第40話 三度のお茶会

「赤フードの冒険者さんは私が人質に取られても、嫌な顔ひとつせずに助けてくれましたの! あの方は尊敬すべきお方ですわ!」


 エルスの実家、カンガード家の大きな庭。


 そこに置かれたテーブルに座っているのは、いつもの令嬢メンバーたちである。


 つまり、私・リン・エルス・アルメダの四人だ。


 アルメダの依頼をこなしてから、数日が経過していた。


 黒色の毛を持つ巨鳥、ビッグは城下町近くの小さな森に住まわせることにした。


 その森は日々、小さな動物たちがモンスターに怯えながら暮らすような環境だったのだが、ビッグが好戦的なモンスターを片っ端から翼でなぎ払ったおかげで、とても安心して暮らせる森になったようだ。


 今、森の動物たちはビッグをリーダーにして団結している……というのを、調査を依頼した『動物会話』スキルを持つ冒険者から報告された。


 ギルドの依頼をこなすこともあれば、こうやって依頼することもある。


 世の中、助け合いだ。


 だが、ビッグは「赤フードが飼っている黒鳥」として知られ、たまに見物人が現れたりもしてるらしい。


 危害を加えられなければ、別にいいのだが、謎に有名になっていて面白い。


 ビッグの力が必要になった時は、スキルで連絡が取れるようにしてある。また力を借りることもあるだろう。


 そして……問題は目の前で興奮した様子で話しているアルメダである。


「私が赤フードさんと牢屋に入れられた時、怯える私を赤フードさんは抱き締めてくれました……。ああ、なんとお優しい方なんでしょう!」


「へぇ……」


 エルスの目がめちゃくちゃ怖い。殺気立っている。


 私の存在が、目の前の友達の間で奪い合いの対象になろうとしていた。


 なかなかこんな体験はできないだろう。


「アルメダ。言っておくけど、赤フードさまは私の物だから!」


 いや、エルスのものではない。


「ふふん、エルスはスキル研究に没頭しているといいですわ。その間に私は赤フードさんと親交を深めます!」


 ……赤フード姿で、もうアルメダと会わないように気をつけよう。


 エルスとアルメダがご令嬢のお茶会とは思えないほど、ぎゃあぎゃあと騒ぐ中、リンはいつもより口数が少なかった。


「リン、どうしたの?」


「うん、少し心配ごとがあってね……」


 そう言って、リンはまた口を閉ざしてしまった。

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