244話 スイートルーム

 俺たち『悠久の風』は、宿屋を探して町を歩く。


「ここが良さそうだな」


 しばらく探し回り、ようやく見つけた宿に入った。


「一泊、八人分で頼む」


 俺は店員の女性に声を掛ける。


「はい。部屋は別れても構いませんか?」


「いや、できれば一部屋がいいな」


 黒狼団を冒険者ギルドに引き渡して身軽になったことだし、今夜はたっぷりと楽しみたい。

 全員で同じ部屋にいるのが一番都合がいいのだ。


「八名様を一部屋となりますと……。スイートルームしかありません。ご料金の方がお高くなるのですが、それでもよろしいですか?」


「ああ。それで構わない。金には困っていないからな」


 俺はストレージから取り出した金貨を無造作にカウンターに置く。


「えっ!? こ、ここまでの大金は必要ありませんが……」


 受付嬢が慌てて言う。


「気にしなくていい。今日は気分が良いんだ。チップだと思ってくれ」


「で、ですが……。あまりに多すぎます……」


「君のような素敵なレディにサービスしたくなっただけだよ」


「……」


「じゃあ、部屋に案内してくれ」


 俺が促すと、彼女は恐る恐るといった様子で金貨を受け取った。

 そして、鍵を持ってくる。


「こ、こちらがスイートルームの鍵になります」


「助かるよ」


 俺は礼を言って、その部屋に向かう。

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