第154話 レベルアップと牛丼と
混沌の王カオスの眷属であるウォーロックの討伐に成功したジャズたち、しかし、それを知る者は少なかった。一応の平穏を取り戻し、いつもの日常が帰って来た日々に、ジャズは休日を満喫する。
だがここで、冒険者として一皮むける機会を考えるのであった。
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クラッチの町へ戻って来てからすぐ、ガーネットと別れて駐屯地の兵舎へと戻る。
冒険者ギルドへの報告は済ませたし、少ないが報酬も貰った。やはり銅貨2枚は少ないが、俺達が戦った殺人ウサギやウォーロックの事は信じて貰えないようだ。
仕方が無いので、成り行きを見守る事にした。体を休めないとならないので、兵舎のベッドでぐっすりと仮眠を取る。
「うう~~、冷えるな~。」
もうすっかり冬の季節だ、肌寒くなってきた。ベッドには毛布が掛けられていたので、遠慮なく使う。
サキ隊長たちは俺が休暇なので、小隊任務はお休みらしい。ニールは訓練と称して草原でモンスター狩りに行っている様だ。
なんだか自分だけお休みなのも気が引けるなあ。かと言ってニールに付き合うのも嫌だし。
ここは、素直にお休みを満喫しよう。
仮眠を取った後は腹が減ったので、町へと繰り出し、女将さんの店へと向かう。
「もうすっかり冬だな。」
町の景色は空の色と相まって、少し閑散としている。人も疎らだ。皆冬支度を終えて、これから冬ごもりの予定になるんだろうな。
町のみんなは冬の間、どうやって過ごすのかな? 女将さんに聞いてみるか。
そうこうしている内に、女将さんの店へ到着した。引き戸を開け、のれんを潜り中へと入る。
「いらっしゃいませ~。」
女将さんの元気な声で出迎えられた。お客さんも少ないが常連さんは居るみたいだ。
「女将さん、こんにちは。寒いねえ~。」
「まったくだよ、冬は水仕事が辛いねえ、誰か雇おうと思ってんだけど、冬はみんな籠るからねえ。」
「女将さんの店は冬の間はやってるの?」
「もちろん、冬も営業するよ。今日はどうするんだい?」
お腹が空いたのは事実だ、何か体が温まる物がいいな。
「とりあえず、熱いお茶ちょうだい。」
「はいよ。」
しばらくして、お茶は出てきた。うーん、熱そうだ。少しづつ啜りながら飲む。
ほう、と一息。心も体も温まる。いいお茶だ。さて、何を注文しようかな。
肉が食いたい。ご飯も、となれば、ここはやはりアレしかない。
「女将さん、牛丼ってある?」
「牛丼かい? もちろんあるよ。それにするかい?」
「うん、牛丼ちょうだい。」
「はいよ、牛丼一丁~~。」
よしよし、牛丼は旨いからなあ、肉とご飯の両方を楽しめる。おまけに安い。
料理が出来上がるまで、そういやあ経験点が溜ってたっけなと思い出し、ここらでレベルアップでもしとくかと思った。
さーて、経験点が5200点ある、隠しクラスは一つレベルを上げるのに2000点必要になる。
レベルは二つ上げられそうだぞ、よしよし、4000点使ってレベル34になった。
HPも102ポイントまで上昇した。かなり打たれ強くなったな。うむうむ。
さて、お次はスキルだな、スキルポイントが135ポイントある。何を習得しようかな。
超級スキルをどれか一つを取ってみるか。100ポイント使うが、どれも強力なスキルだ。
うーむ、「ダッシュ」なんてどうだろう? こいつは移動力と移動速度が上昇する超級スキルだ。
忍者なんだから、素早く動けた方がいいよな、よし! 「ダッシュ」を習得しよう。
よしよし、「ダッシュ」を習得したぞ。これで戦闘速度は飛躍的に上昇したはずだ。
残りのポイントは35ポイントだな。ノーマルスキルを取るか、取っておくか、悩むな。
うーむ、冒険者や兵士は体が資本だから、ここはやはり「病気耐性」のスキルを取るか。
