第31話 2つ目の街
やっと隣の街に着いた。
既に夜なのですぐに宿を探す。
安くはないけど、悪くはない宿を見つけたので部屋を借りる。もちろん1人部屋だ。
街に着いたので、宿に泊まるのはヨツバだけで僕は地球の自室へと帰って寝る。
親に心配をかけない為に、顔を見せる程度には帰ってきていたけど、久しぶりに自分の部屋でゆっくり過ごすのはやっぱり落ち着くな。
翌日、ヨツバが泊まっている部屋に行く。
「遅かったけどどうしたの?」
ヨツバに聞かれる。何時に行くとは決めてなかったけど、以前の街で集合していた時間に比べると大分遅いのは確かだ。朝というよりも昼に近い。
「ごめん、自分の部屋が快適すぎて寝過ぎたよ」
ずっと狭くて硬いテントで寝ていたせいか、目覚ましで起きないくらいに熟睡していた
「何かあったのかなって心配だったけどよかった。私も久しぶりにちゃんと寝れた気がするから気持ちはわかるよ」
「朝食はもう食べたよね?」
「うん、朝食付きだったからね。待ってたけど来ないから先に食べたよ」
「だよね。もうすぐ昼だし朝食はなしでいっか。とりあえず今日は宿を探したほうがいいよね?ここの宿は少し高いから」
「そうだね」
僕達は宿を探す。最低限安心して泊まれるところで、出来るだけ安いところを探す。
「悪くなさそうだしここにしようかな」
ヨツバは宿を決めたようだ。
「いいんじゃない?もっと安い宿は空いてなかったからね」
「それじゃあ部屋を確保してくるね」
ヨツバが宿の店主と話終わるのを待つ。
「お待たせ。前払いで10日借りる事で少し安くしてもらったわ」
値引き交渉していたようだ。しっかりしている。
僕なら言われたまま払ってるな。
「良かったね」
宿代はヨツバが自分で全部払うと言っていた。別に少しくらい出しても良かったけど、断られた。
少なくともお金があるうちは自分で払うらしい。
「荷物だけ部屋に置いてくるから少し待ってて」
少ししてヨツバが戻ってきたので、次は冒険者ギルドに行く。
今日は依頼を受けるには遅いので、どんな依頼があるか見に行くだけだ。
後は、この街の近くにもクラスメイトが転移させられた可能性が高いので、もしかしたらギルドにいないかなぁ……と淡い期待をしているだけである。
「あんまり変わらないね」
ヨツバに言う
低ランク向けの依頼は大体前のギルドと同じだった。
高ランクの方は結構違いがあるけど、ランクが低いのでギルドの規約的に受けられないし、そもそも受けたところで達成出来なさそうだ。
「明日からどうしようかな。またウルフを狩る?それとももう少し難しい依頼にする?」
正直、ウルフを倒してもほとんどレベルが上がらなくなってきた。経験値自体は貰えるので数をこなせば上がるわけだけど、探す労力を考えるとあまり効率が良くない。
肉も大分ストレージに溜まっているので、メリットも少ない。
「今まではニーナちゃんと3人で依頼受けてたじゃない?とりあえず明日はウルフ討伐の依頼を受けて、2人でも余裕があるのを確認してからもう少し難しい依頼を受けるのがいいんじゃないかな?」
ヨツバは慎重にいきたいようだ。
「それじゃあそうしようか。明日そのまま行けるように依頼だけ受けておくよ」
依頼を受けて、明日は今日と同じく部屋に呼びに行くとヨツバに伝えて解散する。
僕は自室には戻らずに、ギルドに併設されている酒場でご飯を食べる。
もちろんご飯を食べるのが目的ではない。お腹が減っただけなら家に帰った方が美味しいご飯が食べれる。
ギルドに居ればクラスメイトが出入りした時に会えるかなと思ったからだ。後は情報を集めるためでもある。
変わった事が起きていれば、それにクラスメイトが関係している可能性がある。
知り合いがいるわけでもなく、知らない冒険者に声を掛けれる程僕はフランクな性格はしていないので、ご飯を食べながら聞き耳を立てているわけである。
結構粘ったけど、クラスメイトに会うことは出来ず、それらしい情報を得ることも出来なかった。
僕は諦めて自室に帰る。
翌日は遅刻することなく、ヨツバが泊まっている部屋に行く。
依頼は昨日のうちに受けてあるので、ヨツバと合流したらそのまま街の外に向かう。
結果として2人でもウルフ退治は楽勝だった。
2人でもというか、ウルフに囲まれて死にそうになったあの日からレベルも上がっており、武器も木刀からちゃんとした剣になっているので1人でも問題ない。
報酬もほとんど変わらない。2人で分けているので1人頭で考えると増えているだけだ。
「やっぱりウルフは楽勝だったね」
「そうだね。負けるとは思ってなかったけど、思っていたよりも簡単だったね」
「明日はどの依頼にしようか。僕はこのキラーベアー討伐がいいと思うんだけどどうかな?森の奥の方に行くから危険は増すけど、今の僕達なら問題なく倒せると思うんだよね。それに森の奥に行けばこっちのボアの依頼も並行して出来ると思うから結構報酬もいいと思うんだよ」
キラーベアーは熊の魔物で、ボアは猪の魔物である。
キラーベアー……名前を見ただけでも経験値が高そうだ。
「ボアはいいけど、キラーベアーはちょっと怖いかな。まだこっちのジャイアントアントのほうがいいな」
「え……」
ヨツバの提案に驚く。ジャイアントアントってその名の通りデカイ蟻だ。気持ち悪くはないのだろうか……
「そんなに驚くほど熊と戦いたいの?昔漫画で熊と戦って修行するみたいなのを見たけど、そんな気分なの?」
見当違いな事を言われた
「いや、そこじゃなくてヨツバがジャイアントアントの方が良いって言ったことに驚いたんだよ。デカイ蟻だよ。気持ち悪いよね?」
「気持ち悪いけど、熊よりは危険じゃないでしょ?」
気持ち悪いようで良かった。カワイイとか言ったらどうしようかと思ったよ。今後が不安になる。
キラーベアーもジャイアントアントも1人でも倒せると僕は思っているので、キラーベアーを見つけたら僕が、ジャイアントアントを見つけたらヨツバが戦うことにして依頼を受けた。
ボアの依頼はよく見たら討伐ではなくて、肉の納品依頼だったので受けるのをやめた。
僕が倒すとボアではない肉がドロップすると思われるからだ。
依頼とは関係なく見つけたら倒そう。星1つじゃない肉が手に入るかもしれないし。
それから数日は同じ依頼を受けて森に入っていた。
結局ヨツバは僕がキラーベアーと戦っているのを見て、自分でも大丈夫と判断したようで、キラーベアーを見つけたら2人で分担して倒すことになった。
でもジャイアントアントを見つけても僕は戦わない。
だってやっぱり気持ち悪かったから。
戦っているヨツバはスゴいなぁと思う。
当然ヨツバが危なそうだったら助けるつもりではいたけど、そんな事にはならなかった。
そして、依頼の報告の為にギルドに向かう最中に、路地裏で地べたに座ってパンを齧っているクラスメイトを偶然見つけた。冴木さんと鈴原さんの2人だ。
まだ2人は僕達に気付いてないけど、ヨツバも見つけてしまっているので、無視するわけにはいかず、声を掛けるしかない
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