417話 絶対零度

 俺は『アクセル』の出力を増してシルヴィに特攻したが、対応されてしまった。


「はあぁっ! 【絶対零度】!!」


「なにぃっ!?」


 シルヴィが叫んだ瞬間。

 周囲の温度が急速に低下していく。

 『絶対零度』、それは対象の温度を約マイナス273度にまで下げる氷魔法。

 ……ではない。

 さすがにそれは強すぎる。

 あくまでも、そうしたイメージを思わず抱いてしまうほど強力な冷却魔法というだけである。


「うぉおおおっ!!!」


 俺は必死に手を動かし、シルヴィのズボンを下ろそうとする。

 だが、指先が凍りつき、うまく動かない。


(俺の魔法抵抗力を突破して凍らせてくるとは……。かなりの出力だ)


 今回のシルヴィの『絶対零度』をその辺の草木に向けて放てば、一瞬にして凍るだろう。

 草木には微弱な魔力しか含まれていないからだ。

 しかし、人や魔物には草木よりも多い魔力が含まれている。

 特に、総合的なジョブレベルが高い俺の魔力は、常人よりもずっと多い。

 攻撃魔法を受けても、魔法抵抗力によりダメージは大幅に軽減される。


「くっ……。俺を凍らせるとは、さすがはシルヴィだ」


「さぁ、その手を放してください。これ以上動けば、さらに凍ってしまいますよ?」


「……」


 今現在は、俺の抵抗力と冷却効果が釣り合っている。

 俺が咄嗟に『アクセル』を解除して、氷魔法をレジストするために魔力を振ったからだ。

 このまま一時退却して体制を整えれば、これ以上俺の手や体が凍ってしまうことはない。


(だが、本当にそれでいいのか?)


 もう少し。

 もう少しで、シルヴィの短パンをズリ下ろし、パンツが見えるところまできたのだ。

 先ほど一度は見ているが、細かいことはいいだろう。

 抵抗されているところを強引に突破して見ることで、より大きな興奮と達成感を得ることができるのだから。

 ここで諦めるのはあまりにも惜しい。


「俺は『悠久の風』のリーダーにして、バルドゥール王国貴族。コウタ・エウロス男爵だ!」


「はい?」


「ここで引くわけにはいかん! うおおおぉっ!!」


「ちょっ……」


 俺は氷魔法に抵抗するための魔力を切った。

 その代わりに、再度『アクセル』の出力を増す。


「よっしゃぁ! 見えたぁ!!」


「ひゃああぁっ!」


 彼女のズボンがずり下がり、可愛らしい純白の下着が露わになる。

 それと同時に、シルヴィの表情が羞恥に染まる。

 これだよ。

 俺はこれを求めていたんだ。


「我が生涯に一片の悔い無し……」


 ピキンッ!

 『アクセル』に魔力を振って強引に攻めた結果、俺の魔法抵抗力は通常程度に戻っている。

 その結果、シルヴィが発動を継続していた『絶対零度』に押し負け、俺の体が凍りつく。


「わわっ! ご主人様が凍ってしまいました! って、わたしもっ!?」


 俺の体を凍らせた冷気は、そのままシルヴィをも襲っていく。

 攻撃魔法の効力は、通常は術者には及ばない。

 そういう制約の元で発動されているからだ。

 だが、こうして攻撃対象者が術者とゼロ距離にいるなら話は別だ。


「ふふふ。眼福だ……」


 氷漬けになった俺の目の前には、ズボンがズリ下がった状態で同じく氷漬けになりつつあるシルヴィの姿がある。

 この素晴らしい光景を目に焼き付けつつ、俺の意識は薄れていったのだった。

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