「病気耐性」は50%の確率で疫病なんかの病気を無効化するスキルだ。上級スキルの「病気完全耐性」は100%無効化するが、上級スキルの為、ポイントが高い。
今習得出来るのは、ノーマルスキルぐらいだ。まあ、なにも無いよりはマシだろう。
よし、「病気耐性」を習得した、これで取り敢えずはいいか。50%というのも中々侮れないからな。
うん、こんなもんかな。確認してみよう。どれどれ。
ジャズ LV34 HP102
職業 忍者
クラス 超忍
筋力 300 体力 290 敏捷 300
器用 270 魔力 120 幸運 250
ユニークスキル
・メニューコマンド
・精神コマンド 10/10 (必中 不屈 熱血 気合 魂 大激怒)
・エース
スキル
・ストレングスLV5 (フルパワーコンタクト)
・タフネスLV5
・スピードLV5
・投擲
・剣術LV5 (ブレイジングロード)
・身体能力極強化
・全属性耐性LV5
・見切り
・インファイトLV5
・指揮官
・闘争心LV5
・限界突破
・気力限界突破
・コンボ+1
・ダッシュ
・病気耐性
経験点1200点 ショップポイント7400 スキルポイント25
武器熟練度
小剣280 剣350 槍35
うーむ、よしよし、大分いい感じになってきたな、いや、まだまだだな。
しかし、レベル34ともなると、いよいよ見れるステータスになってきたじゃないか。
いやいや、慢心は良くない。気を引き締めていかねば。足元を掬われるかもしれんからな。
「はいよ、牛丼お待ち。」
「お、来た来た。う~んうまそうないい匂いだ。」
まずは頭に乗ってる紅ショウガを一口、うん、辛いがうまい。カリカリと咀嚼する。
さて、お次は肉だ、箸でつまんで口に運ぶ。うん、旨い。出汁が絡まっていて最高だ。
嚙めば噛むほど肉汁が溢れてくる。ご飯ともよく合う。
パクパクと牛丼を口の中にかき込む。モグモグと咀嚼し、味を堪能する。
「うーん、旨い。やっぱあったかい飯はいいね。」
「あんまり慌てて食べると咳込むよ、ゆっくり味わいな。」
うん、旨い。やっぱり女将さんの料理は旨いなあ。寒い冬でもお世話になりそうだ。
牛丼は、あっという間に食べてしまった。完食して「ご馳走様」をする。
「女将さん、うまかったよ、また来るね。」
「あいよ、冬の間も営業してるから、いつでも食べに来な。」
俺は代金を支払い、お茶を飲み干し店を出る。
「まいどあり~。」
女将さんの声を背に受け、さて、これからどうしようかなと思案していると、若い冒険者パーティーとすれ違った。
「やっぱりさあ、一人前と呼ばれるDランクになるべきだよ。」
「いやいや、まだ俺等Eランクに上がったばっかだし、無理はやめようよ。」
「でもさ、私達だってもうそれなりに実績を積んでるしさ、一気にランクアップするのも悪くないんじゃない? 試験受けようよ。」
ふーむ、どうやらギルドランクの昇格話をしているようだな。
ギルドランクの昇格試験か、そういやあ俺ってまだ駆け出しのFランクだったよな。
ランクが上がれば、一つ上のランクの依頼を受けられるようになるか。
ガーネットはランク上がったかな? 試験があるらしいが、さて、どんな試験だろうか。
少し興味はある、ギルドランクは上げておいた方がいいのは解るが、俺の本職は兵士だし、うーん。
冒険者は副業って感じなんだよね、まあ、貧乏暇なしって言うし。稼がないとならん。
今のままでもいいとは思うが、経験の為に昇格試験を受けてみるのもいいかもな。
まあ、めんどくさそうだったら断るけど、話を聞くだけでもいいか。
「よっしゃ、冒険者ギルドへ行ってみるか。」
クラッチの町中を、ゆっくりと歩きながらギルドへ向けて進みだす。
寒空の下、ポケットに手を突っ込んで冬の町を歩き出した。
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