第11話 シュン、シュエリーを助ける。視点、スマイン


 俺の名はスマイン、裕福な貴族というだけではなく凄腕のファイターだ。

今まで数々の戦闘を経験してきたが、この状況はなんだ?

小娘めがけて渾身の魔法をぶちかましたはずだが、光の柱に飲み込まれたぞ。

いや、飲み込まれたというより消滅した?

上に伸びる柱を追っていくと、夜中というのに昼間のように明るい空が見える。

俺が追いかけるのが少し遅かったのか、光の柱はすぐに消滅してしまった。

目で追いかけ終わったころには、彗星が流れ落ちているだけである。

あの彗星、まさかあの柱によって?

いや、そんな馬鹿なこと。

て、戦っている最中によそ見をするとは不覚。

すぐに顔を戻すと目の前には珍妙な光景がこれまた広がっていた。


「大丈夫? シュエリーさん」


「シュン、あなたが撃ったの? なんて威力なの。...ていうか、どこから顔出しているのよ、変態!」


 細身の男が小娘の股ぐら下の地面から仰向けに身体を出している。


「ごめんごめん! だってシュエリーさんを守るにはこうするしかなかったからさ」


「だからって、私の股下から出ることないでしょ! もっとかっこいい助け方ないの?」


「いやぁ、それは無理なんだよだって」


「おい! お前が出したのか今の」


 俺はシュンと呼ばれる細身の男に問いただす。

ありえない、これほどの威力を放つものがいれば名や顔が知れているはず。

シュンは真剣な顔で小娘に下がるよう話しかける。


「わ、わかったわ。後はお願いします」


 小娘は涙を流しながらシュンの後ろへ下がった。


「お前ら! 俺を無視するな!」


 貴族の俺を差し置いて雑魚どもが余裕ぶりやがって。

やはりありえない、さっきのはあの男がしたものではない。

そうだ、小娘だ。

小娘が最後に力を振り絞って発動させたもの、いわば火事場の馬鹿力というものだ。

認めてやろう、村人冒険者といえど並みの貴族に匹敵すると。

だが、ここまでだ。


「おい男! その小娘は俺には劣るが貴族に匹敵する魔法使いだったぞ。

その小娘より弱そうな細身のお前が強いとは到底思えない。

今度こそ貴様らの終わりだ! だがな、見苦しく頭を地につけ泣きわめいて許しを請えば命だけは見逃してやってもいいぞ」


 ま、嘘だけどな。

土下座して泣きわめいた惨めな姿を晒して〇んでもらう。

貴族に逆らった当然の報いだ。


「「シュンお兄ちゃん! やっちゃえそんな奴!」」


「はぁ!? お前らなんで拘束が解けている!?」


 子分たちが監視していたはずじゃ...。

あ、泡吹いて気絶しているぅうう!?


「まさか、ガキ共だけで仮にも上級冒険者のこいつらを倒したっていうのか」


「「違うよ悪いおじちゃん、シュンお兄ちゃんが助けてくれたの」」


「何!? この弱そうな奴がだと? 貴様、いったい何者だ」


「「お兄ちゃんは勇者パーティーにいたんだよ! とっても強いんだから」」


「勇者パーティーだと!? ありえない、こいつの名前も顔も浮かばないぞ」


 いや待てよ、噂で耳にしたことがあるようなないような。

勇者パーティーは皆上級冒険者の中でもとりわけ強いとされているが、1人だけ違うと。

そうか、わかったぞ。


「フハハハ! お前、卑怯な手を使ったんだな! この貴族の恥さらしめ」


「恥さらしはあなたでしょスマイン! 貴族のくせにシュンの強さも知らないなんて」


「小娘め、何も知らないようだな。こいつは冒険者ランクFなんだよ!」


「な、なんですって!? そんなわけないわよ、勇者パーティーにいた人がFランクなんて出鱈目もいいとこ」


 やはり、こいつらの関係が見えて来たぞ。

雑魚はやはり雑魚と群れる。

土下座なんかよりこいつらの関係を壊してから葬る方が面白い。

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