第98話 エルバルク家当主の依頼
ベルドロール家は、魔獣バルゴの討伐によって崩壊した。
当主バルゴ・ベルドロールが先導しておこなっていた魔法戦力強化の実態は王国騎士団の調査で暴かれ、協力していたベルドロール派閥の貴族たちも軒並み処罰を受けた。
王城への直接攻撃を仕掛けたバルゴの罪は重く、ベルドロール家には後継ぎの息子らがいたものの、貴族としての座を維持することはできず、全ての家財を王国により没収、ベルドロール一族は拘束されることとなった。
タルクは王城前の戦いのあと、いつの間にか姿を消していた。ベルドロールとは縁を切り、これからは別の道を歩んでいくつもりなのだろう。
アルレアは被害を受けた城下町復興のための指揮をとり、今も忙しそうだ。
そして、私はーー。
「これからどうするつもりだ、赤フードの冒険者」
エルバルクの屋敷の中。お父様の私室に呼び出されていた。
「しばらくはおとなしくしていようかなと思ってます……あと、今はフード被ってないので、その呼び方はやめてもらえますか……」
赤フードの冒険者としての活動が唯一バレてしまったお父様の前にいると、なんだか気まずい。
私は魔獣バルゴを倒したあと、アルレアにその場を任せてタルクと同じくその場から姿を消した。
王族や城を守ったという功績を万が一にも大々的に称えられ、素顔を見せてほしいなどと言われては非常に困ったことになるからだ。
だが、バルゴを討伐したという事実は、もちろん隠し通せるようなものではなく、王族の方々は城下町の民衆の証言をもとに、多大な貢献を果たした赤フードの冒険者を探しているらしい。
これでは下手にギルドの依頼も受けられない。
しばらく冒険者家業はお休み……と思っていたのだが。
「そんな我が娘兼最強の冒険者にとっておきの役目がある。今までは戦う力がないと思っていたから、キリナに任せるかどうか悩んでいたのだが」
お父様はそう言って笑った。
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