第61話 勇者と魔王と誤解

「……なんですって?」


 俺は思わず聞き返してしまった。しかし、マオは真剣な様子である。


「そのままの意味じゃ! お主達二人でいつも何か話しておるし……大体! お主達はベッドで一緒に寝ておったしな!」


 少し興奮気味にマオはそう言う。そう言われてしまうと……一緒に寝ていた事実は否定できなかった。


「ですから……あれはこのサキュバスが勝手に――」


「フフッ。私はそう思われても全然構いませんよ?」


 嬉しそうにそう言って、獲物を狙うような視線で俺を見るセリシア。ややこしいことになるので黙っていてほしい。


「ほれ! セリシアもこう言っておるし……いい加減白状するのじゃ!」


「ですから……俺はサキュバスに好き好んで精気を吸われる趣味はありません。本来なら同行もしたくないんですから」


「え……そ、そんな……酷いです、ソーマ様……」


 そう言ってなぜか嘘泣きをしてみせるセリシア。コイツ……絶対楽しんでいるな。


「大体! ソーマは儂を王都につれていくという使命があること、忘れておらんじゃろうな?」


「忘れていませんよ。というか、使命って……そもそもは、アナタが勝手に言い出したんでしょう」


「う、うるさいのぉ……とにかく! お主とセリシアは近づくの禁止じゃ! ほれ、ドラコ。セリシアを見張るのじゃ」


 と、マオの言うとおりにドラコがセリシアの方に近づいていく。


「ほれ! お主は儂の方に来い!」


 よくわからないが、俺は半ば強制的にマオの近くに呼び寄せられた。


「……これで満足ですか?」


「うむ……とりあえずは、な」


 それでもやはりどこか不満そうなマオ。それにしても使命って……ただの思いつきだと思っていたのだが、随分と大げさな話になってきてしまったものであった。

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