第103話 勇者と魔王と現状報告

「……はぁ」


 町に戻った途端、俺は大きくため息をついてしまった。


 ……考えてみれば、マオとドラコを置き去りにしてきてしまった。セリシアになんて言えばいいのだろう。


「……いや、ありのままを話せばいいか」


 別にマオやドラコ、セリシアにどう思われようが構わない。


 俺は勇者で、そもそも、三人はあくまで王都に行くまでの連れ添いなのだ。気にしないで現状報告をすればいいのだ。


 俺はそう思いながら、宿屋へ向かっていく。と、宿屋の前には……人影があった。


「……まさか」


 俺は慌てて宿屋の人影に近寄っていく。


「あ……ソーマ様」


 やはり……セリシアだった。


「セリシア……どうして……」


「あはは……すいません。ドラコと……お二人のことが心配で。部屋にいるのも落ち着かなかったので……二人は?」


 そういうセリシアの顔を見ていると……途端に気不味くなってしまう。


「え……ドラコに……何かあったのですか!?」


 と、セリシアの顔が青ざめる。俺は首を横にふる。


「いえ……大丈夫です。ドラコはマオと一緒に安全な場所にいます」


「安全な場所? しかし……ソーマ様はマオ様とドラコを探しに行ってくれたのでは?」


「……えぇ。ドラコとはオークの集落で会って……俺は帰ろうと言ったのですが、二人が反対して……俺だけ帰ってきました」


 俺がそう言うとセリシアはしばらく驚いた顔をしていたが……フッと、優しく微笑む。


「……そうですか。二人は安全な場所にいるのですね?」


「えぇ……少なくとも、俺が戻るまでは……」


「ソーマ様が戻るまで? それって……」


「俺は……オークの討伐を依頼されているので。今度オークの集落に戻れば……集落にいるオークを全滅させなければなりませんから」


 俺がそう言うとセリシアはしばらく黙っていた。俺も何も言えなかった。


「……ソーマ様。少しお部屋でお話しませんか?」


 セリシアは笑顔で俺にそう言う。


「え……アナタと……部屋で?」


「あ……いえ! 大丈夫です! いくらサキュバスといえど、こういう状況ではその……我慢できますから!」


 あまり信用できないが、たしかにこのまま立ち話していても仕方がない。


「……わかりました。まぁ、もし妙なことをすればどうなるか……アナタも俺との戦力の差があること、分かっていますよね?」


「あはは……分かっています。さぁ、行きましょう」


 それでも少し信用できなかったが、俺は仕方なくセリシアと連れ立って宿屋の中に入っていったのだった。

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