第43話 妖精さんへのプレゼント
「なあ、君の父親っていうのは、どんな人だったんだ?」
楽器を片付けながら、ルカは私にききました。
「え、私の父、ですか?」
急に質問されて、私はやや戸惑いました。
「私が生まれたときには、もう亡くなっていたと母からきいていますが……」
「名前は?」
「いえ、その……私、あんまり父のことは知らないんです。
でも、多分あまり良くない人だとは思いますよ。神殿の巫女だった母をたぶらかしてお嫁さんにしてしまった人ですから」
そうか、と言ったきり、ルカはしばらく黙って考え込んでいるようでした。
今日はなんだかルカの様子がおかしいですね……。
その後も、一日中ルカはなんだか落ち着かない様子でした。いえ、言うほど様子が変とかそういうことではないのですが、時折私の方をちらっと見ては目をそらしたり、私を見て何事か考えているような様子を見せたり、うーん、一体なんなんでしょう。
嫌な感じではないんですが、何か言いたいことがあるなら言ってほしいです!
◇◇◇
その日の夕方、ルカが台所で小さな器にミルクを
「ルカ、それは?」
「ああ、妖精たちへの贈り物だ」
「ここに妖精さんたちが来るんですか?」
「さあどうだろう。この森には妖精が住んでいるとは言われているがな」
冗談めかしてルカは言いましたが、私は妖精さんたちがやってくるというのは、あまり信じられた話ではないなあと思っていました。
妖精なんてものがみられるのは、ごく限られた土地や場所、だいたいは人間が住むことができない場所です。あ、そうか、確かにこの魔の森は、人間どころか、動物も魔物もいない場所です。もしかしたら、ここになら妖精もいるのかも……?
でも、妖精たちって、本当に本当にほんとーにめったに見ることができないと言われていて、私の周りでも見たことがあるのは、今はおじいさまな神官長さまが、とても若いとき修行してて見たことあるっていってたのくらいです。
「まぁ、今夜は満月、妖精の夜だ。もしかしたら妖精が来るかもしれない。彼らはもっとも古い神々の末裔、礼儀を尽くしておくべきだろう。
ああそうだ、もしよかったら、君の部屋にもどうぞ」
彼はもう一つ、小さな器にミルクを用意してくれました。
「これを君の部屋においておくといい。
もし妖精たちがやってきて、これを飲んだなら、きっと良いことがあるぞ。妖精に会えたら、どんな願い事も叶えてくれるなんていわれているしな」
……とルカが言っていたので、さっそく私は部屋に戻って、窓辺にそのミルクを置きました。こういうのは窓辺に置くという習わしです。
でも、本当にくるのでしょうか……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます