297話 ブラックタイガーの肉

 エルカ迷宮2階層のボス、ブラックタイガーを討伐した。


「ふう……。終わったな」


 俺は剣を収める。


「やったぜ!」


 グレイスはハイタッチを求めてきた。

 それに応える。


「やりましたね! ご主人様!!」


 シルヴィが抱きついてくる。


「コウタ、お疲れ様」


 ユヅキが笑顔で言う。


「お見事でしたわ。コウタ殿」


 ローズが優雅に礼をした。


「ありがとう。でも俺だけの力ではないぞ。みんながいたから勝てたんだ」


 俺はそうまとめる。

 ブラックタイガーはそこそこの魔物だ。

 テツザンの近郊で戦ったブラックワイバーンほどではないが、ゴレームやリトルブラックタイガーよりは強い。

 俺たち『悠久の風』だけで安定して討伐できることが証明されたのは素晴らしいことだ。

 それぞれが健闘を称え合う。


「あれ? あそこにドロップ品があるのです!」


 ミナが声を上げる。

 リンがドロップ品に近づき、拾い上げる。


「へへっ。これはブラックタイガーの肉だな!」


 リンが嬉しそうに言った。

 ブラックタイガーの肉は高級食材である。

 リトルブラックタイガーやホーンラビットの肉よりもさらにおいしい。


「よし、持って帰ろう」


「……売るの? それとも……」


「みんなで食べよう」


 ティータの言葉に、俺は即答する。


「賛成です!」


 シルヴィが手を上げた。


「ふふっ。コウタ殿らしいですわ」


 ローズが微笑み、そして言う。


「では、わたくしも食べますわ」


「ボクも楽しみなのです。じゅるり」


 ミナがよだれを垂らしている。

 みんな、食欲旺盛だ。

 ジョブレベルが十分に高くなった者は、補正により高い能力を持つことになる。

 戦闘系ジョブなら強くなるし、生産系ジョブであれば良質な品を生み出せるようになる。


 しかし、それにはちょっとした代償がある。

 消費するエネルギーが増すのだ。

 高ランクのジョブを持つようになった俺たちの日々の食費は馬鹿にならない。


 エネルギー補給だけを考えるのであれば、穀物類やホーンラビットの肉を食べるのでもいい。

 だが、そこまで効率を重視する必要もないだろう。

 俺たちのパーティ資金は潤沢だからな。

 エメラダを購入したことにより俺個人の裁量で動かせる金はほぼ枯渇したが、パーティ資金はまだまだある。


「じゃあ、今日のところは帰るか」


「おう!」


 俺の言葉に、グレイスたちは元気よく返事した。

 俺たちは、ブラックタイガーの肉を持って帰路につく。

 ブラックタイガーの肉は非常に美味しい。

 それをみんなで食べるとなると、非常に楽しい夕食になりそうだな。

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