第36話 その1
「な、なんで!?」シエンは動揺する。
俺は万事休すかと思う。
回復魔法をかけてもらっているが、気分がすこぶる悪い。
俺の顔はたぶんだが、真っ青になっているだろう。
「多分階層が混ざって魔力が入り乱れているから使えないんだろう」
俺はそういった直後に口から血を吐く。
「くっ……最初に出会ったときにバジリスクの蛇の部分から毒液が発射されて瓦礫でできたリョウキの腹の傷にかかってしまったわ……私としたことが……シエンなんとかならないの?」
「この毒は私には解毒は無理ですよ!とりあえず回復魔法をかけ続けていますが……」
アリサは腰についている小さなカバンからそれ以上に小さい緑色の巻物を取り出してその巻物を広げる。
すると巻物に書かれた魔法陣から魔法薬の瓶が出る。
「これを一滴残らずにそいつに飲ませなさない……割ったら許さないわよ」
シエンはその紫色の液体を少しずつゆっくり俺に飲ませる。
俺の顔に生気がみなぎり、顔色がよくなる。
心なしか力がわく。
「全状態異常をなくし、全ステータス付与をつける高級薬のエリクサー……神官の私でも初めて見ました」
「効果はシエンから聴いたでしょ、とりあえず逃げなさい!」
俺は立ち上がって周りを確認する。
「逃げるといっても瓦礫で道がふさがっているんだよ」
シエンがおどおどする。
俺は叫ぶ。
「誰か俺に武器をくれ!」
シエンがあたりを見回して剣を引き抜く。
西洋のシンプルな両手剣を俺は渡される。
深呼吸を俺は一つ。
俺はアリサが広げた防護壁を抜けて、一歩を踏み出した。
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