かきわけて進む鉄 第9巻17章
かすれた指が象牙のような純白の山の斜面を順繰りと這い回った。
頂きで待ち望んでいた瞬間が訪れると腰のあたりが働き蜂のようにずくぅうっと忙しなくなり整った巣穴からは蜜があふれ出る。
舐めるようにごつごつとした手がその質を執念深く確かめて、こそぎ取った。
ふと気が付くと、こんこんと溢れ出る蜜のにおいに誘われたのか、一匹の怪物が夜の帳を引き裂いて現れた。たちこめるあまい香りが濃くなるにつれ、鉛のような頭は徐々にその恐ろしさを増していった。
怪物は鼻をひくつかせ、早速泉に顔を沈めて滴る唾液でそれを汚そうとした!
私はとっさに怪物の首を5本の指で絞めた。
されど、この恐るべき怪物は食い込む指を硬く押し返し、内に秘めた怒りを灼熱に変え、それは溶岩となり脳天からあふれ、浮き出た血管の上を伝う。
剝き出しとなった白い牙が糸を引いて持ち上がり、まさにそれは、肉体との決別を無理強いする猛毒が仕込まれた刃である。
このままではいけない!
したたる唾液を浴びながら私は怪物の二つある心臓の一つに食らいついた!
怪物は陸に投げた魚のように苦しみ、のたうち、楽しみ、憎しみで喉元を膨張させた。
もう少しだ!
私は、もう片方の心臓にも手を伸ばし、十四の夜を越えて蓄えられた生命力を絞り上げた!
二つの心臓から押し出された物は行き場を失い、怪物の中を駆け巡った。
怪物の体は膨れ上がり、やがてそれは限界を迎えて、ついに、一度めの死がもたらされたのだ!
ガラス細工の如き首筋には指を押し返すたくましい脈動があった。
私は、天使のように清らかで、馬のように穏やかになった怪物の頭にそっと口づけをした。
ああ。キャスリンどうして?
ロドリゴ、こうでもしないとあなたはすぐにいって・・・・・・・・・
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