200話 エルフの里アルフヘイムへの道
エルフの女であるピュセルやヤナハと和解することができた。
「ところで、この者たちは?」
ピュセルがシルヴィやユヅキたちに視線を向け、そう問う。
「ああ。俺の仲間だ。もちろんティータの仲間でもある」
「そうであったか。それは失礼をした」
ピュセルは再び頭を下げる。
「改めて、我はピュセルという者だ」
「これはご丁寧に。僕はユヅキ。よろしくね」
「へへっ。あたいはリン。料理人だ。エルフ料理を楽しみにしてるぜ」
「私はヤナハといいます。精一杯おもてなしさせていただきますわ。森の恵みをいっぱい食べてくださいませ」
俺たちは自己紹介しあう。
こうして、ピュセルたちの集落に招かれることになったのだった。
俺たち『悠久の風』はピュセルとヤナハに案内され、森の中の道を歩いていく。
「ほう? なかなかいい道じゃないか」
俺は素直に感想を述べる。
街道ではないものの、しっかり整備されていて歩きやすい。
「そうだろう。我らの種族は、昔から森と共に生きてきたのだ。だから、森の道に関しては他の種族より詳しい。人族の町にはないようなつくりだろう?」
ピュセルが得意げに語る。
確かに、彼女の言う通りだった。
人族の町では見かけることのない木々が生い茂り、その隙間を縫うように道が作られている。
地面は平らではなく、所々に段差があった。
だが、一つ一つの段差は大きくない。
おそらく、女性や子どもでも楽に通れるように整備されているのだろう。
「それにしても、本当に綺麗な景色ですね……」
ユヅキが周りを見ながら言う。
彼女だけではなく、全員が同じようなことを思っているだろう。
目の前に広がるのは、どこまでも続く緑の大地。
空からは木漏れ日が降り注ぎ、小鳥たちがさえずっている。
こんな風景を見ていると、まるで時間が止まってしまったかのように錯覚してしまう。
「ふふん。そうだろうとも。自慢の森だからな」
ピュセルは鼻高々といった感じで言った。
「それにしても、さっきから同じところをぐるぐる回ってるような気がするんだが」
俺は前を歩くピュセルに声をかけた。
まさか迷子か?
そんなベタな……。
「ふむ。それは気のせいだな。余所者が容易に入れないよう、特殊な結界を張っているのだ」
「なるほど」
確かに、MSCでもそんな魔法があったな。
エルフの村に行くためには、結界魔法を解除するか、今回のように案内人が必要となる。
普通の冒険者パーティや商人、それに盗賊などはアルフヘイムにたどり着くことは難しい。
俺たち『悠久の風』にはティータがいるので、ピュセルやヤナハがいなくとも大丈夫だったとは思うが。
「さあ。もうすぐ我らの集落に着くぞ」
先頭を歩くピュセルが振り返りそう言う。
その言葉通り、エルフの里アルフヘイムが見えてきたのだった。
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