261話 口ほどにもなかったな

 みんなで薬草採取を行っていたところ、少しめずらしい薬草を見つけた。

 ハイポーションの材料になるホワイトフラワーというものだ。

 しかし、それを採取しようとした俺たちに対してイチャモンを付けてくる男たちがいた。

 男たちは強引にホワイトフラワーを奪おうとしてくる。


「仕方ない。力づくで分からせてやろう」


「望むところだ」


 そう言って武器を構えた男たち。


「いくぜぇっ! 野郎共!!」


「「「うおおおぉっ!!!」」」


 彼らが雄叫びを上げ、俺に迫る。

 しかし次の瞬間、彼らはその場に崩れ落ちた。


「うぐぅ……」


「がはっ……」


「ふん。口ほどにもなかったな」


 倒れた男たちを見て、俺は鼻を鳴らす。

 この程度の相手に、激闘を繰り広げる必要はない。

 あっさりと返り討ちだ。


「お見事ですわ」


「……カッコいい……」


「コウタくんはやっぱり強いのです」


 ローズ、ティータ、ミナたちが称賛の言葉を送ってくれる。


「いやいや、それほどでも。こいつらがザコなだけだ」


 俺は謙遜する。

 実際、俺がやったことは簡単なことだ。

 英雄のアクティブスキル『アクセル』を使用し、自身を加速させる。

 そして相手の足を払って転ばせ、その隙に背後から急所を突いた。

 その結果、相手はあっけなく戦闘不能になったのだ。


「ご主人様は最強です!」


「コウタは、いつの間にか手加減できるようになったんだね」


 シルヴィとユヅキがそう言う。

 確かに、『風魔道士』や『英雄』のジョブを持つ俺はかなり強い。

 だが、その強すぎるスキルの加減をうまくできない側面があった。

 『黄昏の月』のリリアナやザードとの戦いで遅れをとったのは、それが原因である。

 その後のアルフヘイム滞在中や、エルカの町までの道中で、スキルの練習をしておいた。

 まだ万全とは言いがたいものの、手加減という点ではかなりの技術が身についた。


「俺も戦う用意をしていたのによ。無駄になったな」


「へへっ。あたいもだぜ」


 グレイスとリンは残念そうだ。


「悪いな。このホワイトフラワーは、俺たちが貰っていくぜ」


 俺はそう宣言する。


「うっ……」


「くそぉ……」


「いったい何が起きたんだ……」


 男たちはまだ意識があるようだ。

 やはり、俺の手加減はいい感じにできているらしい。


「さて、規定の量までもう少しか。みんな、手分けして探すぞ」


 俺は仲間たちに声をかけた。


「承知しました!」


「了解だよ」


「……頑張ろう……」


 シルヴィ、ユヅキ、ティータが返事をする。

 そうして、俺たちの薬草採取は順調に進んでいったのだった。

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