第37話 街の不穏と使節団
「!?、街の衛兵とはいえ正式な手続き無しでギルドに踏み込むのは困ります。」
「石ロバへの不必要な武器の搬入の疑いで、四丁目のギルドの調査を行う、者共続け~!!」
「部長、部長、街の衛兵が、」
「慌てるな、各職員はバリケードを作れ、奴等はギルドの権利を犯している、街の横暴を許すな!!」
「衛兵長、市民が武装しています。」
「俺達のギルドを守れ!!」
「「ウォォ!!」」
あれは確か‥‥少し前のことだったよな。
ギルドに案内された時に、いやそれ以前から予兆はあった、俺はあの日に思いを馳せる。
B(ブルー)としてそれなりの無人機部隊の隊長だったはずの自分が、I(インディゴ)のクリアランスを与えられ大使に配属されいつのまにかギルドへの旅路へ、そこまでは覚えている。
砲撃の音で目を覚ます。
「ミュータントの襲撃か?」
『ビスマルク-I(インディゴ)様、現在使節団に接近中のミュータントの群れを撃退しました。』
【オグズの街】の縄張りでは武装制限を行うと聞いていたので自分に出来る事はないと男は再び仮眠を取る。
それにしてもミュータントの襲撃が多い、街道(オグズの街が管理する比較的安全なルート)ではあるはずなのだが、上手く間引きが出来てないのだろうか?
着いて見れば活気あふれるオグズの街
しかし少し表通りを離れて路地を見ればストリートチルドレンや何を吸ってるのかわからない連中に、あぶれた傷痍ギルド兵が寄付を求めて空き缶を置いている等と、どうにも良くない雰囲気が漂っていた。
表通りへと戻り街の連絡通路ターミナル、輸送機械から積み荷を下ろす人々を見ながらその積み荷を確認する。
大半は木材や建築材に石材と書かれた木箱でギルドの紋が押されている。
時折工業用のエネルギーパックの字もあるから、建築や製造業も盛んなのかなと街の大通りに向かう。経済が回復すれば大抵の不満は収まる物だ、本気でそうなれば良いがと思いつつ灯りのある広場の方へと進んだ。
「軍人さん、安いよ6-9の肉買うかい?」「これは再生オレンジ買っていかないかい?」「魚介風培養肉のパエリヤあるよ。食ってかないか?」「これ、ポールン製の革靴一番安いヨ。」
活気ある広場の出店ではあるが、急に看板の灯りが消え店が畳まれていく。
何かあったかを見ていると衛兵と機械の騎馬隊が来て、屋台を壊しながら歩いている。違法出店してたんだなと思って通り過ぎようとしたが警官に腕を掴まれた。
「違法にものを買ってないよな?軍人さん。」
そもそも買ってたとしても俺には使節特例が適応されるし、街からの最上級招待状もあるから関係ないが、まあそれはそれとして俺は掴まれた手を剥がして握手に変える。
よそ者が無闇に嫌われるものでは無い、パッと何も持って無いことを示しつつにこやかに対応すると相手はあっけにとられていた。
「ご覧の通りここには来たばかりで何も買ってないですよ衛兵さん。」
そんなことを言うと握手を解いて俺は指定されたギルドの建物に向かう。
「ようこそギルドへ、都市の使節団の方ですね、証明出来る物は、はい確かに直ぐに案内しましょう。」
支援物資を貢ぎ物という形でやり取りして半年ほど、初めての外交可能な外部勢力にどの様に接すれば良いのか解らないと言うのがコンピュータを含めた地下都市の本音だが、こうして直接街に使節団を送れる位には良好な関係を築けていた。
鎖を引きずる音がする。
「よぉギルドのエリートさんよ、けっきょく自分が儲けたいだけなんじゃねぇのか?」
「ちっ衛兵崩れのクレーン労働者共がああああ!!」
躊躇なくナイフで足の肉を削ぎ落す。
「こらこら、彼にはまだ話をしてもらわないといけないからほどほどにしろよ。」
ごちゃごちゃとした地下道には似合わぬ服装、それこそ街の外を巡回してそうなミュータントの皮鎧を着こなす男。
「まさか俺たちゃお話してただけだぜ、なぁ。」
「「そうだそうだ」」
「まさかギルド議員、ソグド・サマルカンド!!」
「ああ、そう言うあんたはくそババ―、アドリア・べネツの派閥だな、なに話す事を話してもらえれば直ぐ楽になれるさ。」
エネルギーダマリへの定住が完了し、街の古代の製造機械が動き出した。
もとは命の危機を前に団結していた街ではあったが、本来口減らしの一方通行の大冒険、野心家やはみ出し者に杭詰め者、地下都市の支援により豊かさを取り戻した今、過剰な力を得た組織が一つ。
ギルド、その欲望がこのオグズの街を揺るがそうとしていた。
『補助コンピューター、予定の確認だ。』
『確認するのです。
前8時(3発光4歯車)にギルド職員との会談
前11時~12時前後、6発光目の時間に儀式に参加
儀式の流れでオグズの街の皇帝が地下都市との謁見を求めるのでそれに従う流れになります。』
『了解だコンピューター、それとある程度街を見て回ったが、流通してる物資の量について違和感を感じた。』
『限られた中の推量なのですが少ないと判断できるのです。』
『そうだなコンピューター、明日の視察に第三クレーン港を組みこんでみる。それとギルドとの会話で揺さぶりも。』
『記録するので安心するのです。』
そこに潜む危うさを肌に感じつつも、ビスマルク-I(インディゴ)は補助端末とともに未知の世界に足を踏み入れた。
転生コンピューター様の内政チート テンユウ @03tu20
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