419話 メイドの女性ネリス

 風邪をひいてしまった俺とシルヴィは、部屋でゆっくりしている。


「エウロス様。お召し物を替えさせていただきますね」


 この俺――コウタ・エウロス男爵にそう言ったのは、新しく雇ったメイド。

 20代後半の女性、ネリスだ。


 俺が男爵位を授かってからというもの、俺に接触してくる者は増えた。

 その中でも特に大きく動いていた職種は、メイドだ。

 どうやら、俺が女性好きという噂が広まっていたらしい。

 10代から20代の女性を中心に、俺に群がってきた。


 だが、俺はまだ屋敷すら持っていない身である。

 しかも、本拠地とするのはこのエルカの町ではない。

 エルカの町に巣食う『毒蛇団』の掃討後、西部に広がる森や荒野を開拓し、自らの領地とする予定である。


 そのため、直近でメイドを雇うことはやめておいた。

 だが、ただ働き同然の低賃金で構わないという女性がいたので、お試し程度のメイドとして雇った。

 それがこの、ネリスというメイドである。


「ああ、頼む」


 俺は裸になり、ベッドの上に寝転がる。


「では失礼します」


 ネリスが俺の体を丁寧に拭き始めた。


「これはどうでしょうか?」


「ああ、気持ちいいな」


 背中をタオルで擦られる感触が心地よい。

 彼女の力加減は絶妙で、マッサージを受けているような気分になる。


「次は前を洗いましょう」


「おう」


 俺は仰向けになった。

 すると、下半身が露出する形となる。

 ポロン。


「……」


「……」


「……おいおい、あんまりじっと見られても困るのだが?」


「申し訳ありません」


 ネリスが謝罪する。

 だが、その視線は俺の肉体、そして股間に釘付けだった。


(まあ、無理もないな)


 俺は自分の肉体に自信がある。

 毎日のように魔物狩りを行っているからだ。


 さらに、各種ジョブの恩恵もある。

 例えば、パッシブスキルの『腕力強化』により、腕の力が強くなったとしよう。

 この世界特有の物理法則により、腕の筋肉量に伴う腕力の強さとはまた別として、スキルの補正がある。

 『腕力強化』を得たからと言って、突然腕が太くなったりはしない。


 だがそれはそれとして、『腕力強化』を得れば日常的に持ち運びする武器や荷物の重量は増す。

 それに伴い、徐々に筋肉量も増えていく。

 俺のように多様なジョブを高レベルにまで育てていれば、自ずと体も鍛えられていくというわけだ。


「どうだ? いい体だろう?」


 俺はドヤ顔でそう言う。

 ボディビルダーのような体ではなく、いわゆる細マッチョといったところか。

 脱いだらすごい。

 そんな俺が全裸になって、目の前にいるのだ。

 年頃の女性なら誰でも興奮してしまうだろう。


「……」


 ネリスは無言のまま、俺の胸板を拭いている。

 そして、その手は下半身へと向かっていったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る