第38話 勇者と魔王とパンとスープ
祭壇の奥にあった部屋に通されると、そこには小さな机の上に、パンとスープが置かれていた。
少なくとも、この前の老人が提供してくれたものよりかは、豪華な料理が目の前に並んでいた。
「お、おぉ! よ、良いのか!? このように豪勢な食事を!?」
……すでに理性が消し飛びかけているらしく、今にも飛びつかん程の勢いでマオはシスターに訊ねる。
「うふふ。もちろんです。好きなだけ召し上がっていただいて構いませんよ」
シスターのその言葉とともにマオは席につくと、食事を口の中に流し込み始めた。
「……行儀が悪すぎますよ」
「なんじゃ? 別にいいじゃろ。腹が減っておるのじゃから」
俺が咎めてもまるでマオは食べる勢いを落とさなかった。どんどんとパンもスープもたいらげていく。
「まぁまぁ……随分とお腹が減っていたのですね」
「うむ! このソーマが儂にまともな食事を寄越さぬからな……厳しい旅路じゃった」
少し痛い目を見せたほうがいいかと思ったが……まぁ、実際まともな食事は魔王の城を出てからこれが初めてではある。
初めて城の外に出たマオとしては、このパンとスープが豪勢な食事に思えるのも仕方ないのか。
それから、しばらくの間、俺たちは食事の時間を過ごした。
ただ、俺とマオが食べるばかりでシスターは食事に全く手をつけなかった。何度俺が聞いても、シスターは食べようとしなかったのである。
それだけは何か引っかかったのだが、とにかく、マオはほとんどの食事をたいらげてしまったのであった。
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