408話 レベリング

「いくぞぉっ! 【アクセル】!!」


 俺はスキルを発動して、一気にゴブリンジェネラルへと肉薄する。


「グギィッ!?」


 俺の動きに驚いたのか、ジェネラルは驚愕の声を上げる。


「せぇいっ!」


 そして、俺はその隙を逃さずに剣を振るった。


「ぐぎゃあぁっ!?」


 ジェネラルの身体に横一文字の傷ができる。


「よし、残るは雑魚処理だけだ!」


 俺は仲間に声をかけた。


「はい、ご主人様」


「任せてなのです、コウタくん」


「いきますわよ」


 シルヴィ、ミナ、ローズが応じる。

 今は、パーティのほぼ全員のファーストジョブを『鍛冶師』に設定している。

 具体的には、俺、シルヴィ、ユヅキ、リン、ティータ、ローズ、グレイス、エメラダ、セリアだ。

 ミルキーは、元々『鍛冶師』である。

 そしてミナは、『鍛冶師』の上級ジョブである『聖鍛冶師』だ。


「せいっ!」


「どりゃあっ!」


「いっちょ上がりだぜ!」


 ユヅキ、リン、グレイスが残党のゴブリンたちを片付けていく。

 一時的にファーストジョブに『鍛冶師』を設定してジョブレベルを上げている途中なので、彼女たちの戦闘能力は低下している。

 だが、特に問題はない。

 各人のセカンドジョブにはそれぞれレベルの高いジョブを設定しているので、現状でも並の冒険者よりは強い。

 迷宮で先の見えない戦いをしているわけでもないし、『毒蛇団』のように悪質な犯罪組織を相手にしているわけでもない。

 魔物狩りであれば、これぐらいの戦闘能力で十分だ。


「……えっと、これで終わりですね」


「……無事に倒せて良かった……」


 エメラダとティータが戦闘終了を告げる。


「お疲れさま。この調子なら、今日中に全員が『鍛冶師』レベル15を達成できそうだ」


 みんなで『鍛冶師』のレベリングを行い始めて、早くも数日目となっている。

 最初はエルカ草原で低級の魔物を狩り、今日はエルカ樹海の奥に足を踏み入れている。

 ゴブリンジェネラルはそこそこ強い魔物だが、その分経験値もホクホクだ。


 ミナやミルキー以外は素人であり、ほぼ同条件からのスタートだ。

 しかしそれでも、やはり多少のレベリング差は出てくる。

 その要因は、主に2つだ。


 1つは、『鍛冶師』としての才能。

 魔法系のジョブほど極端な才能差はないものの、やはり多少の差はある。

 それがレベリング効率の差として出ているわけだ。


 もう1つは、狩りの際の活躍度である。

 レベルアップは魔素を吸収することで果たされる。

 魔物を倒したとき、その魔物が持っていた魔素が霧散し、近くにいる別の生命体がそれを吸収するイメージだ。

 また、俺のチートスキル『パーティメンバー設定』によっても経験値は分配されるが、その際には各人の活躍度なども参照される。

 そのため、同じパーティ内で同じジョブをレベリングしていても、多少の差は出てくるというわけだ。


「もうレベル15に? 聞いてはいましたが、コウタさんの力はとんでもないですにゃ」


「本当になぁ。こんなのズルいぜ。まぁ、アタシもその恩恵を受けているからいいんだけどよ」


 セリアとミルキーがそれぞれ感想を述べる。

 彼女たちは比較的新参なので、俺のチートスキルにまだ慣れていない様子だ。


「……なぁ、コウタ坊」


「どうした? ミルキー」


「さっきのスキル、すげぇよな。もう一度見せてくれよ」


「ああ、【アクセル】のことか。わかった。じっくり見るといい」


 自分にないジョブのスキルはすごく見えるものだ。

 しかしその中でも、『英雄』のスキルには強力なものが揃っているように思う。

 ミルキーに再び見せてあげることにしよう。

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