第96話 勇者と魔王と冗談

「じょ……冗談じゃろ?」


 マオは本気でそう言っているようだった。しかし、俺も本気である。


「いや……俺がどういう存在か、アナタわかってますよね?」


「そ、それは……しかし! オーク達は何も悪いことはしておらぬではないか! それなのに、討伐するというのか?」


 悪いことをしていない……そう言われて、俺はふと、以前の村での出来事を思い出してしまう。


 確かにオーク達は何も悪いことはしていないのかもしれない。


 しかし、人間にとって魔物とは存在そのものが害なのだ。


 そうなれば、俺にとってとるべき行動は――


「討伐、どういう意味だ?」


 と、マオが大きな声で言ったためか、オークの門番がこちらを見てそう訊ねる。


 オークの門番に聞かれ、マオは焦った様子で続ける。


「そのままの意味じゃ。お前達を討伐しようとする人間たちがいるということじゃ!」


 マオがそう言うと門番は渋い顔をする。それから、俺とドラコを交互に見る。


「その話、本当か?」


「うん。本当」


 ドラコがそう言うと門番はしばらく考え込んでいたが、ドラコとマオに向かって手招きする。


「話、よく聞きたい。長老の前で話、してくれ」


「長老? 長老がおるのか?」


「そう。ここで、一番、偉い。お前達、長老に話、してくれ」


「う、うむ……わかった」


 そう言われてマオとドラコはそのまま門番に付いていこうとする。俺もそのままついていこうとすると、門番はいきなり俺に槍を突きつけた。


「お前は、来るな」


 明らかに威嚇した感じでオークはそう言ったのだった。

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