第154話 レベルアップと牛丼と

混沌の王カオスの眷属であるウォーロックの討伐に成功したジャズたち、しかし、それを知る者は少なかった。一応の平穏を取り戻し、いつもの日常が帰って来た日々に、ジャズは休日を満喫する。

だがここで、冒険者として一皮むける機会を考えるのであった。

********************************************


 クラッチの町へ戻って来てからすぐ、ガーネットと別れて駐屯地の兵舎へと戻る。


冒険者ギルドへの報告は済ませたし、少ないが報酬も貰った。やはり銅貨2枚は少ないが、俺達が戦った殺人ウサギやウォーロックの事は信じて貰えないようだ。


仕方が無いので、成り行きを見守る事にした。体を休めないとならないので、兵舎のベッドでぐっすりと仮眠を取る。


「うう~~、冷えるな~。」


もうすっかり冬の季節だ、肌寒くなってきた。ベッドには毛布が掛けられていたので、遠慮なく使う。


サキ隊長たちは俺が休暇なので、小隊任務はお休みらしい。ニールは訓練と称して草原でモンスター狩りに行っている様だ。


なんだか自分だけお休みなのも気が引けるなあ。かと言ってニールに付き合うのも嫌だし。


ここは、素直にお休みを満喫しよう。


 仮眠を取った後は腹が減ったので、町へと繰り出し、女将さんの店へと向かう。


「もうすっかり冬だな。」


町の景色は空の色と相まって、少し閑散としている。人も疎らだ。皆冬支度を終えて、これから冬ごもりの予定になるんだろうな。


町のみんなは冬の間、どうやって過ごすのかな? 女将さんに聞いてみるか。


そうこうしている内に、女将さんの店へ到着した。引き戸を開け、のれんを潜り中へと入る。


「いらっしゃいませ~。」


女将さんの元気な声で出迎えられた。お客さんも少ないが常連さんは居るみたいだ。


「女将さん、こんにちは。寒いねえ~。」


「まったくだよ、冬は水仕事が辛いねえ、誰か雇おうと思ってんだけど、冬はみんな籠るからねえ。」


「女将さんの店は冬の間はやってるの?」


「もちろん、冬も営業するよ。今日はどうするんだい?」


お腹が空いたのは事実だ、何か体が温まる物がいいな。


「とりあえず、熱いお茶ちょうだい。」


「はいよ。」


しばらくして、お茶は出てきた。うーん、熱そうだ。少しづつ啜りながら飲む。


ほう、と一息。心も体も温まる。いいお茶だ。さて、何を注文しようかな。


肉が食いたい。ご飯も、となれば、ここはやはりアレしかない。


「女将さん、牛丼ってある?」


「牛丼かい? もちろんあるよ。それにするかい?」


「うん、牛丼ちょうだい。」


「はいよ、牛丼一丁~~。」


よしよし、牛丼は旨いからなあ、肉とご飯の両方を楽しめる。おまけに安い。


料理が出来上がるまで、そういやあ経験点が溜ってたっけなと思い出し、ここらでレベルアップでもしとくかと思った。


さーて、経験点が5200点ある、隠しクラスは一つレベルを上げるのに2000点必要になる。


レベルは二つ上げられそうだぞ、よしよし、4000点使ってレベル34になった。


HPも102ポイントまで上昇した。かなり打たれ強くなったな。うむうむ。


さて、お次はスキルだな、スキルポイントが135ポイントある。何を習得しようかな。


超級スキルをどれか一つを取ってみるか。100ポイント使うが、どれも強力なスキルだ。


うーむ、「ダッシュ」なんてどうだろう? こいつは移動力と移動速度が上昇する超級スキルだ。


忍者なんだから、素早く動けた方がいいよな、よし! 「ダッシュ」を習得しよう。


よしよし、「ダッシュ」を習得したぞ。これで戦闘速度は飛躍的に上昇したはずだ。


残りのポイントは35ポイントだな。ノーマルスキルを取るか、取っておくか、悩むな。


うーむ、冒険者や兵士は体が資本だから、ここはやはり「病気耐性」のスキルを取るか。


「病気耐性」は50%の確率で疫病なんかの病気を無効化するスキルだ。上級スキルの「病気完全耐性」は100%無効化するが、上級スキルの為、ポイントが高い。


