第20話 対人戦の基本

 対人間戦闘は、モンスターよりも気をつけなければならない点が多い。


 モンスターはその種族を見れば、大体どんな技を繰り出すか予想ができる。


 だが、対人戦においては、外見だけでは相手の取得しているスキルを把握することはできない。


 思わぬ攻撃を食らう可能性が高いということだ。


 残念ながら、相手のスキルを読み取ることができるようなスキルは、私も取得していなかった。


 そもそもこの世にそんなものが存在するのかどうかも謎だ。


 ということで、まずは警備長たち三人を観察する。


 三人でパーティーを組んでいる……ということは、お互いを補い合うスキルを持っている可能性が高い。


 すると、人相の悪い二人が動いた。


「兄貴! 攻撃強化っす!!」


「兄貴! 防御強化っす!!」


 同時に叫ぶと、警備長に向かって、赤と青の光が飛んでいく。


 それを受けた警備長は明らかに強化されたようだ。


 なるほど、『攻撃強化』に『防御強化』。


 それぞれ、攻撃系パラメーターを一式上昇させるものと、その防御版の二つ。


 バフスキルを一人に重ね合わせていくことで、強力なアタッカーを生み出す戦法のようだ。


 だとすれば、警備長の戦闘スキルは相手にダメージを与えるスキルだろう。


「一撃だ」


 警備長が構えた剣が黒色に染まる。


 あれは『暗黒裂傷』と呼ばれるスキルだ。それもかなりの高レベル。


 あの黒く染まった武器で切られた傷は自ら広がっていくという最悪な効果を持っている。


 いかにも悪役が好んで使いそうなスキルだ。


「だ、大丈夫なんですか……赤フードさん。あの技、一度だけ侵入した賊に対して使ったのを見たことがありますが、その……賊は酷いことに……」


 背後のエルスが不安げに言う。


 確かにきちんと対策ができていないと、『暗黒裂傷』はかなり厄介なスキルだ。


 私はどうするか考える。このまま、真正面から迎え撃ってもいいが……もっと効率的な方法もある。


 そして私は選択した。


 警備長の『暗黒裂傷』。


 わざと受けてみよう、と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る