195話 vs女エルフたち

 エルフの神聖な湖で楽しんでいたところを、エルフに目撃されてしまった。

 何とか言い訳をしないとマズい。


「ま、まお落ち着け。俺たちは水浴びをしていただけだ」


 俺はなるべく穏やかな口調で言う。

 しかし、相手はかなり怒っている様子だ。


「嘘をつけ! 我に汚らわしいものを掛けおって!」


 女性は手に持っていた槍を構えた。

 髪の毛は水分を含み、額に張り付いている。

 あれはローズの潮だ。


「わ、悪いとは思っているんだが。俺たちにも事情があってだな」


「問答無用! このピュセルが成敗してくれるわ!」


 女性がそう言ってこちらに向かってくる。

 このピュセルという女エルフがリーダー格らしい。

 背後には他のエルフも数人いる。


「ちっ。仕方ないな……。みんな、やるぞ!」


 俺はそう声を掛ける。

 しかし……。


「ちょ、ちょっと待つのです。まだ服が……」


「ご主人様以外にわたしの裸を見せるわけにはいきません……」


 ミナとシルヴィがそう言う。

 ユヅキやリンも同じく全裸だ。


「そんなこと言ってる場合か! ……と言いたいところだが、仕方ないな。ここは俺に任せろ!」


 俺はそう言い残して相手の方へ走る。

 そのまま飛び蹴りを放った。


「ぐふぉっ!?」


 ピュセルが吹っ飛ぶ。


「うわ……。容赦ないね」


「コウタっちが女に手を出すことなんかあるんだな……」


 ユヅキとリンの驚く声が聞こえてきた。

 確かに、俺は女性に甘い。

 『俺は死んでも女は蹴らん』と言えればカッコいいのだが、さすがにそこまでの覚悟や信念はない。


 この緊迫した場面で俺が日和っていれば、シルヴィやユヅキたちに危害が加えられるかもしれない。

 何よりも優先すべきは、俺のハーレムメンバーたちなのだ。

 その他の女性の優先度は少し落ちる。


「くっ……。いきなりとは卑怯者め! 全員で掛かるのだ!」


 ピュセルが鼻を押さえながら叫ぶ。

 すると、後方に控えていた他の女エルフたちが一斉に襲い掛かってきた。


「「はあっ!」」


 ギンッ!

 ギンッ!

 ギンッ!

 俺は向かってきた女エルフたちの攻撃を剣で弾いて防いだ。


「このっ!」


 相手が何とか俺に攻撃を当てようとするが、当たらない。

 実力は明確に俺の方が上だ。

 俺は相手の懐に入り込み、腹部に拳を叩き込む。

 さらに、よろけたところを足払いした。


「きゃっ!」


 一人のエルフが転ぶ。

 軽く追撃して、戦闘不能に追い込んでおく。

 よしよし。

 これで残りは3人か。


「は、速い……。まるで獣のような動きだ」


「俺に勝てると思わないことだな。降参するなら今のうちだぞ?」


 俺は余裕の表情で言った。


「くっ……。誇り高き我らが降参など……」


 ピュセルがそう言う。


「ふん。俺が手加減していたことを理解していないようだな。俺が肉体ではなく剣で攻撃していたら、今頃お前たちは屍となっていただろう」


 俺は大げさに腕を振るった。


「「「…………」」」


 女エルフたち全員が黙り込んだ。


「さあ、どうする? 大人しく引き下がるか?」


「……いや、我々は退かん!」


 ピュセルが叫んだ。


「いいだろう。ならば、まずはこいつを見せしめとする」


 俺はそう言って、倒れ込んでいる女エルフの元に向かう。

 先ほどのダメージが大きかったのか、立ち上がる元気はなさそうだ。

 ミナやリンたちの身の安全のためとはいえ、俺には女をいたぶる趣味はない。

 早めに音を上げてくれるといいのだがな……。

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