第51話 勇者と魔王と夢(3)

 そして、その日、また俺は夢を見た。


「この前、貸してもらったゲェムじゃが……少し難しいんじゃないかのぉ?」


 またしても俺は前の世界で、制服を来ていた。隣には顔の見えない少女……少女と俺は一緒に下校しているようだった。


 いつのまに一緒に帰るくらいの仲になっていたらしい。今の俺ならば考えられないことだ。


 俺は誰とも仲良くしたいと思わないし、深く付き合いたいと思わない。


 だけど、少女に話しかけられている俺は間違いなく俺で、少女は俺に対して話しかけ続けていた。


「……知りませんよ。そんなの」


 自分の意志とか関係なく、言葉が出てくる。つまり、これは俺の過去を追体験させられているということだろうか。


「そんなこと言うでない! 儂が困っておるのじゃ! 助けるのが友達であろう?」


 ……友達。俺と少女は友達なのか。でも、なぜか俺はその言葉が妙に引っかかった。


「……別にアナタと友達になったつもり、ありませんよ」


「なっ……! お主、そういうことは儂以外には言わないほうが良いぞ?」


 と、いつのまにか俺と少女はY字路に差し掛かった。


「残念じゃが、ここでお別れじゃ。またの」


 そう言って少女は笑顔で手を振りながら去っていく。俺はその姿をただ見つめていた。


「フフッ……こういうの青春って言うんですかね?」


「青春……こんなの青春って言いませんよ……って……え?」


 と、俺が振り向くとそこには……なぜかシスターが立っていた。


「先程は、どうも」


 シスターはニッコリと微笑んだが……その笑顔はどこか圧のあるものなのであった。

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