277話 お前は今、俺の所有物だ

 エメラダを購入した。

 彼女が着ている服は貫頭衣なので、大通りを歩かせるのは気が引ける。


「まずは裏通りの店に服を買いに行こうか」


「あ、はい。すみません。あたしなんかのために……」


 エメラダが申し訳なさそうな顔をする。


「とりあえず、適当な店で見繕うことにしよう。……いや、それよりも……」


 俺はエメラダの格好を改めて観察する。

 貫頭衣の隙間からは、白く美しい肌が見え隠れしている。


「どうしましたか? コウタさん?」


「いや、何でもない。……それより、お前は今、俺の所有物なのだぞ? 適切な呼び方というものがあるだろう」


 本当は別に気にしないのだが、1つ思いついたことがある。

 突然態度を変えた俺を見て、エメラダが身体をビクつかせる。


「えっ!? は、はい……。わかりました。主様」


 ゾクリ。

 背徳的な興奮を覚える。

 俺とエメラダは、かつては対等な関係だった。

 こちらは高ランク冒険者として、エメラダは優秀な『調合士』として、客と店員の関係だったのだ。

 しかし今は、主人と奴隷の関係である。

 彼女は俺の命令に背くことができない。

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