第149話 魔獣討伐隊 ④


 次の日


早朝に準備し、俺達一党は仮設基地を出立した。まずは山道を登り、魔獣が居ると思われる手掛かりになりそうな痕跡を探す。


途中、ガーネットがアドンに質問していた。


「ねえアドンさん、その、何と言うか、大丈夫なんですか?」


「ん? 何がだね?」


ガーネットはアドンの恰好を指さし、どこか不安げに言っていた。


「その、何も武具を装備しなくてもいいんですか?」


この質問に、アドンは信じられないと言った様子で答える。


「な!? 何を言ッとるんじゃ! ここに正装しとるじゃないか! ちゃんと服を着ておるではないか!」


いや、どっ見てもブーメランパンツ一丁のただのビルダーにしか見えんのだが。


堪らず俺が質問する。


「おいアドン、せめて武器は装備しないのか? 流石に無手じゃ戦闘に支障が出ると思うのだが。」


さらにガーネットが畳みかける。


「その手に持った鉄アレイで殴られたら、流石に痛そうですけどね。」


「な!? 何を言っとるんじゃ!! 鍛錬道具を武器に使うなど! 言語道断じゃ! まったく、これだから最近の若いモンときたら………ぶつぶつ。」


まあ、そんなこんなで道を進んでいたら、モンスターの集団に出くわした。


「おっと、モンスターとのエンカウントだ。ホブゴブリン1,ゴブリン6、いずれも武装している。」


「ほーう、ホブゴブリンに率いられた集団じゃな、若いの、どう出る?」


ボム爺さんが俺に指示を仰いできた、俺がこの一党の頭目リーダーと思われている様だ。


まあ、いいんだが。ふーむ、そうだな。


「俺が前衛、ボム爺さんはガーネットの護衛、ガーネットは弓でゴブリン狙い、アドンは………」


俺がアドンに指示を出そうとした矢先、アドンはモンスターの集団の前に躍り出て、何かのポージングをしだした。


「むうううううんんん!!!!」


これでもかと言わんばかりに、筋肉をアピールしている。


おいおい、そんなんでこの場が納まるなら、誰も苦労をしないんだがな。


「ギギギ!」


「ギギャー!」


「ゴブ、ゴブゥゥ!!」


ホブゴブリンの合図とともに、ゴブリンたちは一斉にアドンに襲い掛かり、袋叩きにしていた。


「フンッ! 効かぬわ! わしの筋肉をその目に焼き付けるのじゃ!」


アドンは更にポージングを次々と繰り出し、ゴブリンにアピールしている。だが。


「「「「 ギャー! 」」」


ゴブリンの攻撃はより一層激しさを増し、石斧や棍棒でアドンを叩く。


「い、いた、いたた、な、何をするんじゃあああああああああああああ!!!!」


アドンは手に持った鉄アレイを思いっ切りぶん回して、ゴブリン共を全てぶっ飛ばした。


おい、鍛錬道具は武器にしちゃいかんのじゃなかったのかよ?


思いっ切り鉄アレイ武器にしちゃってるじゃん。


そして、モンスターは辺り一面屍の山へと変わっていた。


「やるなあアドン、まさか一人でモンスターを倒すとは、流石全身筋肉の塊の事はあると思うよ。」


筋肉が豊富についているという事は、それだけ筋力や体力が高いとう事なのだろう。


「なぜじゃ? なぜわしの筋肉を見て心を入れ替えないんじゃ? まったく、これだからモンスターというのは………ぶつぶつ。」


アドンが何か言っているが無視して、状況確認する。


「みんな無事か?」


「大丈夫よ、そっちは?」


「問題無い、ここまでモンスターが来なかったしのう。」


うむ、どうやら皆無事みたいだな、しかし、こんな山道の、しかもまだ明るいうちからゴブリンとは、山頂の方で何かあったのかな?


と、ここでボム爺さんが、倒されたモンスターを調べてこんな事を口にした。


「ふーむ、おかしいのう? こいつらはホブゴブリンに率いられた集団じゃ、おそらくどこかの洞窟あたりに棲み付いておったと思うのじゃが、さて、こんな所で遭遇するのは何故かいのう?」


「そりゃ、棲み付いていた場所に、何かのトラブルが起こったんじゃ………。」


ガーネットが返事をすると、更にボム爺さんは疑問を呈した。


「トラブルってなんじゃ?」


「うーん、普通に考えるに、ホブゴブリンよりも強力なモンスターに住処を乗っ取られた、とか?」


「と、言う事はじゃ、もしかして魔獣が近くに居る、と言う事に繋がる可能性がある。かのう?」


ふーむ、ボム爺さんの言う事は、案外的を射ているのかもしれんな。


「山頂付近にまで行ってみるか?」


俺が提案すると、皆は了解した。さて、ここからは慎重に行動しなくては、どこから魔獣が現れるか解らん。


 その後、山頂付近にまで足を延ばしたが、途中にあった洞窟をスルーしてきたので、何の問題も無く辿り着いた。


「うーん、いい景色だな。」


「それに空気がうまい。」


「ねえ、お昼にしましょうよ。」


「賛成~。」


こうして、俺達は登山よろしく山を登り、山頂付近で昼飯を食べて、休憩したのち、下山した。


こりゃハイキングしただけだな、どっからどう見ても。


「魔獣、居なかったね。」


「途中にあった洞窟が怪しいから、そこに寄ってみようか?」


「そうね、このままじゃ山に登っただけだもんね。」


 そして、件の洞窟にやって来た俺達は、その入り口で目撃する。


 魔獣が、洞窟に入っていくところを。


「間違いないな、あれは多分魔獣だ。警戒態勢、各自、準備。」


俺達のあいだに緊張が走る。小声で指示をとばし、戦闘準備をする。


さてと、ここからいよいよ魔獣討伐クエストか。気合を入れないとな。


慎重に辺りを警戒しつつ、洞窟へと入って行くのだった。


さて、鬼が出るか蛇が出るか。どちらにしても、あまりいい感じではなさそうだな。






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