第122話 勇者と魔王とただならぬ場所
「ソーマ様! 何があったんですか?」
歩いていってしまうマオに声をかけることができないでいると、セリシアとドラコが俺の方に近寄ってくる。
「……すいません。俺は一人でどこかに行ってしまったように思われていたんですか?」
俺がそう言うとセリシアは少し不思議そうな顔をする。
「いえ……むしろ、一緒にいたはずなのにいつのまにかいなくなっていた、という感じでした。それで、私達も離れないように霧の中で探していたんですが……急に霧が晴れたと思ったら、すぐ近くにソーマ様がいたので……」
「なるほど……どうやら、俺だけが狙われていたみたいですね」
「狙われていた? 魔物とかに……ですか?」
「いえ……この村……というより、この場所に、ですかね」
そう言って俺はあたりを見回す。俺が村だと思っていた場所は……完全な廃墟であった。
しかし、最初に立ち入った時、たしかに俺には村に見えた。
「……セリシアも、最初はここが村だと思いましたか?」
「え……えぇ。でも、霧が晴れてみると、完全に廃墟で……驚きました」
「……どうやら、ここはただならぬ場所のようですね……」
そう言ってセリシアも辺りを見回している。
「ソーマ」
と、俺たちが戸惑っていると、ドラコが俺の名前を呼んだ。
「なんですか? 残念ですけど、ここでは食事はできませんよ」
「違う。マオ、いない」
「……は?」
そう言われて俺は辺りを見回す。
……いない。さっきまですぐ先を歩いていたと思ったのに。
「……前言撤回です。俺たちはまだ、この場所に狙われているようです」
「え……それって……」
セリシアが不安そうな顔をしている。
それとほぼ同時に、いつのまにか、またしても霧が俺たちの周りを包み始めていたのだった。
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