンを取り出してチャーハンを作ってみた。


二人はこの炊くと言う作業を中々やらないらしく、どうやるのかと興味津々であった。俺は水加減に注意すれば出来ると炊飯のやり方を教えた。


「このチャーハンと言うのは美味いな!こんな料理が有るとは…」


「コチラこそ色々教えてもらって…この魚の味付けがホントに絶妙ですよ。漬ける時間で味が変わりそうですね?」


「そうだな。通常は二時間ほど漬けるのだが、衣に味付けする場合は漬ける時間を1時間程にすれば良い具合になる」


「衣に味付けですか?」


「そうだ、タレを作って粉でとろみを付けたのをかけるんだ」


「おお!!餡掛けか!!なるほどなるほど」


「アンカケ…変わった言い回しだな?ラダルの村の方言か?」


「ま、まあそんなもんです…いやぁ色々と勉強になりました」


「うむ、他にも色々有るからまた休みを貰ったら何時でも言うと良いぞ」


「ありがとう御座います!ヘスティア師匠!」


「お、おう…ま、任せておけ」


また、ヘスティア師匠が変な感じになった…一体何なのか?


「全く…この子は仕方が無いわね…」


何かマルソーさんは理由が分かってるのかヘスティア師匠を生温い目で見ている…何でや??

すると、扉が開いたと思ったら俺と変わらないくらいの娘さんが現れた。ヘスティア師匠に似てるからこの娘が妹さんだね。


「お姉ちゃんが男を連れて来るって言うからどんなのかと思ったら子供(ガキ)じゃないのよ!」


いきなり子供(ガキ)と来たか…つかオマエもやろ!!


「アリシア!!失礼だろ!!ラダルに謝れ!!」


「あら、随分と遅いお帰りね…アリシア…」


「か、母さん……ちょ、ちょ痛あああぃぃぃぃ!!!」


笑顔のままなんだけと…マルソーさんが怖いんですけど…。マルソーさんはアリシアの耳を持って笑顔のまま外に連れ出した…。外から聞こえる音はキニシナイヨ…。


「す、すまんな…ガサツな妹でな…気にしないでくれ」


「げ、元気の良さそうな妹さんてすね〜」


「少し活発だな。少しな…」


その後、マルソーさんは何事も無い様に戻って来たが、俺が帰るまでアリシアは帰って来なかった…外にある小屋から凄い泣き声が聞こえたが、マルソーさんもヘスティア師匠も何も言わなかったので俺も知らぬふりをした。


後悔はしていない。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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