第172話 仲間探し ②
王都アリシア 冒険者ギルド――――
リース達アゲイン公国の騎士団は、王都アリシアの冒険者ギルドへと来ていた。
「流石王都だね、とても大きな街だ。一日じゃ全て見切れない様だ。」
リースは感嘆の声を漏らした。その声に応えた騎士ゴートはうんうんと頷くと、アゲイン公国との比較をしだす。
「誠に、我がアゲインとは比較にもなりませぬな。」
更にゴートの娘、クリスも呟く。
「しかし、我がアゲイン公国は自然豊かな土地柄ですので、都会は何故だかごちゃごちゃしていて私は好きではありません。」
「はっはっは、クリスは郷土愛が強いな、まあ確かに、我がアゲインの方がゆっくりとできますからな。」
娘の言葉に、父親のゴートは相槌を入れ、周りを見渡す。
「リース様、ここに居ますでしょうか? 我等が探し求める人材が。」
「居てくれなければ困るよ、我等はその為にここへ来たのだから。目的を果たさなければアテナ王国が滅ぶかもしれない、事は急ぎ、そして的確に人材を確保しなければならない。」
「はい、解っております。我等の行動
「その通りだ、一刻も早く探して見つけねば、そして、仲間にしなければ我等の戦力の充実を図る為にも、ここは是非、何としても上手く事を運びたい。」
「「 はい、承知しております。 」」
リース達は、決意を持って目的を果たす為、目の前に佇む冒険者ギルドへと足を運んだ。
「事前情報では、賢者ルカイン殿はこの国に居るという情報を入手している。まずはルカイン殿と接触しなければ。」
「はい、大賢者ウォレス様のお弟子様ならば、間違いなく戦力になりましょう。」
「リース様、それともう一つ、この街で優秀な人材を仲間に引き入れなくてはなりませんので、その情報も得ねばなりません。」
「ああ、そうだね。アリシアの英雄に賢者ルカイン、そしてこの国に居るシャイニングナイツ。まだ見ぬ凄腕の戦士。仲間にしたい人材は多い。」
リース達は、ギルドの扉を開け、中へと入り周りを見渡す。
王都の冒険者達は、入口から入って来たリース等を見やると、直ぐにまた元の姿勢に戻る。
オールドナイトのゴートからしたら、この場に居る冒険者たちは自分達が求める人材のレベルには届いていないようだった。
「ふーむ、居ませんな。」
「もっとよく探しましょう、父上。」
「いや、残念だが、見ただけで解る。ここに居る者達は、我等が求める強き猛者は居ないようだ。」
この言葉を発したゴート自身、気落ちしてリースの方を見やったが、リースもまた、肩を落とした。
「中々居ないものだね、優秀な人材というのも。」
クリスはそんな二人の言葉を聞き、一人カウンターへと向かう。
受付嬢は、訪れた女性騎士に対応する為、にっこりと笑みを浮かべて声を掛ける。
「いらっしゃいませ、ようこそ王都冒険者ギルドへ。本日は如何致しましたか?」
定型文を言い、受付嬢は相手の恰好を見て、騎士だという事は理解したが、どうにもみすぼらしい装備だった為、女性騎士を軽く見ていた。
そして、クリスは一言、ここへ来た目的を伝える。
「失礼、人を探している。この国に賢者ルカイン殿が居ると聞いて来たのだが、何処におられるか?」
この突然の質問に、受付嬢は直ぐには対応できなかった。なぜなら………。
「はあ、賢者ルカイン様ですか?」
「そうだ、何処におられるか?」
「え~っと、今は確か、バルビロン要塞ではなかったかと………。」
ジャズ――――
盗賊ギルドへとやって来た俺達は、早速ドニと接触し仲間になって貰おうと思っていた………のだが。
「済まねえジャズ、俺は力になれねえ。」
あっさりと断られた。うーん、ここまで来て手ぶらでは行動できんな。
「なあドニ、その別件ってのは何時ごろ終わるんだ?」
「ああ、ちょいとばかし厄介な案件でな、直ぐにって訳にはいかねえ。」
「そうか。」
「まあ、そう気を落とすな。その代わりと言っちゃあ何だが、俺が最も信頼できるシーフを紹介してやるからよ。」
「そうか、それは有難い。」
他でもない、ドニが信頼しているシーフならば、きっと凄腕の盗賊だろう。
今回の仕事には、どうしてもシーフかスカウトが必要だったんだ。
