第48話 カタリナ、嬉しいけど怠惰な日々に憂う

 私(カタリナ)は今日も、カリブ様とベッドで寝ている。

パーティーが2人になるまでこんな事はなかった。

ふふっ、起きていると荒々しい振る舞いですが、こうしていると赤子のような寝顔です。

ずっと見ていたいと思いますが、青空ですからそろそろ。


「起きてくださいカリブ様。朝ですよ」


 目覚めが悪いわけではないのですが、ここのところは毎日酔って帰ってきます。

そのせいで酒がまだ抜けないのでしょう。

私は布団だけ畳み、厨房へ向かった。

なぜ貴族の私たちがこんな生活を余儀なくされているかというと、ゴブリン討伐失敗以降の不評が重なったからだ。

私とカリブ様の両親は家系に泥を塗ったとされ、名誉を挽回するまでは別邸で暮らすよう言いつけられた。

使用人もないこの広い家で、私は何とか頑張って家事をしている。


「んっ! カリブ様! いけませんこんな昼間のうちに」


 朝食を作っている私の背後を、カリブ様は襲ってきた。

胸を揉みしだかれ、強引に唇を重ねられる。


「ぷはぁ。やはりブスの身体じゃ物足りないな」


 一しきり身体を触り終えると、カリブ様は退屈そうな顔をして外着を羽織った。


「カリブ様! 朝食は良いのですか? 待って!」


 行ってしまわれた。

恐らく、また女性をナンパしに行くのでしょう。

はぁ、やっと料理も上手くなってきたというのに。

仕方ありませんね、勿体無いですから2人分頑張って食さないと。


__その日の夕方__


「ふぅ、お掃除完了!」


 全部を掃除するのは無理だけど、なんとか使う部屋だけは綺麗になりました。

これでやっと、休めると椅子に座った数分のことでした。


「カタリナ! 酒だ! 今晩は飲むぞ!」


 この時間に陽気な態度で帰ってくると、決まってこのセリフを吐きます。

推察通り、女性を射止めることに失敗したのでしょう。


「かしこまりました。すぐにお持ちします」


 私は携えたグラスとワインを、彼の座っている椅子の横にある丸いテーブルに置いた。


「一本かぁ? いつも言ってるだろブス! 5本は持ってこいと」


「安心してくださいませ。そのボトルを空にしましたら、次を持ってきます」


 カリブ様は強がっていますが実は、酒にめっぽう弱いのです。

一本飲み終えるころには呂律が回らなくなるので、2本目以降はお水を差し出しています。

気づかないのが少し面白くて、時々水をお飲みになる時は笑いが堪えられません。


「くそぉ、あのアマども。勇者族のこの俺様をコケにしよったからに。ひっく」


 案の定、一杯飲んでからは酔いが回り出しました。

陽気に帰られた日は決まってこう嘆かれるのです。

毎日酔っている時は少し聞き分けが良くなっているようなので、この際普段言えないことを言おうと思います。


「あのカリブ様、そろそろクエストにまた挑戦しませんか?」


 言いたいことというのはこれだ。

私たちはあの日以来、数回クエストを受けただけで、それ以降は全く何もしていない。

このまま引きこもっていてはいずれ、どちらかの親が沙汰を下すでしょう。

そうならないうちに動かなければなりません。


「クエストだとぉ? カタリナ、お前馬鹿か?

ミリアとシュンが抜けてから2人で、いくつか引き受けてどれも失敗したじゃないか!

ひっく。

パーティー2人じゃ、どう頑張っても無理なんだよ。

もう諦めろよ。

それより、この暮らしももう長くないんだからせめて気楽にしようや! また今晩、お前を抱いてやるからよ」


「え? 本当ですか? 私とまたその、してくれるんですか?」


「あぁ、他の女に逃げられたんじゃ消去法でお前しかいねえだろ? 仏頂面で何考えてるかわからないが、図体と顔だけは良いからなお前」


 おっと鼻血が出てしまった。

危うく嬉しすぎて天に召されそうになりました。

いけないいけない。

私は自分の頬を左右殴った。

よし、何とか落ち着いてきました。


「カタリナお前、気でも狂ったか?」


 その様子を見ていたカリブ様は一瞬酔いが覚めたのか、引いた目でこちらを見てきた。


「ぷはぁ。まぁいいや、そろそろやるかぁ」


 カリブ様は腰を振りながらこちらに近づいてきた。

いけない、せっかく言いたいこと言えたのにこれじゃまた。


「カリブ様! 今日はダメ! ダメですぅ!」


__〇〇後__


 気づけば私とカリブ様は裸でベッドにいた。

しまったぁ、またこんなことを。

いけない! いけないぞカタリナ!

いくら酒に溺れて私に振り向いてくれるようになったとはいえ、こんな淫らでふしだらな生活を送っていてはダメ!

明日は私が町に出て、何か出来そうなクエスト探さなきゃ!

今日じゃないのかって?

もう夜だから、今はカリブ様の腕で寝たいからいいんです!

明日から!

頑張りますから絶対!

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