帝國軍人、異世界へ行く。亡き最愛の妻との約束を果たすことはできるのか

異世界転生の物語は多くあれど、主人公が元日本帝國軍将校という作品は少ないのではないでしょうか。
現代とは違う、百年前に生きた男性。ゲームもラノベもない時代の人です。異世界に関する予備知識はありませんが、戦争に関わっていた生の経験があります。

本作は、主人公・英治/エッジが帝國軍人だったからこそ、見知らぬ異世界の軍事的戦略に係るシーンに説得力が生まれ、ストーリーに深みが増していたように思います。
人種間の力関係、特殊な力を持つ宝物を利用した戦略、政治的駆け引きなど、大変読み応えがありました。

一眼人のロタが、非常に魅力的でした。
凛として心根が靭く、誠実な志を持つ人。現代的な強いヒロイン像ですが、エッジには新鮮なタイプの女性として映ったはずで、その感覚もリアルでした。

亡き妻・芙蓉子との約束を守りきれなかったという後悔が、英治を動かし続けます。
一方で、エッジとなってから結んだ人間関係も、徐々に大切なものとなっていきます。
ハードなストーリーラインの傍らで、心情の移り変わりの丁寧な描写もお見事でした。

ラストシーン、タイトルが効きました。
エッジは今度こそ、愛する妻に生涯を捧げ通せるはずです。
感動的な読後感。素晴らしい物語でした!

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