第173話 仲間探し ③
王都アリシア 冒険者ギルド――――
アゲイン公国の騎士クリスは受付嬢から有力な情報を入手し、リースの下へ戻った。
「リース様、賢者ルカイン殿の居場所が判明しました。どうやらバルビロン要塞なる所におられるとか。」
「バルビロン要塞? 聞いた事が無いな。詳しく知っていそうな者に訊いてみよう。」
リースが提案すると、ゴートが更に意見を言う。
「でしたらリース様、ここに居る冒険者達に我等に協力してくれそうな人物を訊いてみては如何でしょうか。」
オールドナイトのゴートは、ここに居る冒険者は精々Dランクか、良くてCランクであろうと看破した。
「ゴートがそう言うなら、尋ねてみるよ。だが、ここにはゴートのお眼鏡に叶う猛者が居ないんだろう?」
「はい、ですがここで手ぶらというのも、何故だか勿体ない気が致します。ここはベテラン冒険者に訊いてみて、それとなくこちらに引き込めるか試してみましょう。」
「うむ、解った。では、誰に聞こうか………。」
リースがギルド内を見渡すと、奥のテーブルに座る冒険者が目に留まった。
「あの者ならばどうだろうか?」
リースがゴートに尋ね、ゴートもうむと頷く。
「私が訊いて参りましょうか?」
「いや、クリスは先程の情報を精査してくれ。他の冒険者ならば、そのバルビロン要塞という所の場所を知っているだろう。」
「解りました、では、早速。」
クリスはすぐさまリース達の下を離れ、再び要塞についての情報を得る為、冒険者に声を掛けている。
「さて、あっちはクリスに任せれば良いな。我等はあの手練れ風の冒険者に訊いてみよう。」
「畏まりました、リース様。では、参りましょう。」
そうして、リースとゴートの二人は、奥に居る冒険者の元まで行き、声を掛けた。
「すまない、少し尋ねたいのだが。」
声を掛けられた冒険者の男は、リース達の姿を見て、鼻で息をし、小ばかにしたような態度を示した。
だが、ここで
「聞こえていたらでいいんだが、我々は強い猛者を探している。あんたは見た所強そうだが、ランクはCかい?」
強そうという言葉を聞き、男は気分を良くして会話に参加した。
「ああ、俺はこのギルドでそこそこ腕の立つ冒険者だ。で、何が聞きたい?」
さて、ここでゴートは心の中で落胆した。ギルドランクCという事は、一人前に毛が生えたようなモノだからだ。
Bランクより上が、所謂手練れと呼ばれる猛者である。Cランクでは精々、オークあたりと互角といったところだろう。
「我等は人を探していてな、おぬし、中々の実力をお持ちの様だが、其方よりも更に上の人物に心当たりはないかな?」
「おいおい、俺より上だって? あんた等、そりゃタイミングが悪いぜ。この冒険者ギルド王都支部では、手練れと呼ばれる連中はみんなバルビロン要塞の方へ行っちまったからな。」
「なんと、そうであったか。では、この街にはもう強き者はお主以外おらんという事か?」
相手を持ち上げつつ、情報を得る為に、ゴートは言葉を選びながら更に情報を得ようと言う。
「まあ待ちな、俺より強い奴なら知っている。この街に居るぜ。」
「それは誠であるか!? 是非教えて欲しいのだが。」
「ああ、いいぜ。まあ、あんた等の話に乗ってくるかは解らんがな。」
ここでリースがずいっと前に出て、男の話を聞く。
「何処に居る、誰なのですか?」
「おう、名前はジュリアナ。今は娼婦として働いている。色町に行けば会えるぜ。」
「色町? 何故その様な場所で?」
「さあな、俺は知らねえが、金に困ってるんじゃないのか?」
この情報を聞き、リース達は望みを賭けてジュリアナに会いに行く事に決めた。
「情報ありがとう、では、我等はこれで失礼する。」
こうして、リース達はまた一か所に集まり、持ち寄った情報を突き詰め相談する。
「クリス、そっちの情報はどうだ?」
「はい、リース様。バルビロン要塞の場所はここより北東に位置しているそうです。馬で一日の距離だとか。そこに賢者ルカイン殿もおられるそうです。」
