第54話
☆☆☆
それから20分後。
大きな窓はベニヤ板で塞がれ、倉庫内は薄暗さを増していた。
雰囲気は悪くなったけれど、もともと人が来ない場所だから問題ない。
「これで大丈夫ですか?」
厚彦がリュウヤさんへ向けて訪ねている。
すると、倉庫内に強い光が現れた。
梓と玲子は一瞬キツク目を閉じる。
やがて光は弱まり、キラキラとした光の粒子の中にリュウヤさんの姿が見えた。
リュウヤさんは思っていたよりも背が高く、指先は絵の具で汚れていた。
「みんなありがとう。ずっとずっと、この窓が気になってたんだ」
やっぱり、そうだったんだ。
リュウヤさんの今の表情はとてもスッキリとして見えた。
「これで向こうへ行って、思う存分絵が描けるよ」
リュウヤさんの絵、もっともっと見てみたかったです。
そんな言葉を梓が飲み込んだ。
言ってもどうしようもないことだ。
今はリュウヤさんが向こうで好きな絵を好きなだけ描けることを喜んであげよう。
「じゃあ、僕はそろそろ行くよ」
リュウヤさんはそう言うと、笑顔で手を振り、天へと昇って行ったのだった。
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