391話 何だか胸騒ぎがしてな

 ミナの工房で、俺たち『悠久の風』の武具の新調について打ち合わせしている。

 材料は持ち込みで何とかなるが、納期が問題だ。


「1か月かぁ……。『毒蛇団』をさっさと潰して、民を安心させてあげたいのだがな」


 ウルゴ陛下やギルドマスターに指示された期限は半年。

 だが、俺は1、2か月を目処に対処すると宣言した。

 できることならさらに短くしたい。


「どうしてそこまで急いでいるのです? もちろん、早いに越したことがないぐらいはわかるのですが……」


「何だか胸騒ぎがしてな」


「胸騒ぎなのです?」


「ああ。どうにも、俺の将来のハーレムメンバーの身に危険が迫っている気がしてならないのだ」


「……相変わらずの女好きなのです。ボクたち『悠久の風』の9人に加えて、ミルキーさんにもちょっかいを出していて、さらにはまだ見てもいない人に思いを馳せるなんて……」


「俺の女好きは筋金入りなのだ。しかし、女好きゆえに危機察知能力も高いと自負している。だからこそ、手遅れになる前に手を打っておきたいのだ」


 俺の勘では、獣人系の少女がツライ目に遭ってしまっているような気がする。

 できることなら、今すぐにでも助けにいきたい。

 だが、『毒蛇団』はそこそこ程度には厄介な相手だ。

 さすがに半年もの期間は不要だが、最低限の準備は必要だ。


「事情はわかった。アタシも協力したいが、こればっかりはな」


「ボクも同意なのです。ボクとミルキーさんが睡眠時間を削っても、3週間は絶対に掛かるのです」


 ミルキーとミナが申し訳なさそうにする。

 当初、ミルキーのみなら2か月以上掛かると言っていた。

 そこにミナが加わるなら、1か月以内も可能と回答していた。

 そして今、睡眠時間を削れば3週間との回答だ。


 これ以上言ってもどうにもなるまい。

 睡眠時間を削らせて納期を早めさせるとか、ブラック企業じゃねぇか。


(うっ! 俺の前世の記憶が……)


 俺は社畜だった。

 あまり思い出さないようにしていたのだが、ツライ記憶が蘇りそうになる。

 限られた人員で納期を縮めようとすれば、必然的に長時間労働となる。

 それはダメだ。


「いや、こっちこそ急かして申し訳ない。だが、可能な限り急いでほしいんだ。俺にできることはないか? 何でもする」


 俺は武具の新調の他にも、やることがある。

 『悠久の風』のメンバー拡充や『毒蛇団』の情報収集だ。

 それらの隙間時間であればいくらでも手伝える。

 また、時間以外で解決できる問題であれば、前向きな検討が可能だ。

 俺に何かできないか、ミナとミルキーの意見を聞いてみることにしよう。

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