第41話 真実に辿り着く

ヨツバを適当な嘘で誤魔化すことは出来ず、このままだとずっと気まずいまま一緒に行動することになりそうなので、僕は話せる限りで本当の事を話すことにした。


「ギクシャクしたままは困るって言っても、状況が変わらないのに関係を戻すのは難しいと思うから、話せる限りで本当の事を話すよ」

このままだとヨツバが普段通りに接してくれようとしてくれたとしても、どこかで綻びが出て、それが取り返しのつかないことになる気がする。

下手に騙すよりも、話せる事は話して、話せない事は話せないと正直に言おう。


「教えてくれるの?」


「話せることだけね。今度は嘘はつかないから」


「ということは、やっぱり今までのは嘘だったんだね」


「全部が嘘ではないけどね。まず初めに言っておくけど、これからの話で説明が足りていないところがあると思うんだよ。多分ヨツバが1番知りたいと思っていることも。…………。」

『話さないのではなくて、話せない』ということを言おうとしたら言葉が出なくなった。

これは言ったらいけないことのようだ。


「どうしたの?」

ヨツバに不思議そうに聞かれる


「いや、なんでもないよ。話さなかった事は、聞かれても教えるつもりがない事だから、これ以上は聞かないで欲しい」


「…うん。わかった」

仕方なくといった様子で了承をもらう


「本当の事を話すって言っても、誤魔化すのをやめるってだけで、ほとんどもう話したんだよね。だからヨツバに気持ちの整理をして欲しいだけで、多分新しい情報は得られないからそのつもりで聞いてね」


「うん」

ヨツバは頷く


「鈴原さんと冴木さんはヨツバも見ていた通り、僕が殺したよ。死体は僕が持ってる。スキルを奪うために殺したって言ったけど、あれはヨツバの言う通り嘘だよ。クラスメイトを殺すとスキルを奪う事は出来るけど、奪ったスキルは自分のスキルと交換しないと使えない。だから僕にとって何もメリットはない」


「やっぱり嘘だったんだね」

ヨツバは全然驚きもしない。


「うん。それで、僕がクラスメイトを殺しているのはさっきも言った通り、ゲームのクエストみたいに思っているからだよ。この世界ってゲームみたいだけど、ゲームと違って次の街に行ったからって敵が強くなったりはしないよね?何のために連れてこられたのかもわからないし、正直目的がないんだよ。このままだとリアルなだけのクソゲーだよ。だからクラスメイトを殺すのはちょうどいい目的だと思ったんだよ」


「それは見ていてなんとなくわかるよ」


「話せる事はこれだけだよ。全部話した」


「え?」

ヨツバは驚く


「先に言ったよね?新しい情報は無いよって。多分ヨツバが知りたいと思っているのは、なんで僕がクラスメイトを殺してもいいと思っているのかと、殺すかどうかをどう決めているかだよね?」

話してみて、やっぱり今までのは話をまとめただけのようになってしまった。

これはわかっていたことだ。

騙そうと嘘をついていたことを、嘘だったと白状したくらいにしか違いはない。


「そうね。それを教えてくれれば納得できると思うわ」


「でもその2つを教るつもりはないんだよ。これは絶対だよ。死んでも話すつもりはないから諦めて欲しい。いや、僕を殺せば理由がわかるかもね」

教えないのではなく教えることが出来ないのだけど、結果としては同じことだ。

僕は死ぬまで話すことはないけど、僕を殺せば僕のスキルを奪って地球と行き来することが出来る様になると思う。そしたら僕が何をしていたのかわかるだろう。


「……教える気がないことはわかったわ。だからもう聞かないようにする。でもこれだけ教えて。なんで教えてくれないの?私が信用出来ないから?どんなことだったとしても、他の人に話したりするつもりはないよ」


「なんで教えることが出来ないのかも言うつもりはないよ。ただ、それはヨツバを信用してないからじゃない」


「……そう。教えてくれてありがとう。全然知りたいことは教えてもらってない気がするけどね。明日の朝まで時間をもらってもいいかな?付いていくつもりはあるけど、普段通りに接することが出来るか、気持ちの整理をつけることが出来るか考えさせて」


「わかった」


この日は依頼を受けるのをやめて別れる。


そして翌日、ヨツバの泊まっている宿屋で返事を聞こうとしたけど、ヨツバが言った事に僕は焦る事になる。


「昨日の話をよく考えたんだけど、もしかして死んだら元の世界に帰れるの?」

僕は内心ギクっとする


神の言っていたことが脳裏をよぎる。

僕は話していない。でもそのつもりがなくてもヒントを出していたのかも知れない。

神は僕が話したら敵になると言っていた。敵になったらどうなるのかはわからないけど、敵に回すべきでは無いことはわかる。

これはアウトなのだろうか、それともセーフ?

グレーであることは間違い無いだろう。


「違うよ。なんでそんな風に思ったの?」

僕は否定する。ヨツバが確信してしまったらアウトになる気がする。まずはそう結論付けた理由を聞く。


「クオンが意味もなくクラスのみんなを殺すとは思えなかったから、なんでかなって思ってただけだよ。強い人と戦いたいとかなら、クラスメイトにこだわる必要はないし、鈴原さん達を殺す必要はなかったから。それにクオンは日本に帰れるでしょ?だから向こうで死んだ人に会ったのかなって……」

正解すぎて困る。でも確証がある訳ではなく、憶測を言っているだけのようだ。

これならまだセーフな気がする。


「確かに僕は日本に帰れるから、戻ることが出来た人がいれば会うことが出来たかも知れないね。でもそんなことはないよ。ヨツバは忘れてるのかも知れないけど、鈴原さん達の死体は僕のストレージに入ってるんだよ。田中君だって死体が消えてたら騒ぎになってたはずだよ」


「そっか……。そうだよね」

ヨツバは僕の説明に納得したようだ。

何故だか知らないけど、死体が残ってて良かった。


「そんな夢物語じゃなくて、ヨツバは僕と一緒に行動するかどうかを考える為に時間が欲しいって言ったんでしょ?僕はヨツバの気持ちを尊重するつもりだよ。どうするの?」

何かのきっかけでヨツバが話を戻さないように、僕は考える時間を与えず、選択を迫る。


「そうだったら良いなって願望が入ってたからそんな風に考えちゃったみたい。変なこと言ってごめんね。それで昨日の返事だよね。もちろん付いていくよ。1日ちゃんと考えて、クオンが自分の為だけにみんなを殺そうとしているとは思えなかった。だから教えてくれなくても信じる事にしたの。気持ちの整理は出来たと思う。だから、完全にではないけど、普段通りに接することは出来ると思う」


「そっか。面と向かってそんなこと言われるとなんだか恥ずかしいね。改めてよろしく」


「うん、よろしくね。でもクオンがみんなを殺すのを認めたわけじゃないから。どんな理由か知らないけど、やっぱりみんなを殺すのは間違ってると思うから、それは私が止めるからね」


「ヨツバのやりたいようにすればいいよ。昨日までの気まずい空気がなくなるならそれでいいから。僕は元々それを聞いた上でついて来ていいって言ったんだからね」


ヨツバが止めるくらいの方がゲームとしては面白い

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