第218話 聖戦 ④


 シャイニングナイツやその予備隊は戦っていた。


圧倒的物量の魔物を前に一歩も引かず、勇気を振り絞って戦っていた。


だが、女の身で戦い続ける事は至難の業であった。


オークの棍棒の一撃を喰らい、倒れてしまった彼女もまた、例外ではない。


「くっ!?」


 彼女の上に跨ったオークは、いやらしい笑みを湛え、彼女の顔を舐め、秘部にゴツゴツとした指を入れられ、弄られている。


「汚らわしい!?」


抵抗虚しく、されるがままの状態では、気力を振り絞っても力が出なかった。


顔を背け、視線を彷徨わせたが、他の味方もまた同じ様な有様であった。


「………………。」


 言葉を失い、失意の淵に落ちそうな状況になった時、不意に何かが烈迫の勢いで通り過ぎていった。


その後直ぐ、オークの頭が地面にゴトリと落ちて転がった。


「な、何が!?」


上体を起こし、辺りに視線を向けると、そこには。


「いけいけーーーー!!」


「やってやるぜ!」


「もう大丈夫だぞ!」


男達だった。


義勇軍の戦士達だった。


「逃げたのではなかったのか?」


首を傾げつつ、その光景を見届けていた。


 義勇軍の戦士達が、モンスター相手に勇敢に戦い、仲間を危機から救い、女性達を優しく介抱していた。


彼女もまた、助けられた者の一人だ。


彼女はこの光景を見て、ふと思った。


まるで700年前の義勇軍を見ているみたいだ、と。


 義勇軍は魔物相手に一歩も引かず、勇猛果敢に戦い、次々とモンスターを討伐していった。


彼女の瞳には、熱い何かがあり、男達を見ていたのだった。



  ジャズ視点――――



 いよいよ大詰めだ、義勇軍の加勢により状況は一変した。


あれだけ居たモンスターの数も、今ではすっかり少なくなっている。


 まあ、俺の精神コマンド「大激怒」を使用したから、ほぼ一撃で魔物を倒せると思うのだがな。


ここで義勇軍を活躍させておくのも悪く無い。今までが残念な扱いだったからな。


俺の予想通り上手く事が運んでいるようだ、何よりだな。


おっと、俺も活躍しとかないと、後で何を言われるか。


「フンッ!!」


目に着いた大物モンスターを一撃で倒す。こりゃ楽だ。


「助かりました、銀影さん。」


「なんの、拙者はただ、武器を振るうのみ。」


見るとシャイニングナイツのマーテルさんだった。


マーテルさんがこちらを熱い視線で見ていたので、俺はそそくさと次に行く。


「では、拙者はこれで、御免!」


この場を離れ、ボスモンスターの元へ行く。


聖剣サクシードは持った、後はボストロールの所まで行って戦うのみ。


相手はカオス、油断など出来ん。だが、元はボストロールだ。


闘ってみて気付いたが、動きが遅かったような気がする。


力だけなら最強レベルだろうが、素早さはこちらが上。


そこに勝機がありそうだな。


 こうしてる間も召喚モンスターを次々と倒す、徐々に魔物の数が減っていき、カオスの居場所を把握できるところまで来た。


「見つけた! カオス!」


「むっ!? 来たか!」


だがその間を遮るように最後の一体のグレーターデーモンが立ちはだかる。


しかしそこへ、頼もしい味方がやって来た。


「お待たせしました! ジャズさ………………銀影さん!」


「おお、フィラ殿! 貴殿も無事であったか!」


「はい! 共に参りましょう! カオスを!」


「うむ、良かろう! 共に参ろうぞ!」


よし! フィラと合流出来た。


早速で悪いが、フィラにはグレーターデーモンの相手をしてもらおう。


「私も居る事、忘れないでよね!」


フィラの隣には、槍使いの女性が居た。きっとこの人がリアって女性だろう。


「うむ、頼めるか?」


「もち! 任せてよ!」


「行きますよリア! 二人がかりでまずは目の前のデーモンを倒します!」


「分かった! 銀影さんはどうするの?」


言われて俺は、人差し指を前方に向けた。


「拙者は混沌の王、カオスを相手取るでござる! あとは任せた!」


「おっけー! 派手にいこうよ!」


後ろには負傷した女性達、もう後が無い。ここで決めるしかない。


サクシードを構え、前傾姿勢で突っ込み、カオスの元までノンストップで駆ける。


さあ、ここからだ。勝負だ! カオス!


「参る!!!」


こちらは聖剣を持っている、今度こそ攻撃が通用する筈だ。


出し惜しみ無だ! しょっぱなから全力全開でいく!


「フルパワーコンタクト! 必中! 熱血! 不屈! 気合!」


これで必殺の一撃を叩き込める。まずはこれ。


「パワースラッシュ!!!」


一気に間合いを詰め、カオスの軸足に向け剣を振り抜く。


ズバッと切れる、問題無い。行ける。と言うか軸足を切断した。


こんなに威力が高いのか? 聖剣って。流石だ。


「ギャアアアアアア、お、おのれえ! よくもお!」


カオスの表情は苦悶に満ちていた、よし。ダメージがある。


こっちの攻撃は通用する、このまま戦い続ける。


カオスの間合いに入ったのか、今度はカオスの手に持つ棍棒が猛威を振るった。


 俺目掛けて振るわれた棍棒は、しかし回避したので事なきを得る。が、地面にクレーターが出来ている。


「相変わらず凄まじい威力でござるな!」


だが、当たらなければどうという事は無い。


お次はこいつだ! クナイの連続投擲、必中の効果中だ、躱せまい!


案の定、クナイは全弾命中。ダメージを与えていく。


「く、お、おのれえーーーー!!!」


「聖剣の効果範囲内だからでござる。なので普通の武器でも楽にダメージが入るのでござろう。」


「ぬかせ!!」


よしよし、頭に血が上っている。正常な判断が出来ていない様子だな。


まあ、元々ボストロールな訳だし。しょうがないよな。そのへんは。


「銀影さん! こちらは終わりました!」


「え? もう? 早いでござるな、二人共。」


 声のした方を見ると、とっくにグレーターデーモンは倒されて、砂の塊に変わっていた。


凄いな二人共、やるなあ。この短時間で倒しきるとは。


「拙者も負けてられないでござる!!」


気合を入れる、聖剣がキラリと光る、必殺の一撃、クリティカルの兆候だ。


「ちいっ………………。」


ボストロールのカオスは舌打ちし、あろう事か後ろを向き、逃げ出しに掛かった。


「では………………。」


師匠、今なら解る。俺が成すべき事、やらなければならない事。


きっと、この世界に来た事の意味は、あったんだと、そう思う。


「参る!!!!!」









 

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