第10話 夜に消えたルカ ①


その晩のことです。

夜の祈りをささげた後、布団で眠っていた私は、ふと目を覚ましました。

2階にある客間のベッドから起き上がると、暗闇の中、私はそーっとそっーっと下に下ります。


珍しく、一階の彼の部屋のドアは開いたままでした。

そっと見えたベッドには、誰もいません。私は、念のため、ルカの名前を少し大きな声で呼びました。


返す声はありません。やっぱりいない。


「外にでちゃったんですかね?」


こんな夜に、外にでるなんて危ないことです。探しに行きましょうか。


私は二階に戻って、自分のショールを持ち出すと、それを羽織って家をでました。

さて、ルカはどこへいったのかな。


「ルカ」


玄関から庭に向かって、少し大きな声で呼びかけてみます。

応える声は誰もありません。


私は森へ向かって歩き出しました。欠けた月が、空から光を投げかけています。

しかし、それも森の中へと足を踏み入れれば、生い茂る木々にさえぎられ、辺りは真っ暗になってしまいました。


暗闇に、私は小さな明かりの魔法を使おうと思って、しかし一瞬思いなおして、それを止めました。


この夜であれば、多分、彼も魔法の明かりを使っているはず。

であれば、この暗さでその光は目立つことでしょう。

私が明かりをつけずにあるけば、もしかしたらその光が見つかるかもしれない。


私は家から泉の方へ向かって続く細いみちを歩き出しました。

そして、ずっと遠くに、ちかちかと小さな光が瞬いているのを見つけました。

案の定、多分、そこにルカはいるのでしょう。


私は明かりをつけてそちらに向かおうと思いました、がやっぱり光はともしませんでした。

なんでかって、多分、彼が私を避けて森の中へと出ていったような気がしていたからです。


光をともしたら、彼からも私が見えるでしょう。そうしたら、彼が逃げてしまうような気がしたのです。


◇◇◇


光を目当てに歩いていくうち、だんだんそれは大きくなり、ようやっと着いたのは、開けた場所でした。

ここだけ木々はなく、小さな野原のようになっています。ダンスの一つでもできそうな広さです。


ルカは、そこでぼんやりと古びた切り株に腰掛けていました。


「ルカ、何をしていらっしゃるんですか?」


「ルチルじゃないか」


ルカはそういって、少し微笑みました。


「別に、何もしちゃいない。気分転換みたいなもんさ」


「こんな夜更けに気分転換がしたくなるんですか?」


言いながら、私も傍に腰掛けました。


「ここに朝までいようと思っただけなんだ」


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