「ゴートはどう思う?」
「はい、自分が判断出来るのは、そのバルビロン要塞に多くの猛者が集結している事でしょうな。あと、この街の色町にジュリアナと言う手練れの者が居るという事ですな。」
「うん、まずはその、ジュリアナ嬢に会いに行こうと思うが、二人はどうだ?」
「賛成です、今は一人でも多くの仲間になってくれそうな人物と接触すべきでしょうな。」
「私も賛成です。噂ではバルビロン要塞は危険な場所らしいので、準備は整えた方が賢明かと。」
三人で丸くなって相談し、答えが出たところでリースは号令をかける。
「よーし、では色町へ赴き、ジュリアナ嬢と接触し仲間に出来れば仲間にしよう。その後、馬で要塞だ。」
「「 はは! 」」
ゴートとクリスは、小声ながらも気合の入った返事をして、リースの判断に従い、外へと出るのだった。
ジャズ――――
ドニからの情報を頼りに、色町へ向けて移動を開始した。
だが、ここでお腹のむしがぐーっと鳴った。隣を歩く姐御がこちらを向き、クスクスと笑みを浮かべた。
「ジャズ、どこかで何か食べていきましょうか?」
「はい、露店でいいですか?」
「いいわよ、あ、私肉が食べれないから、お魚か肉以外のお店がいいわね。」
ふーむ、姐御はお肉が駄目か、おや? あそこにあるのは団子屋かな?
「姐御、丁度あそこに団子屋がありますよ、行ってみましょう。」
「団子かぁ、いいわね。行きましょう。」
姉御と二人で団子屋へ向かい、露店のオヤジさんに話しかける。
「すいません、団子を下さい。」
「はいよ、一本鉄貨8枚だ。幾つ買うかね?」
ここで姐御が「私は2本でいいわ。」と言ったので、俺は3本食べようと思い、5本注文した。
「はいよ、団子5本ね、銅貨4枚になるよ。」
俺はオヤジさんにお金を支払い、団子を受け取る。
「まいど!」
元気のいいオヤジさんだな、団子も美味そうだ。
早速姐御に2本渡して、俺も1本手に持ち、そのままぱくつく。
「うーん、醤油が利いていて実に美味い。団子はみたらしか醤油だな。」
「ほんとねぇ~、これはお腹が満たされるわね。」
あっという間に団子を食べ終わり、目的の娼館を目指して歩みを進める。
腹も満たされた事だし、少し時間を喰ったが、まだ日も高い。今から行っても十分に間に合うと思う。
色町に到着した、ここは賑やかな感じだ。所々ピンク色の看板が目立つ。
「言っとくけどジャズ、ここへは遊びに来た訳じゃないのよ。解ってる?」
「も、勿論解っていますよ。やだなあ~姐御。ジュリアナさんに会いに来ただけですってば。」
「………その割には、鼻の下を伸ばしているわよ。」
だって、しょうがないじゃん。客待ちしている女の子が時折こちらを向いてウインクしてくるんだもん。
だから俺は、手を振り、挨拶をするのだ。
しかし、それを見ていた姐御は、頭の筋がピキッとなっている様子で、俺の腕を引っ張る。
「さっさと行くわよ! ジャズ!」
「はいはい、おっと、この店ですよ姐御。」
どうやら目的の店に到着したようだ。早速中へ入ろうとしたその時、以外にも見知った人物に出会った。
「おや? 貴方方は確か、アゲイン公国のリース殿たちでは………。」
「そういう貴方は、ジャズ殿ではありませんか。おやおや、こんな所で会うとは、奇遇ですな。」
お互いに女性を連れているので、どこか気まずい雰囲気になり、会話がたどたどしくなっていた。
「誤解のない様に申し上げますが、我等はある人物に会う為にここまで来ました。」
「ほー、それは奇遇ですね、実は自分達もここへはある人に会いに来たのですよ。」
「「 ジュリアナという人なんですがね。 」」
「「「 え?! 」」」
リースさん達とハモった瞬間、目をパチクリしつつお互い何故だか気まずくなった。
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