覚醒したサテュガン

第56話

 紫色の魔法陣が発生後、一瞬だけその魔法陣が光る。


 魔法陣からは死神のようなものが俺達全員の背後にそれぞれ一つずつ姿を現す。


 体全てが黒いぼろ布のローブで覆われており、頭が骸骨。


 見たことない魔法だが、その死神が俺の両肩に手を置く。


 俺は振り返る。


 死神が招く死を俺は拒もうとする。


 だが首から下が動かない。


 意識だけで俺はその死神と目が合う。


 ヤバイ、意識が飲み込まれる――――。


 だが、死神が数秒後、消える。


 俺の体が動けるようになる。


 紫色の魔法陣が消える。


 俺は仲間の安否を声に出して確認する。


「みんな!」


 アリサが一番最初によろよろと立ち上がる。

 

 その次にムセンが、吐血し、大剣に体を預けながら立ち上がる。


 シエンが何とか起き上がろうとする。


 最後に花蓮がなんともなさそうに立ち上がる。


「ポールとカルナは――――――」


 俺は名前を読んだ人物をそれぞれ見やる。


 だが、その二人が倒れたまま起き上がることはなかった。


 ※ ※ ※


 いたずらが成功した猿のように飛び跳ねて喜ぶサテュガン。


 奴は大量の魔力を消費したのか、追撃せずひとしきり飛び跳ねた後、両手で顔を隠しながら醜悪な笑い声をあげる。


 「野郎————」ムセンが怒りに任せて大剣を振るおうとするも、吐血し片膝をつく。


 「アリサ、なんだあの魔法は!」


 俺はパニックになり、ムセンよりも自分の身に起こったことの正体を必死に聴く。


 「一度だけ、文献で読んだことがある。あれは、闇魔法よ」アリサの傷は浅い。


 シエンがなんとか立ち上がり、頷く。


 「闇魔法?」俺が倒れたポールたち三人に駆け寄る。


 俺があわててポーションをシエンのカバンから取り出す。


 シエンが俺のポーションを持った手にそっと手を置く。

 

 俺は、その仕草の意味を拒む。


 アリサが俺の左肩にそっと手を置いて首を左右に振る。


 「無駄よ」


 「ふざけんな!まだ死んだと決まったわけじゃ!」


 「私には二人が死んだことすらわからないほど特殊な魔法なの。少なくともポーションでは無理、たとえエリクサーでも……教会で集中治療を受けないと治らないわ」


 「そんな……」


 あっという間の出来事に俺は返す言葉をなくす。


 絶望の中、シエンがサテュガンをみながら叫ぶ。


 「まだ、戦いは終わっていない!」


 シエンの発した男らしい叫び声に俺はびりびりと鳥肌を立たせる。


 「花蓮……リョウキ!絶望するな!これが戦いだ!」


 シエンらしからぬ、荒々しい口調に俺は鼓舞される。


 「ムセンは下がって!私があいつを倒す。神官の私だからこそ使える魔法がある」


 アリサがその言葉に珍しく動揺を見せる。


 「あんた、まさか―――――!」


 力強く笑いかけるシエンに俺は言葉を失う。


 


 


 




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