第13話 ローレシア侵攻後の後始末

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『オラにもっと星を分けてくれ!!』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


カルディナス領に帰ってからも国境の警備とかをやらされて大変だった。

何でもウチの隊長があの『カルディナスの守護神』と呼ばれている警備隊の隊長をエラく怒らせて国境地帯の警備と後始末を押し付けられたらしい…お陰で3ヶ月もこの砦で過ごす羽目になったよ!!余計な真似を…チッ!

しかも、国境の警備よりもローレシアとの戦闘の後始末の方が大変だった。こういう時に必ず土魔法の使い手が便利使いされるのだ。

しかも如何なってんのか知らんが全部焼き払った跡がある…まあ、腐ると大変だしアンデットになる危険性も有るからね。

後で副長に尋ねると警備隊隊長が広域魔法で焼いたらしい…見せてもらったよ、上級魔導兵の性能とやらを……。

まあ、中にはお金が溶けないで残ってたり、武具と類いが何とか使えそうなのが有ったりでそれだけが救いだったね。

俺達はデカい穴を皆で作ってローレシア軍の亡骸をバンバン放り込む。本当にトラウマになりそうですよ…。


「またこんなのやらされんのな…早く帰りてぇなぁ〜」


アリエスが嘆くと他の連中も騒ぎ出す。あの真面目なジョンソンでさえも嫌な顔をしていた。

そんな彼らを尻目に俺は淡々と業務をこなす。俺は伍長だからね…皆からは「またアイツ死んだ魚みたいな目をしてやってるよ」とか皆から生温い目で言われた。

…解せぬ。


後始末が終わると警備に回されたが、流石にローレシア軍は戻って来なかった。やはりゾード=ラル=ダルムの敗北のショックは隠し切れなかったのだろう。また、難民がそれぞれの都市に流れ着いているから其れの対処もしないとね。しばらくは大人しく国内をまとめる事になるだろう。その後は知らんけど。


そんな俺たちを尻目に、ゴンサレス隊長はゾードの持っていた巨大で太っとい金棒をブンブン振って稽古してる事が多くなった。なんでも愛用していた巨大メイスと重さとバランスが少し違うからだと言っていた。

この金棒だが、どうやら材質はオリハルコンらしい。マジかー!来たよオリハルコン!ファンタジーの王道じゃねーの!!

オリハルコンの特性として魔力を入れると更に硬くなるってのは俺の杖と同じだね。ただし、質量は増えないと言ってた。

その頃、臨時の執務室ではタイラー副長が相変わらず書類の山と格闘していた。御愁傷様です…。


警備と言っても休みは貰えるので休みの日にはコッソリと魔導鞄の中身をチェックしていた。しかしココで俺は重大な失敗をしてる事に気が付いた。店の品を殆ど全部入れてしまったので、かなり広い場所を確保しないと全部置き切れないのだ。

このまま警備の仕事が終わり帰ったとしても、あの四人部屋にはとても全部置けないし、そもそも魔導鞄の件は秘密にしてるのでどうにもならない。

売りに行くとしても魔導鞄の件は秘密にしたいのでおいそれと持って行けない。

しかし、何とかしないと塩漬けのままだし、お金にもならないだけで無く魔導鞄も使えないんだよね、今一杯だからさ。

もう、店舗でも借りて魔導具屋でも始めようかな…魔導鞄も有るから商人として仕入れも楽だし。今ある魔導具は安く売っても仕入れ値がタダだから丸儲けだし、それを元手にまた仕入れれば…。そんな生活も悪くは無さそうだな。まあ、それは後で考えるとして、色々と調べてると面白そうな物も何点か出て来た。

先ずは身体能力強化系の腕輪など。コレはダンジョンなどで出現するアイテムを魔導具職人が真似て造ったモノで魔石をエネルギー源にするものが多い。

次は魔法攻撃系の腕輪や杖、剣や銃など。4属性魔法を持たなくても魔法の撃てる魔導具。魔石のチャージで何発か撃てる。杖は魔導兵が魔力枯渇の際に予備として持ってる事が多い。(魔法兵には高価過ぎて買えない)

次は魔法防御系の鎧や兜や盾など。防具その物の防御力を飛躍的に上げる。魔石のエネルギーが無くなると防御力がガタ落ちするので魔石のチャージが必要。

本来、魔導具職人は4属性魔法を使えない人で、尚且つ金持ち(騎士や貴族)に買わせるのを造るのが目的なので魔石をエネルギーにしたモノが多いようだ。

後は日用品の魔導具が多い。中でも灯りと時計の魔導具は種類豊富である。他には魔導コンロや魔導鍋(鍋自体が熱せられ料理が出来る)や洗濯機(驚きのドラム式や乾燥機能有りなど)や水筒(水魔法の応用で冷たい水やお湯まで出るのもある。中蓋にシャワーヘッドが付くのは野宿に便利)、冷蔵庫、魔導カイロ(暖かいのも冷たいのも有る。調節付も有り)、魔導エアコン(部屋の空気を風、氷、火魔法を手動調節して快適温度に出来る。魔石の燃費凄く悪い)等々…。

