437話 ラグナロク
俺は女神様からいろいろなことをされた。
だが、彼女は彼女で不測の事態に直面したようだ。
「な、ななな、なんてことをしてくれたんですかっ!! わたしの美しい髪の毛が汚されてしまったではありませんか! 許せません!」
女神様は激怒していた。
「ああ、わたしの自慢の髪が……」
女神様は自分の髪を触りながら嘆いている。
「今度こそ、本当に今度こそ許しませんっ! 存在ごと抹消します!!」
女神様が怒り狂っている。
気持ちはわからないでもないが、俺はほとんど何もしていないのだが。
「全てを滅せよ! 【ラグナロク】!!!」
女神様が魔法を発動させる。
これは運営側専用のインチキジョブ『神』の固有スキルだ。
効果は、対象及びその周辺への超高ダメージ。
(マ、マズい……。もうダメか……)
ついに俺も年貢の納め時が来たかと覚悟した。
だが、いつまで経っても『ラグナロク』は発動しなかった。
「な、なぜ発動しないのです? ――って、ええぇっ!? この下等生物とわたしが半分交わったことになってます!? こいつに新たな称号が……」
女神様が何やら動揺している。
MSCでは、インチキジョブ『神』に関する称号がいくつかあった。
神種族の敵に一定以上のダメージを与えた上で生還することで得る『神を討つ者』。
神種族の敵へ状態異常を付与することに成功することで得る『神の天敵』などだ。
俺は彼女にカンチョーをぶちかまして、実質的に『スタン』のような状態へ追いやった。
この2つの条件は満たしていたもおかしくない。
だが、『ラグナロク』の発動を無効化する類の称号効果はなかった気がするが……。
「最高神のジジイめぇ……。適当な判定基準を設定しやがって……! こ、こうなったら仕方ありません。こいつを処分するのは後回しです。まずはわたしの身を清めなければ……」
女神様がブツクサ言っている。
「あなたはさっさと目覚めておきなさい! いいですか? わたしを汚したのですから、せめてコマとして頑張って働きなさい! わかりましたね!」
「えー」
「わかりましたね!!」
「はい……」
こうして俺は、今後も女神様のコマとして働くことになってしまったのだった。
まぁ、生きてこの不思議空間から脱出できただけでも良しとしておこう。
そして、俺の意識は薄れていき、シルヴィやユヅキたちが待つ現実世界へと引き戻されていったのだった。
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