243話 証拠

 ギルマスがグレイスのことを男ではないかと疑っている。

 黒狼団の少年『グレイ』が行方不明ということもあり、疑念を抱いているのだ。

 ここはしっかりと疑いを晴らしておく必要がある。


「改めて言うが、こいつは間違いなく女だ。今、証拠を見せてやろう」


 そして、証拠を見せた。


「では、これで証明は終わりということでいいか?」


「ああ。登録処理を続けよう」


 俺はギルマスに書類を渡して、処理をしてもらった。


「これで登録は終了だ」


「ありがとう」


「ところで、君たちはこれからどうするつもりだ? さっきはああ言ったが、もし良ければこの町を拠点に活動しないか? Bランクパーティの君なら、即戦力として歓迎する」


 ギルマスが勧誘してくる。


「悪いが、俺にはやることがあるんでね。まずはエルカの町に拠点を戻す。その後は、またあちこちの町を見て回るつもりだ」


「そうか……。残念だが仕方がないな」


 ギルマスは少し寂しそうな表情を浮かべる。


「ああ。また、機会があればよろしく頼む」


 俺はそう言って、その場を離れた。


「ふう……。なんとか誤魔化せたか?」


「ああ……。バレなくてよかったぜ」


 グレイスが安堵の声を漏らす。


「だけどよ。あそこまでしなくても良かったじゃねえかよ。あたいの大切なところを……」


「まあまあ。見られるぐらいいいじゃないか。減るものでもないし」


「…………」


「とりあえず宿を探そう。今後の予定も決めないといけない」


 不満げなグレイスをなだめつつ、俺はギルドを出る。

 そして、みんなと共に宿屋を探し始めたのだった。

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