今習得出来るのは、ノーマルスキルぐらいだ。まあ、なにも無いよりはマシだろう。


よし、「病気耐性」を習得した、これで取り敢えずはいいか。50%というのも中々侮れないからな。


うん、こんなもんかな。確認してみよう。どれどれ。



 ジャズ LV34 HP102

 職業 忍者

 クラス 超忍


 筋力 300  体力 290  敏捷 300

 器用 270  魔力 120  幸運 250


 ユニークスキル

 ・メニューコマンド

 ・精神コマンド 10/10 (必中 不屈 熱血 気合 魂 大激怒)

 ・エース


 スキル

 ・ストレングスLV5 (フルパワーコンタクト)

 ・タフネスLV5

 ・スピードLV5

 ・投擲

 ・剣術LV5 (ブレイジングロード)

 ・身体能力極強化

 ・全属性耐性LV5

 ・見切り

 ・インファイトLV5

 ・指揮官

 ・闘争心LV5

 ・限界突破

 ・気力限界突破

 ・コンボ+1

 ・ダッシュ

 ・病気耐性


 経験点1200点  ショップポイント7400  スキルポイント25


 武器熟練度

 小剣280  剣350  槍35



 うーむ、よしよし、大分いい感じになってきたな、いや、まだまだだな。


しかし、レベル34ともなると、いよいよ見れるステータスになってきたじゃないか。


いやいや、慢心は良くない。気を引き締めていかねば。足元を掬われるかもしれんからな。


「はいよ、牛丼お待ち。」


「お、来た来た。う~んうまそうないい匂いだ。」


まずは頭に乗ってる紅ショウガを一口、うん、辛いがうまい。カリカリと咀嚼する。


さて、お次は肉だ、箸でつまんで口に運ぶ。うん、旨い。出汁が絡まっていて最高だ。


嚙めば噛むほど肉汁が溢れてくる。ご飯ともよく合う。


パクパクと牛丼を口の中にかき込む。モグモグと咀嚼し、味を堪能する。


「うーん、旨い。やっぱあったかい飯はいいね。」


「あんまり慌てて食べると咳込むよ、ゆっくり味わいな。」


うん、旨い。やっぱり女将さんの料理は旨いなあ。寒い冬でもお世話になりそうだ。


牛丼は、あっという間に食べてしまった。完食して「ご馳走様」をする。


「女将さん、うまかったよ、また来るね。」


「あいよ、冬の間も営業してるから、いつでも食べに来な。」


俺は代金を支払い、お茶を飲み干し店を出る。


「まいどあり~。」


女将さんの声を背に受け、さて、これからどうしようかなと思案していると、若い冒険者パーティーとすれ違った。


「やっぱりさあ、一人前と呼ばれるDランクになるべきだよ。」


「いやいや、まだ俺等Eランクに上がったばっかだし、無理はやめようよ。」


「でもさ、私達だってもうそれなりに実績を積んでるしさ、一気にランクアップするのも悪くないんじゃない? 試験受けようよ。」


ふーむ、どうやらギルドランクの昇格話をしているようだな。


ギルドランクの昇格試験か、そういやあ俺ってまだ駆け出しのFランクだったよな。


ランクが上がれば、一つ上のランクの依頼を受けられるようになるか。


ガーネットはランク上がったかな? 試験があるらしいが、さて、どんな試験だろうか。


少し興味はある、ギルドランクは上げておいた方がいいのは解るが、俺の本職は兵士だし、うーん。


冒険者は副業って感じなんだよね、まあ、貧乏暇なしって言うし。稼がないとならん。


今のままでもいいとは思うが、経験の為に昇格試験を受けてみるのもいいかもな。


まあ、めんどくさそうだったら断るけど、話を聞くだけでもいいか。


「よっしゃ、冒険者ギルドへ行ってみるか。」


クラッチの町中を、ゆっくりと歩きながらギルドへ向けて進みだす。


寒空の下、ポケットに手を突っ込んで冬の町を歩き出した。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る