おそらくバルビロン要塞の内部には、トラップの他に宝箱もある筈。
鍵のかかった扉や宝箱の解錠をやってもらわなければならない。その為にも優秀なシーフが必要だ。
俺の受けた依頼は、奪われた魔法の杖を取り戻す事だ。
モンスターがそのマジックアイテムを使うとは思えんが、どこかに仕舞っているという事も考えられる。
兎に角、要塞内をくまなく探さなくてはならない事は確定だ。
そこで、シーフの出番っという事だな。
俺は忍者なので、シーフというよりは寧ろアサシンに近い。本職では無い、戦士との中間ぐらいだ。
「ところでよ、そっちのお嬢さんは一体誰だい? 紹介してくれよ。」
「ああ、シャイニングナイツの予備隊で、名前は………えーっと、姐御だ。」
俺が紹介した事で、姐御が一歩前へ出て、挨拶をした。
「前に一度神殿で会ったわね、私は姐御と呼ばれているんだけど、一応名前はあるのよ。だけど皆が姐御って呼ぶから、それが板に付いて来て、そのままなし崩し的にこの名で通っているの。よろしく。」
「ふーん、そうかい。よろしくな、俺はドニだ。普段は情報屋としてここに居るが、必要なら手を貸す事もある。だが今は先客が居てな、直ぐには無理だ。」
よし、一通り自己紹介は済んだ。そういやあサスライガー伯爵の件で、王都にある女神神殿で二人は顔を会わせていたっけな。
「よし、ドニ、早速で悪いが、お前以外に誰を紹介してくれるんだ?」
「まあ、そう慌てなさんな。ジャズ達がどこで何をするのかによって、紹介出来るかどうか判断させて貰うぜ。」
「と、言うと?」
「まあ、こっちが紹介してやると言っておいて何だが、お前さん方は何を依頼されたんだい? 場合によっちゃあこの話は無しになるかもだ。」
ふーむ、ドニも慎重になっている様子だな。ここは正直に話した方がいいな。
「ああ、ある女エルフからの依頼で、魔法の杖を奪われたから取り戻して欲しい。というものだ。」
ここまでは、開示してもいい情報だと思う、まあ、ドニ相手に隠し事は出来そうにないが。
「ドニ、紹介してくれるのは有難いが、俺が受けた依頼はちょっとばかり危険な場所なんだ。それでも紹介してくれるかい?」
「ああ、勿論だ。まあ、任せておけ。そいつは俺より優秀なシーフだからな。」
「ほーう、そいつは頼もしいな。」
「ああ、罠解除に索敵、扉の解錠に危機感知。およそシーフに必要なスキルを習得している。」
ふーむ、いいな。頼りがいがありそうだ。
「実はなドニ、俺達は急いでいるんだ。出来れば早い方がいい。頼めるか?」
「おう、任せな。そいつの名はジュリアナ。女盗賊だ。俺より腕がいい。」
「ジュリアナか、で、何処に居るんだ?」
「色町だ。」
「何?」
………今、何て言った?
「娼館だよ娼館。そいつは娼婦として働いてるんだよ。」
不意に、隣を見ると、姐御が「娼婦」とか「娼館」とかの言葉が飛び交っているのに対し、姐御の顔の頬を赤く染めている様子が窺える。
俯き加減で話を聞いている姐御は、どこか指をいじりながら聞いている。
「何だってまたそんな所で働いているんだ?」
「さあな、俺が知る訳ねえだろうが。直接本人に聞いてみたらどうだ?」
そんな失礼な事、聞ける訳ねえだろうが。特に今回は姐御という女性が一党に加わっているんだぞ。
「聞けるかよ!?」
「はっはっは、まあ、そういう店で働くってのは、なにがしかの理由があるってもんだ。詮索するのはあまりおすすめしないぜ。」
ふむ、盗賊ってのは過去とか詮索されるのを嫌っているかもしれない。そこは聞かないでおこう。
「ねえ、ジャズ。行くの? 娼婦に会いに。」
「ジュリアナさんね、勿論行くよ。姐御はギルドで待ってて貰ってもいいですよ。」
「………私も行くわ、男一人にさせたら、嫌な予感がするし。」
おっと、俺は信用が無いな。姐御の目が光っている。怖い怖い。
「じゃあな、ドニ、世話になった。早速娼館へ行ってみるよ。」
「おう、あまり力になれずにすまんな。まあ、精々遊んで来いよ。」
姉御が横に居るのに、遊べる訳ねえだろうが。
「遊ばねえって!!!」
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