第9話 私、狼さんをぺちゃんこにっ……!
◇◇◇
「……うう……ってルカ!?大丈夫ですか!?」
気が付けばルカが私の下敷きになっていました。
私が木から落っこちた瞬間に、下で受け止めてくれたみたいです。や、優しい……!
「それはな……こちらのセリフだ……怪我はないか?」
私を抱きしめたまま、ルカはききました。
「おかげさまで」
彼はふう、とほっとしたように息を吐きました。
「あっ、あの、胸が……その、苦しいです」
私が控えめにいいました。
私の胸を締め付けるように、ルカの腕がですね、その、私の……そのおっぱいといいますかですね……。
「えっ、ふあっ!?」
私をぎゅっと抱き留めていた腕をはなし、ルカは照れたようにぱっと私から離れました。
「ルカ、助けていただき、ありがとうございました……それであの」
「なんだ?」
「耳が」
耳ぴょこしてます。
「あっ」
彼は耳に触れ、少し慌てたように深呼吸をしました。
「えーと、心が乱れちゃいました?」
「あのな、これは俺のせいではなく君のせいだからな」
恨めしそうに私を見ると、もう一度深呼吸をするルカ。しかし、それはおさまらずに、今度は尻尾と手足が。
その手もみるみるうちに、黒い肉球がついた犬の手……もとい、狼の手に変わっていきます。
見れば、靴を履いた彼の足も、同じく狼足に変じていたのでした。
「あら、私の浄化の効果が切れてしまったのでしょうか?」
「そうか、もう夜になるものな」
と、彼は暗くなり始めた空を見上げ、狼の足になってしまったことによって脱げた靴を拾い上げると、やや気落ちした声で言いました。
「もう暮れ方、これから夜がやってきますから、呪詛が強くなったのでしょう。
でも、どうせそのうち解けてしまうことはわかっていたのですし、そう心配することはありません。浄化の効果が切れたのなら、何度でも浄化し直せばいいのです」
私はそう言って目を閉じると、浄化の祝詞を唱えました。
しゃらんら~
とルカの頭のてっぺんからつま先まで光が包んだかと思うと、狼耳は消え、手足も普通の人間に戻っていきます。
「これは本当に朝まで効果が持つのだろうか?」
独り言のように言ってから、
「あ、いや、君を疑っているわけじゃないんだ、万一……」
「大丈夫ですよ。呪いの力が増す夜になる前に一度、これからは毎日魔法をかければよいかと思います」
「しかし、万一夜にまた、狼になってしまったら、俺は君に危害を加えるのではないか?」
私は、彼が最初にであった日、大きな大きな狼になって私に襲い掛かってきたことを思い出しました。
でも、私の聖なる力は、そんなに弱いものじゃないですし、きっと大丈夫ですよ。
「そんな心配そうな顔をしないでください」
「……そうだな」
と彼は少し微笑みました。
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