133話 大地讃頌

 山岳部で酒盛りを行った翌朝だ。

 昨晩はそのまま寝てしまったので、今は状況を把握しているところである。


「ところでさ。なんでコウタのあそこに土がついているんだろう?」


「その件か。ユヅキも知らないんだな。シルヴィは……」


 俺はシルヴィに視線を向ける。


「……わたしはナニモミテイナイデスヨ?」


 彼女がカタコトでそう言う。

 うーん。

 何か知っていそうなんだが、言ってくれそうにないな。

 そうこうしているうちに、ミナとリンが起き上がった。


「おはようなのです。みなさん」


「さわやかな朝だぜっ!」


「おはよう。ミナ、リン」


 俺たちはそれぞれあいさつを交わす。


「二人は、昨日のことを何か覚えているか?」


「え? もちろん覚えているのです」


 ミナが平然とそう答える。

 彼女はドワーフだし、酒に強い。

 俺ように記憶をなくしたりはしないようだ。

 彼女が言葉を続ける。


「コウタくんがまずはシルヴィさんと致した後、ユヅキさんと始めたのです」


「そうだったな。俺もそこまでは覚えている」


 俺はため息をつく。

 と、そこでシルヴィが間に入ってきて口を開く。


「その後、ミナさんとリンさんが混ざってきて、みんなで深夜までやってましたっ!」


「そ、そうだっけ?」


 シルヴィの言葉に、俺は疑問の声を上げる。

 記憶にない。


「それは違うぜ。コウタっちとユヅキっちとの戦いが終わって、あたいとミナっちで次はどっちの番か口論していたんだよ」


「コウタくんをしばらく放置していたボクたちも悪いのですが……。気付いたら、コウタくんは地面に突っ込んでいたのです」


 リンとミナがそう説明する。


「地面?」


「そこに、ちゅうどいい穴があるのです」


「コウタっちが一人で腰を前後させている光景はシュールだったぜ。あたいも、思わず後退りしちまった」


 ……なるほど。

 それが真相か。

 シルヴィやユヅキとの戦いを終え、さあ三戦目というタイミングでお預けをくらい、俺は暴走してしまったのだ。

 まさか、大地を相手に発情するとは。

 自分で自分が怖いぜ。


「そうか。それは惜しいことをした。ミナやリンという素敵な女性を前にして、無駄打ちしてしまうとは……」


 昨日はこの町に来たばかりで高揚感があり、しかも酒の力もあった。

 ミナやリンと一線を越えるベストなタイミングだった。

 これを逃したのは痛い。

 また次回、機を伺う必要がある。


「コウタくん、それなら今からやりますか?」


「え? いいのか?」


 まさかシラフでも許しが出るとは。

 嬉しい誤算だ。

 しかし……


「うーん。今は朝だしなあ」


「ボクはいつでもオッケーなのですよ?」


「あたいも大丈夫だぜっ!」


 ミナとリンがそう言う。

 朝から元気なことだ。

 ユヅキは二日酔いでダウン気味なのに。


「よし! じゃあ早速……」


 俺は立ち上がりかけ……


「ちょっ、ちょっと待ってください!」


 シルヴィが大声を上げて制止する。

 いったいどうしたというのだろう?

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