後はオートマタ(自動人形)が人型を始めとした、猫型、犬型、鳥型が数体。

後は使い方が分からない物が3分の1程あり、コレは誰かに聞かないと駄目そうだ。多分前世の形とまるで違う物などもあると思うので、分かるとな〜んだって物もあると思われる。(実際、冷蔵庫は大きな瓶の様な形で最初は何か解らなかった)

とにかく物が多いので何とかしなければ…。

勿論、俺が使えそうなのは売らずに取って置くけどね。


3ヶ月後にようやく俺達は駐屯地に帰る事が出来た。この遠征により、4番隊の魔法兵の力量はかなりアップした。アリエスは遂に風と土魔法の合成魔法に成功して『岩旋風(ロックウインド)』を会得した。コレは小さなつむじ風にバレットを乗せるという結構凶悪な魔法だ。やられた敵の重装歩兵が鎧をズタズタに引き裂かれ血ダルマになったのを見たからね。他には無詠唱にたどり着いた者も何人かおり、順調にレベルアップしている。


また、3番隊の新しい隊長に就任したミュゼット=カーチス隊長が遠征時にウチの連中の起動速度の速さを見て俺に教えを乞うて来た。ミュゼット隊長はカーチス家…つまりは1番隊のデュラン副団長の弟さんだった。なるほどね…だから前のアホ隊長を気に食わないと言ってたのか。言われてみると確かにデュラン副団長に似てるわ。

デュラン副団長とは懇意にしてるし、今の3番隊には何のわだかまりも無いので、魔法移動と魔法操作を速く行う事や詠唱の短略化等々を3番隊に直接指導した。ミュゼット隊長は中級魔導兵にもかかわらず、非常に飲み込みが早い人で、教えた傍から起動が速くなっていた。恐らく魔法操作に関しての素質がずば抜けているのだろうね。また、合成魔法についても何時でも指導する事を約束した。ミュゼット隊長を始め何人かはかなり前のめりに聞いてたのでまた教えに来る事になるだろう。それまでに詠唱短縮が出来ていると良いな。


そして、魔導具の件だが…結局はテズール商会のクロイフさんに丸投げする事にした。

俺は自分で使う魔導具10数点とオートマタ全部以外をテズール商会の倉庫に全て置いて来た。使い方が解らないモノも何点か有り、それも俺が勿論引き取った。

クロイフさんは魔導具が売れた場合は俺6:4で良いと言ってくれたが、俺は5:5でお願いしておいた。在庫が直ぐに捌けると思えなかったし、実家の件でかなり良くして頂いたのを母からの手紙で知っていたからである。どうせ丸投げなんだし、仕入れもタダだからそんなに儲からなくても全く問題無い。俺は「ボーナスが入った〜」くらいの感じだからね。

そしてクロイフさんに魔導鞄の件も話したのは、大きな商会であるクロイフさんなら魔導鞄くらいは所有してるだろうし秘密は守ってくれると判断したからだ。聞いたら笑いながら俺のよりずっと多く収納出来るのを複数所有してるって言ってた。そりゃそうだわな……。

俺の魔導鞄くらいなら50白金貨(五千万金貨)くらいだと言ってた…椅子からコケるほど驚いた俺に、コレでも安い方だとか言われたけどね…ぐぬぬ…魔導鞄恐るべし…。


それから2ヶ月経ちヘルサード遠征が成功したと報告が入って来た。ヘルサードはローレシアが王国の隙をついて侵攻し、遠征軍がバラバラになった所を一気に攻め込むつもりだったらしい。しかしローレシアがカルディナス軍の活躍により王国侵攻から撤退した事で王国の遠征軍はカルディナス軍以外はそのまま侵攻して来たので目論見が外れてズタズタに引き裂かれた。

結局ヘルサードは領土の四分の一を失う事となった。


今回の件でカルディナス伯爵閣下は侯爵となった。いわゆる辺境伯から辺境侯となったのである。また、自領も加増される事となり、念願叶って港を含む海側の土地を手に入れた。

そしてこの戦で一番の功労者として祭り上げられたのは勿論我が4番隊隊長のゴンサレス隊長である。王国からは個人で貰える最高の勲章である王国白金十字勲章を頂く事となった。また、カルディナス侯爵閣下からは騎士将へ、そしてタイラー副長は準騎士将を賜る事となった。

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