第23話 鑑定結果

 東北のとある県で、当たると評判だった占いとカフェの店が閉店した。

 噂によれば霊視鑑定の占い師でもあった女性店主がどうやら体調を酷く崩されたらしい。


 カフェが閉店する間際、おそらく最期に占いの鑑定をされたであろう客は解体業を営む男性の方だった。

 ある物件を処理中、従業員の怪我や不幸が立て続けに起こり、自身も心身の不調に見舞われ、様々な寺社仏閣でお祓いを受けるも状況はさほど変わらず、家族も悩みに悩んだ挙げ句、妻に伴われて鑑定に訪れたという。


 その妻の知り合いの話によれば、ご主人の不調はすこぶる酷く、なりふり構っていられない状況だったという。


 解体現場から出た廃材を一時的に保管する仮置き場に、とある邸宅の庭にあった古い小さな石の社が運びこまれた日の夜。

ご主人はその石の社に首を突っ込み「温けえ、温けえ」と、にやけながらよだれを垂らして呟いている姿を妻に発見され、その場を離れるのを嫌がるご主人を家族総出で家へ引き戻したのだという。

その一件から体格の良かったご主人はみるみる痩せ細り、急に年老いて病人の姿の様に変貌していったといわれている。


 カフェには何度も占いに通っている妻が夫を連れて鑑定に訪れた際、懇意にしているはずの女性店主にひきつった顔でよそよそしく対応され、その占いほうも渋々と始めたらしかった。

 そして別室に妻だけが呼び出されて鑑定結果を告げられたという。


「ご主人の先が見えない。暗闇しか見えてこない。変な事言うけどごめんなさいね…ご主人はもうご主人じゃないかもしれない。何体もの…30体ぐらいかな…別の者が入り込んでいる。中には人じゃない者もいる…私の手には負えません。今までいろんな人を視てきたけれどこんなのは初めて。…どこか大きなお寺さんか神社へ行かれてください。」


 ご主人が最期に解体した物件は異様な一軒の廃墟だったといわれている。

その邸宅の家主はいつの頃からか敷地内に自作で小さな鳥居や御社の他、石仏や石碑までもを無数に建てて、自らを神主だと勝手に自称して触れ回っていたと噂されている。そのため、その行為に耐えきれない一家は離散。

家主が邸宅の中で半ばミイラ化した状態の孤独死で発見されて以降、その家は誰も住まない廃墟と化して管理されないまま荒れ果てて放棄されていた。


 朽ち果てた邸宅の庭や敷地内一杯に無造作に建立された自作の神社や石仏群。

そこに何が祀られていたのかは家主以外、誰もなにも解っていない。

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