156話 ひいぃっ! か、隠してください!!

 ローズが宿の部屋に訪ねてきた。

 俺は彼女を出迎える。

 彼女の顔が、何やら赤く染まっていく。


「きゃ……」


「きゃ?」


「きゃあああぁっ!!」


 彼女が絶叫する。


「ど、どうした? 突然叫んで」


 俺はそう言いつつ、彼女の方へ向かう。


「ひいぃっ! か、隠してください!!」


 彼女はそう叫びながら、両手を前に突き出す。

 近づいてくる俺を押しとどめようとしている。


「何を隠してほしいんだ?」


 俺はそう尋ねながらも、じりじりと彼女に接近していく。


「し、下を! 早く!」


「だから何を隠せば……」


 と言いかけたところで、ようやく気付いた。

 今の俺の格好は、全裸だった。

 これは……。


「む? 悪かったな。昨晩は楽しんだから、裸のまま寝たのだった」


 俺は素直に謝っておくことにした。


「謝罪は結構です! 早く服を着てください!」


「そう言われても、服がどこにいったかわからなくてな……」


 俺はそう言う。

 ローズは、自分の手で目を隠しながらも、指の間からしっかりとこちらを見ている。

 この様子からすると、彼女は男慣れしていないのだろう。


「くくく……。ローズは美少女だとは思っていたが……。改めて見ても、おいしそうだ……」


「うわー……」


 リンがドン引きしている。


「コウタ。最低」


 ユヅキもジト目を向けてくる。


「はい。さすがに擁護できないのです」


「わたしはご主人様の味方です。たとえどんな変態でも」


 シルヴィだけは俺を擁護してくれるらしい。


「こっちに来ないでください!! 衛兵を呼びますよ!?」


 ローズが叫ぶ。


「衛兵? おいおい、俺は借りた部屋で自由に過ごしているだけだぜ? そっちから突然来ておいて、ずいぶんな対応じゃないか」


「……それは……その……。いくらなんでも破廉恥すぎます! こんなことをなさっているなんて思いもしませんでした」


 ローズが顔を真っ赤にして反論してくる。

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